これはとっても不思議な本だ。まるで外国の童話を読んでいるみたいでもあり、臨床心理士が普段カウンセリングを行う中で感じたことを書いたエッセイでもあり、傷つきながら自分の心を見つめて心の問題を乗り越えたあるカップルの恋愛物語でもある。そしてすべてはあなたの心へと語りかけられるメッセージ。不思議だけどそんな1冊なんです。
昔に比べていろいろな生き方が認められるようになった今は個人の時代になりすぎて、小舟で海に漂っているようなものだと東畑さんは言う。つまり私たちは自由だけど弱くて頼りなく、少しの風でもぐらついてしまう。そんなときにはカウンセリングを受けるのも手だけど、まずはこの本で東畑さんをガイドに一夜の船旅に出てみよう。自分の心を理解すること、誰かとつながること――夜が朝になっていくように、つらい気持ちに少しずつ光が差し込むのを感じられるはずだ。