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真造圭伍・著『ひらやすみ』を読む!【街の書店員・花田菜々子のハタチブックセンター】

街の書店員花田菜々子のおすすめ本ハタチブックセンター

人生は勝ち負けじゃない。始まりの季節に読みたい本

『ひらやすみ』

真造圭伍・著 ¥650 小学館


阿佐ヶ谷の古い一軒家を舞台に、29歳の元俳優お気楽フリーターと18歳の上京したて美大生女子、二人ののんびり暮らしが始まった。世間のスピードに流されず、ゆっくり進んでいく彼らのやさしい日常生活を描いた傑作コミック。

 春は新しい環境や新しい出会いにワクワクな気分になることもあるけれど、その半面、希望していた道に進めなかった人もいると思うし、うまくやっていけるのか不安な気持ちを抱えている人も多いんじゃないだろうか。
 この漫画の主人公ヒロトは、仕事やお金がなくても、大人になっていく周囲の友人を見ても、不安がったりはせず、ただ他人の幸せを願っていられるやさしい男子。それゆえに、なぜか偏屈なばあさんから無料で家を譲られることになってしまう。一方、美大入学をきっかけにヒロトとその家で同居することになったいとこのなつみは、大学での人間関係になじめずに学校に行けなくなって――。
 人と比べてもしょうがない!ってわかっていても、うまくいかなくてみじめな気持ちになったり焦ってしまうとき。「ちゃんとやらなきゃ」って気持ちばかりに押されて、自分を見失いそうになったとき。そんなときに読んでみてほしい。きっと大事なものを思い出す、やさしい日差しのような本だ。


息切れする心をととのえてくれる2冊

『あなたのための短歌集』

木下龍也・著 ¥1870 ナナロク社


今もっとも注目される気鋭の歌人が、お悩みや相談、お題に31文字の短歌で答える、その人のためだけに作られた短歌集。迷いながら生きることをまるごと肯定するような著者の言葉の強さに包まれるような1冊。



『純喫茶コレクション』

難波里奈・著 ¥990 河出文庫


純喫茶マニアの著者による純喫茶ガイドだが、ただのカフェガイドのようなものではなく、純喫茶を愛する心が伝わって静かに感動する。心が疲れた時はチェーン店ではなく、こんなお店に行ってみるのもいいかも。


はなだ ななこ 
店長を務めた経験もある名物書店員。著書『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年のこと』はドラマ化もされた。

2022年4月号掲載

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