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早見和真著・『あの夏の正解』を読む【街の書店員・花田菜々子のハタチブックセンター】

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甲子園がなくなった年に彼らの言葉を聞く『あの夏の正解』

『あの夏の正解』

早見和真・著 ¥1540  新潮社


2020年5月、夏の甲子園中止が決定した。夢を奪われた高校生と元高校球児の小説家が、対話の先に見つけたものとは――? 強豪校の選手と監督へ何度も取材をし、丁寧に彼らの心の変化、そして著者自身の変化を追う渾身のルポルタージュ。

 2020年は甲子園を目指す人でなくとも、誰もが少なからず夢を奪われた年だったのではないだろうか。高校球児への一瞬のインタビューなら、彼らは、悔しいです、と答えるのかもしれない。だけど、もしゆっくり話を聞けたら。今、何を考え、どんな言葉を持っているのだろう? 野球名門校で補欠止まりだった小説家がそんな疑問を胸に、20歳以上も年下である彼らの「ほんとうの言葉」を聞きに行く。

 私は野球とも部活動とも無縁な人生で、甲子園にも興味はない。しかし「コロナのせいにせずに頑張ろう」と思いながら何をどう頑張っていいのかわからず停滞する日々を持て余す中、彼らへのインタビューにはついつい引き込まれ、一気に読んでしまった。

 何かに真剣に向き合っている人にしか見えない光がある。それはよく考えてみればコロナ禍に関係なく、ずっとある光だ。彼らの「ほんとうの言葉」は、輝きを失ってしまった心にも光のようにまっすぐに差し込むだろう。




コロナのある世界をどう生きる?

旅する練習

乗代雄介・著 ¥1705 講談社


小学6年生のサッカー女子と、小説家の叔父。コロナ禍で予定のなくなった二人は、川沿いを歩き続けながらそれぞれの「練習」をする旅に出る。2020年を新たなやり方で描くロードノベル。

たちどまって考える

ヤマザキマリ・著 ¥924  中央公論新社


イタリアと日本を行き来する漫画家の著者による、タイトル通り、コロナ禍で一度立ち止まっていろいろなことをじっくり考え直すための本。各国の考え方の違いなどを知るだけでもおもしろい。




はなだ ななこ 
HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE店長。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』がある。



2021年5月号掲載

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