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街の書店員・花田菜々子さんオススメ! 20代で読んでおきたい本⑤

non-noの人気連載『ハタチブックセンター』。街の書店員・花田菜々子さんが20歳の女性におすすめしたい、と選んでいる本は、どれも今だからこそ触れたい言葉や知識が詰まったものばかり。そんな本たちを、花田さんの推薦コメントとともに紹介します。きっとあなたの毎日に寄り添う1冊が見つかるはず。

読むのが止まらない夏の終わりにむさぼる本

『夏物語』表紙画像
『夏物語』 川上未映子・著 文藝春秋

読み始めたらぐいぐい引き込まれて、読むのが止まらなくなってしまうような本に出会えるのは、本好きにとって最高に幸せな時間だ。日差しのまぶしい時間に読み始めたのに、気がついたら外が暗くなっていて、字が読めなくなって初めて時間の経過にハッとさせられるような……。

『夏物語』は、まさにそんなふうに没頭して読んだ1冊。女性に絶大な人気を誇る作家・川上未映子の最新作にして最高傑作といえる長編小説だ。「産む」「産まない」の問題を中心に、様々な「女」が主人公の前に現れては、不安、迷い、怒り、悲しみを吐露する。それは今この国に生きるすべての女性が経験する思いを代弁してくれてもいるようで、読み進めるたびに「そうなんだよ! ほんとにそうなの!」と笑いたくなったり、泣きたくなったり。

セックスが苦手で、相手もいないけど子どもを作ろうと考える主人公の心の旅。彼女に伴走した景色は、本当の旅みたいに今も強く脳裏に焼きついている。

一緒に読んでほしい2冊

『ストーカーとの七◯◯日戦争』表紙画像
『ストーカーとの七◯◯日戦争』 内澤旬子・著 文藝春秋

よくある別れ話のはずだったのに。脅迫や嫌がらせとの闘いだけでなく、警察や裁判所との長い闘いまでを克明につづったルポ。文章がおもしろくて聡明なので、恐ろしくもぐいぐい読んでしまう。

『サターンリターン』1巻
『サターンリターン』1巻 鳥飼茜・著 小学館

作家の理津子と、失恋の喪失感から自殺した男友達。彼の死の真相を追う一方、理津子の不可解でミステリアスな行動は周囲を不穏な闇へと巻き込んでいく。スリリングすぎて目が離せない!

二十歳で出会ってほしい、音楽のようなことば

『たやすみなさい』表紙画像
『たやすみなさい』 岡野大嗣・著 書肆侃侃房

たとえば、夜中に街を歩いていてふと空を見上げたときの切なさとか、イヤホンで聴いている音楽が心にかちっとはまって奇跡みたいに聴こえるときとか。名前もつけられない、誰にもうまく伝えられないような一瞬の心の動きは、記録しておくことが難しく感じる。そんなきらめく瞬間をおどろくほど正確に切り取っているのがこの歌集だ。

短歌というと、なじみのない人には難解に思えるかもしれないが、この本なら200%心配無用だ。まるで写真のようにぱっと情景を浮かび上がらせ、一度聴いたら忘れられない音楽のように心の中にずっと響いてくる。読書は苦手という人でも、これを読んだら、意味を理解する前に感覚そのものが手の中に飛び込んでくるような、不思議な体験ができると思う。

大人だからこそ感じるさみしさや悲しさに触れながらも、読んだ後はふわふわのぬいぐるみと眠るときのようなやさしい気持ちが身体じゅうに溢れる。夢のような本だ。

一緒に読みたい「刺さる言葉」

『カキフライが無いなら来なかった』表紙画像
『カキフライが無いなら来なかった』 せきしろ、又吉直樹・著 幻冬舎文庫

自由律俳句、という1行の短い言葉で饒舌に語られるのは、日常のふとした瞬間に訪れる寂しさやダサさ。ネガティブゆえに光り輝く言葉たちは、大喜利のように笑えるが文学のように切ない。

『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』表紙画像
『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』 穂村弘・著 小学館文庫

現代短歌の鬼才による、一つの小説のような歌集。ちょっとエキセントリックな少女まみが突然主人公の部屋に住みつくことで始まる、激しく傷つきやすい恋愛の行方が短歌で描かれる。

はなだ ななこ

HMV&BOOKS HIBIYACOTTAGE店長。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』がある。

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