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高瀬隼子/著 『いい子のあくび』を読む!【書店員花田さんのハタチブックセンター】

街の書店員花田菜々子のおすすめ本ハタチブックセンター

「いい子」でいるのは損? 悪意の果てを描く問題作!

『いい子のあくび』
高瀬隼子/著 ¥1760 集英社


公私ともに「いい子」で、誰からも好かれる直子。だけどなぜ自分ばかりが歩きスマホの人をよけてあげなければいけないのか、と直子は彼らに「ぶつかったる」ことにした。だが中学生と事故を起こしたことから事態は予想外の方向へ……。

 歩きスマホの人にイラっとしたことがない人なんて、今やいないだろう。だが、普段は「いい子」をやっている主人公がもうひとつの顔で、そいつらに罪悪感を与えるためわざとぶつかりに行く、というのがこの表題作の始まり。
 主人公はあざとく生きているわけではなく、たとえば嫌な上司にニコニコしちゃうのも、しちゃうからしちゃうだけなのだ、と言う。でもこれって若い女子ならほぼ100パーセント共感できるのではないだろうか。
「いい子」をやっていても割に合わない、と考える主人公の行動は日に日にエスカレートし、次第にとんでもないことになっていく。共感できるか恐怖が共感を上回るかはあなたの「いい子度」と「ヤバい奴度」によるかもしれません。
 復讐のように歩きスマホの人にぶつかってもやっぱり幸せにはなれないわけで。じゃあ誰かにぶつかったりせずに幸せになるにはどうしたらいいんだろう、と考えさせられる1冊でした!

 

『教室のゴルディロックスゾーン』
こざわたまこ/著 ¥1870 小学館


中学のクラスに居場所がなく、妄想の世界に逃げがちな依子。二人暮らしの父、弟のような愛犬・トト、唯一の友人・さきだけが頼りだったが、クラス替えで同じ趣味の同士を見つけたさきは依子から距離をとるようになり――。

『腹を空かせた勇者ども』
金原ひとみ/著 ¥1760 河出書房新社


バスケ部に所属する陽キャの中学2年生"レナレナ"。母は父容認のもと彼氏と公然不倫中だ。コロナ禍、親友の家出、海外留学生が受ける差別……。ハードモードな10代をエネルギッシュに駆け抜ける彼女の3年間を描く長編。

『水を縫う』
寺地はるな/著 ¥693 集英社文庫


祖母の影響で手芸が好きな男子高校生の清澄。周囲からどこか浮いていて、友達はいないのか、と家族から心配されている。そんな彼が結婚を控えた姉のため、ウェディングドレスを作ると決意するが、母から反対されて――。


はなだ ななこ 
東京・高円寺にある書店「蟹ブックス」で店長を務める。著書『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』が好評発売中。

2023年10月号掲載

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