蟹ブックス店主・花田菜々子さんが20代におすすめする本。今月は『休むヒント。』

2024.05.23

街の書店員花田菜々子のおすすめ本ハタチブックセンター

大人になればなるほど「休む」のは難しい!?

『休むヒント。』群像編集部/編 ¥1430 講談社

『休むヒント。』
群像編集部/編 ¥1430 講談社


休日、何もしてないのに気づいたら夕方になっている人も、逆に休みなのについ仕事をしてしまうという人も。働き方改革時代の今、ワークライフ「アン」バランスで悩む人に送る《休み方エッセイ》アンソロジー。

大学に入ったとき、就職が決まったとき、一度は言われたことがあるのではないだろうか。「がんばってね! でもがんばりすぎないようにね」と。がんばりすぎて心身を病んでしまったら意味がないからだ。しかし、わかっていてもなお「うまく休む」ということは難しいのだと思う。
本書は作家、漫画家、ミュージシャンなど33名が《休み》について書いているのだけど、休むヒントを期待して読み始めると、タイトル詐欺かと思うくらいヒントは書いてない。みんなそれぞれに《休み》と悪戦苦闘していて、中には「そもそも休みの定義って何よ」「なんで休まなきゃいけないんだ」と逆ギレする人まで……。実感のこもった嘆きの文章は笑いと共感がいっぱい。
休み下手なのは自分だけじゃないんだ、とホッとしつつ、多様な「休み哲学」を読むうちに「休み方にこそその人の生き方が表れるのかも」なんて言いたくなる、味わい深い1冊だ。

 

『百年と一日』柴崎友香/著 ¥792 ちくま文庫

『百年と一日』
柴崎友香/著 ¥792 ちくま文庫


学校、家、映画館、ラーメン屋、駅……あらゆる場所で、無意識のうちに人と人は人生の1コマを共有している。時間と人と場所の奇妙で不思議な関係を形にした、新感覚の物語集。33編からなる話題の単行本に、解説と1編を増補して文庫化。

『あの日の交換日記』辻堂ゆめ/著 ¥836 中公文庫

『あの日の交換日記』
辻堂ゆめ/著 ¥836 中公文庫


教師と児童、加害者と被害者、夫と妻など、さまざまな立場の二人が互いを思いながらつづった7冊の交換日記。そこには、うそ、殺人予告、告白……と多くの謎が隠されていた。すべて読むと見えてくる、登場人物たちのつながりと驚きの真実とは?

『22歳の扉』青羽悠/著 ¥1980 集英社

『22歳の扉』
青羽悠/著 ¥1980 集英社


大学生活になじめないまま、一回生前期が終了した主人公・朔。後期に入り、旧文学部棟の地下でひっそりと営業するバーのマスター・夷川と出会ったことで朔の生活はがらりと変わってゆく――。20代前半の不変と今を描く青春ストーリー。


はなだ ななこ 
東京・高円寺の書店「蟹ブックス」店長。著書『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』『モヤ対談』が好評発売中。

2024年7・8月合併号掲載

選書・原文/花田菜々子 web構成/轟木愛美 web編成/ビーワークス

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