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益田ミリ著『今日の人生2 世界がどんなに変わっても』を読む【街の書店員・花田菜々子のハタチブックセンター】

街の書店員のおすすめ本ハタチブックセンター

いい人生とは何かをそっと教えてくれる本


『今日の人生2 世界がどんなに変わっても』

益田ミリ・著 ¥1500 ミシマ社


忘れてしまいそうな日常の何げないシーンや日々感じたことを、コマ数さえも決めずに、ゆっくりと深呼吸をするように優しく描く人気のコミックエッセイシリーズ。ポーランド旅行でのごはんや国内旅行、コロナ禍の日々のことも。

 理想の人生、という言葉から思い浮かぶのはどんなイメージだろうか。憧れの職業、幸せな家庭、友達と過ごす時間……それらもすてきに違いないけれど、私たちがつい見過ごしてしまうものがある。シンプルなやさしい線で描かれるこの漫画の中で、主人公はカフェでとなりの席の会話にツッコミを入れたり、道で話し込む中学生カップルをいいなと思ったりしているだけ。だが、そんなささやかさになぜか心を揺さぶられる。

 「自分が何かをする」ことだけでなく、そこに広がる世界から美しさを感じ、受け止めること。これも大事な自分の人生ではないだろうか。壮大な夕焼けやきらきらする海を見たとき、私たちは目を奪われてあるがままを感じようとする。けれどその態度は、特別なものを見たときだけでなく、何気ない日常にこそ必要な感覚なのかもしれない。

 この人のように世界を見てみたら、人生はもっと輝き出すだろう。そんなことを教えてくれる本だ。




「今日」を大事にしたくなる2冊

映画みたいなことしない?


『映画みたいなことしない?』

エヒラナナエ 大沢かずみ カナイフユキ 田辺俊輔・著 ¥1800 雷鳥社


タイトルどおり、映画のようにすてきに生きる方法をイラストレーターたちがエッセイ形式で提案するちょっと不思議な映画ガイド。イラストや本の作りもおしゃれで可愛く、持っているだけで気分が上がる。



バー・オクトパス


『バー・オクトパス』

スケラッコ・著 ¥750 竹書房


8本足でカクテルを器用に作るタコがオーナーを務める海底のバー。そこは、人魚やクジラなどいつも個性豊かな海の生き物のお客さんで大にぎわい。心がカサカサな日に読みたい、優しく味わい深い1冊。




はなだ ななこ 
HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE店長。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』がある。



2021年3月号掲載

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