蟹ブックス店主・花田菜々子さんが20代におすすめする本。今月は『恋とか夢とかてんてんてん』。

みじめ、ブザマ、カッコ悪い
でも応援したい恋がここにある！

『恋とか夢とかてんてんてん』

世良田波波／著　￥1100　マガジンハウス
※現在2巻まで発売中

憧れの東京に出てきて10年。大好きな絵を描くこともやめ、冴えない毎日をすごすカイ。今や心の支えは恋だけ。しかし彼を追いかけ大阪へ引っ越すも、恋人にもセフレにもなれない現実が待っていた……。せつなさ苦しさ200％の大問題作！

　はあ……。ここまで心がえぐられる漫画を読んだのはひさしぶりです。
　主人公が失恋するお話もクズ男子が登場するお話もこの世にはたくさんありますが、どのお話もこれほどひどくはない。恋愛漫画読んでて「この主人公ブザマだな〜」って普通は思わないですもんね。絵はめっちゃかわいいのに……。
　しかし、これがとんでもなく面白い！ 「傷つくことが怖い」がデフォルトの時代に、自分がボロボロになることなんてどうでもいいと全力で恋に突っ走るカイちゃんはとんでもなくかっこいいんです。片想いの相手が異動になったからってすぐ大阪に引っ越せる行動力もすごいし、みじめな自分をごまかさずに直視できるのもすごい。生き方が熱くて、そこにしびれます。
 「ひどい恋愛をしたことがある／今している」人はもちろん、カッコ悪く闘っているすべての人に捧げたい物語。

『新しい恋愛』

高瀬隼子／著　￥1760　講談社

ひそかに関係を持っていた部署の先輩との最後の夜、幼なじみとのバレンタインの記憶、プロポーズされたくない25歳の私とまっすぐに恋愛を語る中学生のめい……。胸がざわつくような、一筋縄ではいかない5つの恋愛を描いた短編集。

『女たちのエッセイ——新編 For Ladies By Ladies』

近代ナリコ／編　￥1100　ちくま文庫

作家、料理家、女優など、26名の女性たちが己の人生をありのままに記したエッセイ集。2003年刊行の『FOR LADIES BY LADIES 女性のエッセイ・アンソロジー』を再編集し、漫画家・瀧波ユカリと編者のW解説を加え新編として登場。

『銀河ホテルの居候 また虹がかかる日に』

ほしおさなえ／著　￥770　集英社文庫

南軽井沢にある銀河ホテル。ここの一角には「手紙室」という部屋が存在している。室長・苅部の手紙ワークショップを受けた宿泊客たちは、不思議と心の奥にある気持ちが見えてきて、自分の人生と向き合うことができるようになり——。

●はなだ　ななこ　
東京・高円寺の書店「蟹ブックス」店長。著書『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』『モヤ対談』が好評発売中。

2024年12月号掲載