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高妍・著『緑の歌 -収集群風-』を読む!【書店員花田さんのハタチブックセンター】

書店員花田さんのハタチブックセンター

日本と台湾、カルチャーでつながる私たちの心

緑の歌 -収集群風-
高妍・著 上巻¥858・下巻¥880 KADOKAWA


学入学をきっかけに都会で一人暮らしを始めた緑(リュ)だったが、過去のつらい記憶にとらわれ、心はふさぎ込んでいた。そんな彼女の心を溶かしたのは少し古い日本の音楽と、同じように日本のカルチャーを愛する男子との偶然の出会いだった――。

 台湾出身の若手漫画家、高妍さんによるこの漫画の主人公は、日本の少し古いカルチャーを愛する台湾の若者たちだ。はっぴいえんど、村上春樹、岩井俊二……。台湾と日本、昔と今が不思議に交錯しながらストーリーが進んでいく。

 緑は今どき信じられないくらいピュアで繊細なのだけど、少し懐かしいような絵柄と独特のやさしい空気感が心地よくて、まるで夢を見ているみたいにこの世界に引き込まれてしまう。

 落ち込むことがあったり、私はいつもすてきな私じゃないし、もどかしくて、挫折や叶わない恋もある。でも、自分が「心から好きだ」と言えるものがあれば、その「好き」の力が自分を狭い部屋から出してくれることもある。これはそんなふうに誰かの人生が始まる瞬間を見せてくれる物語だ。

 遠くて近いお隣の国の人たちもそんなふうに生きているんだな、と思うとなぜかちょっとうれしくなるのです。


『一心同体だった』
山内マリコ・著 ¥1980 光文社


10歳~40歳、それぞれの世代特有の"女性の友情"に焦点を当てた8編の連作短編集。その場しのぎの友達も、なんでもさらけ出せる関係も、妙にリアルな描写にどきりとさせられる。作中に散らばる"これ、私かも"を探してみて。

生(き)のみ生(き)のままで』
綿矢りさ・著 上・下(各)¥616 集英社


恋人と結婚の話まで出始めている主人公・逢衣は、友人として仲よくしていた彩夏から突然好意を告げられる。戸惑う一方で、彩夏に惹かれ始める自分の気持ちにも気づいてしまい――。女性同士のみずみずしい恋愛小説。

こんな日のきみには花が似合う
蒼井ブルー・文 新井陽次郎・絵 ¥1760 NHK出版


文筆家の蒼井ブルーさんとアニメーター・新井陽次郎さんのコラボレーション作品。あるカップルの1年を追う形で物語は進み、とりとめのない、だけどいとおしい瞬間の数々を爽やかに描き切る。大切な人に贈りたくなる1冊。


はなだ ななこ 
多数の書店で店長を務めた名物書店員。自身の体験をつづった『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年のこと』が好評発売中。

2022年9月号掲載

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