この作品はロボットの「友達」をめぐる物語だけれど、いわゆるSFではない。ロボットが突然人格を持ったりはしないし、主人公も、相手に感情がないことをきちんと理解しながらふたりでの散歩やピクニックを楽しんでいる。
ロボットと夜の散歩に出かけたり、部屋でのんびりと自分の気持ちをロボットに話す時間は主人公にとって、心の傷を癒やすための大切な時間だったのだろう。ロボットの製作者や気の合う同僚とのやりとりもあって傷ついた心は少しずつ回復していく。
彼女に登録された最後の言葉とは。ふたりぐらしの行く末は。物語の結末にはつい涙があふれてしまった。時には大切な人との関係がダメになってしまうこともある。そんな経験をしたことのある人にはもちろん、最近やさしさ成分が足りないという人にもおすすめしたい。あたたかな光が差し込むような読後感をぜひ味わってください。