私がハタチだった20年前、「モテない」ことはみんなに共通の悩みで「クリスマスにデートする相手がいない」ことは恥ずかしいことだった。そこから20年。繊細なジェンダー観で描かれたこの本を読んで、時代の変化をうれしく感じた。同性の友達に自慢するためにセックスしなくたっていいし、恋愛だってしなくてもいい。そんな安らぎと安心感をくれる本だ。
だが、小説の中の彼らは自信を持ってハッピーに生きているわけではない。他者を傷つけることを避け、気持ちを先回りしすぎるやさしい彼らは、それゆえに生きづらさを感じている。加害者になることから逃れようとすると、今度は「踏み込めない弱さ」という問題に向き合わなくてはならなくなる。
しんどそうな友達に「大丈夫?」と声をかけて、大丈夫じゃなさそうに「大丈夫」と答えられたとき、私たちはどうすべきなのだろう。答えはすぐにはわからない。踏み込むことも、そっとしておくことも、選べる自分でありたいと思う。