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最果タヒ著「好き」の因数分解を読む【街の書店員・花田菜々子のハタチブックセンター】

街の書店員のおすすめ本ハタチブックセンター

行きすぎた「好き」が暴走するエッセイ


『「好き」の因数分解』

最果タヒ・著 ¥1200 リトルモア


ミッフィー、フィギュアスケートからマックグリドル、ポイント10倍キャンペーンまで。今最注目の詩人、最果タヒが偏愛する48のものへの「愛」を、3層の異なるテキストでつづる異色のエッセイ。平成カルチャー論としても読める1冊。

 自分の好きなものを羅列することは簡単でも、どう好きなのか、どんなふうにいいのかを人に伝えるということはほんとうに難しい。好きなアイドル、ミュージシャン、もしくはコンビニのスイーツでも何でもいいが、人に話したときに「どこがいいの?」と聞き返されて言葉に詰まったあげく、「もう、とにかくいいんだって!」と説明を放棄したことがある人は多いのではないか。

  その意味で、この本は最高の教科書だ。「好き」としか表現しようがないと思っていた感情は、こんなふうに因数分解して説明すればよかったのだと教えてくれる。さらに「なるほど」と納得しかけた読者に対してうわごとのように激しい愛をかぶせてくる執念に打ちのめされる。ああ、「好き」って、そこまで思いつめるような感情のことだった。

 結局のところ、「好き」を語ることは「好きを感じている自分」を語ることなのだ。何かを好きになれることの根源的な幸福さを教えてくれる本だ。




こちらの本も暴走しています


『サ道 心と体が「ととのう」サウナの心得』

タナカカツキ・著 ¥750 講談社


もはやブームとなりつつあるサウナだが、この本がブームの火つけ役であり、サウナーたちのバイブルになっていると言っても過言ではない。ゆるカワな漫画と文章でサウナ体験の素晴らしさを伝える。


『生まれた時からアルデンテ』

平野紗季子・著 ¥1500 平凡社


食べ物をこよなく愛する著者による、こちらも暴走ぎみのコラム&写真集。独特な目のつけどころは詩的でありながらカルチャーっぽくもあり、異常でもあり、おかしくもある。ワクワク読める1冊。




はなだ ななこ 
HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE店長。新刊『シングルファーザーの年下彼氏の子ども2人と格闘しまくって考えた「家族とは何なのか問題」のこと』発売!



2020年5月号掲載

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