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渋谷直角著・『世界の夜は僕のもの』を読む!【街の書店員・花田菜々子のハタチブックセンター】

街の書店員花田菜々子のおすすめ本ハタチブックセンター

舞台は90年代の東京。恋と青春とサブカルチャー

『世界の夜は僕のもの』

渋谷直角・著 ¥1320 扶桑社


音楽、漫画、お笑い、雑誌、ファッション――。当時の流行やあるあるネタを固有名詞と詳しい解説をふんだんに詰め込みながら、90年代に10代を過ごしカルチャーを愛した男女たちの姿をさまざまな人物の視点から描く青春群像漫画。

 90年代と現在の一番の違いといえばやはり、インターネットがあるかないかだ。いいなと思う作品に出会ってもそれについてもっと知るのは大変だったし、同じものを好きな人と出会うこともすごく難しかった。じゃあ不便でつまらなかったかというとそんなことはなくて、あれはあれで憧れが増してよかった、と作者と同じく当時10代だった自分は思う。
 この作品に登場するのは当時最先端の音楽やお笑いに出会って、すっかりそのカルチャーに夢中になった10代の少年少女たち。何者でもないふつうの彼らが「好き」を突きつめ、失敗したり挫折したりしながら少しずつ大人になっていく姿が描かれる。
 90年代カルチャーに興味がある人や、今何かに夢中になっている人はもちろん、そうでない人にも読んでほしい。時代が変わっても、大人になる直前の時間のせつなさは変わらないものだし、好きという想いを胸にひたむきに生きる人の姿はどんなに情けなくても美しくてかっこいいと思えるだろう。


90年代をもっと知るためのもう2冊

『ボクたちはみんな大人になれなかった』

燃え殻・著 ¥539 新潮文庫


90年代に雑誌の文通コーナーで知り合い、つき合い始めた二人。人生でたった一度だけ本当に好きになった、忘れることのできない恋を当時の時代背景を盛り込みながら描いた恋愛小説。映画化され、大きな話題となった。



『新装版 ペーパームービー』

内田也哉子・著 ¥1386 朝日出版社


樹木希林さんの娘であり、19歳の時にかなり年上の俳優・本木雅弘さんと結婚するなど、だいぶ破天荒に見える也哉子さんの人生。発売当時も多くの人に愛された、まるで友達への手紙のようなエッセイ。




はなだ ななこ 
HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE店長。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』がある。

2022年2月号掲載

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