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葉山莉子/著『ティンダー・レモンケーキ・エフェクト』を読む!【書店員花田さんのハタチブックセンター】

街の書店員花田菜々子のおすすめ本ハタチブックセンター

マッチングアプリのちょっと変わった使い方!?

『ティンダー・レモンケーキ・エフェクト』
葉山莉子/著 ¥1980 タバブックス


「わたしの日記を送ります。あなたの日記を送ってください」。そんなプロフィール文で、ティンダーでマッチした人たちとひたすら日記を交換していた著者。やがてその中のひとりに恋をして……。当時の日記をそのまま収録したエモさあふれる1冊。

 マッチングアプリで会った人と付き合うことがもう珍しくない時代になった。でも、登録はしてみたけどなんだかやりとりが疲れるな……、という人も多いのではないだろうか。
 この本はやはりそんなふうにマッチングアプリで疲弊してしまったひとりの女子が起こしたささやかな革命の物語。それは顔写真すら載せず、マッチした人とただ日記を交換するだけ、というちょっとユニークなアイデアの実践だ。
 本や映画やアートの話が中心だった日記に、やがて恋の相手が登場するようになる。日々リアルに綴られる文章には、恋の始まりのきらめきも、相手を想う気持ちも、そして心がさめていく瞬間までもが鮮明に焼き付けられていて、自分のできごとかと錯覚するくらいドキドキしてしまった。
 都会の生活に憧れている人も、出会いにちょっと臆病になっている人も、読めば元気が出ること間違いなしです。

 

『可哀想な蠅』
武田綾乃/著 ¥1705 新潮社


ある投稿をきっかけに、芽衣子のSNSに絡んでくるようになった粘着質なアカウント。芽衣子はブロックせず、彼の動向を見守ることに決めるが、それにはある理由があって――。人間の黒い部分をまざまざと描いた短編集。

『うたうおばけ』
くどうれいん/著 ¥682 講談社文庫


"「友達」は多くないけれど「ともだち」は多い"。そんな著者が描く、時にじんわり温かく、時にくすっと笑ってしまう「ともだち」との日々。大反響の名エッセイが、待望の文庫化! 文庫版のために書かれたあとがきにも注目。

『江戸POP道中文字栗毛』
児玉雨子/著 ¥1650 集英社


数々のJ-POP楽曲の作詞も行う芥川賞候補作家・児玉雨子が、超現代的な視点から解釈・解説した新感覚の江戸文芸。古典好きのみならず、新しいもの好きの人も楽しめる1冊。読めば近世文芸の沼にはまること間違いなし。


はなだ ななこ 
東京・高円寺にある書店「蟹ブックス」で店長を務める。著書『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』が好評発売中。

2024年1・2月合併号掲載

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