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井戸川射子・著『ここはとても速い川』を読む!【書店員花田さんのハタチブックセンター】

街の書店員花田菜々子のおすすめ本ハタチブックセンター

「いい小説を読んだ……!」 と思わせてくれる特別な1冊

『ここはとても速い川』
井戸川射子・著
¥649 講談社文庫


児童養護施設に住む小学生の集とひじり。近所の川に亀を見に行ったり、近くに住む大学生と花壇を掘り起こしたり、大人たちの態度に戸惑ったり――。二度と訪れることのない子ども時代の一瞬を、まっすぐな言葉で綴った中編小説。作者は1月に、芥川賞を受賞。

 書店員という職業柄、お客さんやまわりの友人から「なんか面白い本ない?」と聞かれるのは日常茶飯事です。いつもだったら「面白い、って言ってもいろいろあるしねえ」と煮え切らない態度になってしまうのですが、今はとにかくもうあらゆる人におすすめしたいのがこの本。
 作者の井戸川さんはもともと詩人ということもあってひとつひとつの描写が美しく、今までに読んだことのないようなフレッシュな文章が心に深く刺さります。物語の終盤では涙が止まらなくなったけど、それは悲しいからとか彼らがかわいそうだからとかではなくて、「まだ終わらないでくれ、もっとこの美しい世界にいさせてくれ〜」という涙だった気がします。夕陽に反射してきらめく川を見ているような気持ちというか。
「最近感動してないなあ」という人にも自信を持っておすすめしたい1冊。いい読書で春を迎えましょ!

 

『おつかれ、今日の私。』
ジェーン・スー・著 ¥1540 マガジンハウス


つい頑張ってしまうすべての人へ。傷ついたり、疲れたり、しんどさを感じたり。日常に生まれるもやもやした感情が読んで癒やされる、"セルフケア・エッセイ"。隣にいる誰かにも「お疲れ!」と言葉をかけてあげたくなるはず。

『猫にならって』
佐川光晴・著 ¥1925 実業之日本社


病気を抱える小学生・芳子の部屋で、4匹の子猫が生まれた。彼女は小さな子猫・チビのことがどうしても気になってしまい――。第一話「ミー子のおしえ」から始まる、のら猫との出会いと生命を巡る8つの感動の物語。

『さいはての家』
彩瀬まる・著 ¥627 集英社文庫


植物がうっそうと生い茂る、郊外の古い家。そこに住みつくのは、駆け落ちした不倫カップル、逃亡中のヒットマン&事情を知らない元同級生……etc.。人生に行き詰まり逃げてきた人たちの「家」にまつわる連作短編集。


はなだ ななこ 
店長を務める書店「蟹ブックス」が東京・高円寺にオープン。著書『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』が好評発売中。

2023年4月号掲載

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