台湾出身の若手漫画家、高妍さんによるこの漫画の主人公は、日本の少し古いカルチャーを愛する台湾の若者たちだ。はっぴいえんど、村上春樹、岩井俊二……。台湾と日本、昔と今が不思議に交錯しながらストーリーが進んでいく。
緑は今どき信じられないくらいピュアで繊細なのだけど、少し懐かしいような絵柄と独特のやさしい空気感が心地よくて、まるで夢を見ているみたいにこの世界に引き込まれてしまう。
落ち込むことがあったり、私はいつもすてきな私じゃないし、もどかしくて、挫折や叶わない恋もある。でも、自分が「心から好きだ」と言えるものがあれば、その「好き」の力が自分を狭い部屋から出してくれることもある。これはそんなふうに誰かの人生が始まる瞬間を見せてくれる物語だ。
遠くて近いお隣の国の人たちもそんなふうに生きているんだな、と思うとなぜかちょっとうれしくなるのです。