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中前結花/著『好きよ、トウモロコシ。』を読む!【書店員花田さんのハタチブックセンター】

街の書店員花田菜々子のおすすめ本ハタチブックセンター

ゆっくり大人になろう やさしさあふれるエッセイ

『好きよ、トウモロコシ。』
中前結花/著 ¥1650 hayaoki books


お母さんが大好きで、自分を歌手だと信じ込んでいたちいさな女の子。やがて学校を卒業し、東京で就職をすることに決めたけど、ほんとうは不安でしかたなくて――。東京ですごす20代の日々をみずみずしく綴ったエッセイ集。

 思春期といえば一般的には10代の頃を指すのだろうけど、実は20代のほうがずっと思春期なんじゃないかと思ったりする。自分の過去を振り返っても20代の日々はずっと不安で苦しくて、でもその一方で毎日のようにこの世界の美しさに驚き、感動していた。
 ふだんはライターとして活躍する中前さんは本書『好きよ、トウモロコシ。』がデビュー作。気弱でたよりないひとりの女の子がゆっくり大人になっていく様子を子どものようにピュアな感受性で綴ったエッセイ集だ。詩人・茨木のり子の作品にも「大人になるということはすれっからしになるということではない、初々しさが大切だ」とあるが、そんな言葉どおりに、やさしさを失わずに生きる著者の姿に思わず涙ぐんでしまった。
 もしこの春からの新しい生活にうまく乗ることができずに自信を失っているならこの本を手に取ってほしい。きっと《ひとりじゃない》と思えるだろう。

 

『うたかたモザイク』
一穂ミチ/著 ¥1650 講談社


アイドル活動をする同級生に特別な思いを抱く「Droppin’ Drops」、ある夜、ベランダに黒猫が現れて物語が始まる「レモンの目」。甘い思い出からスパイシーな出来事、少し苦い記憶まで、人生の味わいを詰め込んだ13編。

『ミライの源氏物語』
山崎ナオコーラ/著 ¥1760 淡交社


『源氏物語』が誕生したのは、生まれた性別や境遇で生き方が制限されていた時代。ルッキズム、ジェンダーの多様性、エイジズム、受け身のヒロイン……etc.、名作古典を通して、現代社会のもやもやと向き合うエッセイ。

『赤い月の香り』
千早茜/著 ¥1760 集英社


カフェでアルバイトをしていた朝倉満は、客の小川朔から自身の住む洋館で働くよう誘われる。朔は調香師として、さまざまな執着や欲望を抱えた依頼人の望む香りをオーダーメイドで作り出していた。注目の直木賞受賞第一作。


はなだ ななこ 
店長を務める書店「蟹ブックス」が東京・高円寺にオープン。著書『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』が好評発売中。

2023年7・8月号掲載

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