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2022.07.22
イヤな汗がにじむ……けれど目が離せない、異色のルポ
発売前から一部で熱狂的な話題を呼んでいたこの本。自分も手に取ったが最後、夢中でむさぼるように読みふけり、読み終わるまでは仕事をしていても食事をしていても「つけびの村」のことばかり考えてしまう中毒状態に陥ってしまった、そんな1冊だ。
TV、ネット、SNS、情報の渦の中で暮らす私たちは、ひどいニュースに心を痛めたとしても「犯人は異常者、原因は〇〇」と何かで報じられればとりあえず解決したような気持ちになり、いずれ忘れていく。しかし本書では熱心な取材の果てに「噂」という一つのキーワードが浮かび上がり、私たちはさらなる闇に導かれる。
それは初めはほんのささやかな悪意だったが、ネットのほとんどないこの集落では娯楽でもあり、重要な情報源でもあった。読み進めるうちに彼らの奇妙な思考回路に視界を覆われ、感じたことのない不気味さに取り憑かれる。一つの事件を追ってこんな思いも寄らぬ場所に出てしまうこともあるのだと教えてくれる奇書だ。
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一つの殺人事件を中心に加害者、被害者、周囲の人々、さまざまな人の境遇と性格を描く社会派ミステリ。何重もの仕掛けで「ほんとうに悪いのは誰か?」「ほんとうの悪とは何か?」を問いかける。
どんでん返しミステリの名作としても有名。連続幼女殺人事件の犯人と事件を追う刑事、二人の交互の視点で事件が描かれる。二人の視点が交差した時、予想を超えた結末に誰もが驚愕する。
日常が溶けてしまうような怖くて楽しい妄想エッセイ
岸本佐知子さんといえば、海外文学好きなら誰もが知っている大人気の翻訳家。そんな人が書くエッセイって、きっと美しくて、でもちょっと難しくて、ためになることが書いてあるんだろうな……と期待と不安を抱えながら読み始めたのだが、これがまったくの勘違いだったようで、岸本さんはどうも、いつも何の役にも立たない妄想をしているようである。
ひらがなの「ぬ」は宇宙から来たんじゃないか。夜道できかんしゃトーマスに襲われたらどうやって倒そうか。人間とゴキブリの立ち位置が逆転したら。部屋に落ちている見知らぬネジは自分の体から落ちたもので、本当は自分はレプリカントなんじゃないか。
日常のひとコマから始まる非日常を自由に飛び回るように描かれた文章は、読んでいるうちに脳みそを侵略し、一度キシモト脳になってしまったらもう後戻りはできない。自分の思考回路がぐにゃぐにゃにねじれていく感触がなんともおもしろくてやみつきになってしまう、キモ楽しい1冊だ。
岸本佐知子さんの本職がこちら。教師、シングルマザー、アルコール依存……作者の実人生をさまざまな年代と角度から切り取った物語はあらゆる意味で圧倒的で、日本でもベストセラーに。
ハライチの目立たないほう(?)……による、あまりにも普通すぎる日々を描いたエッセイ。なのだが、こちらも岸本さん同様、「何も起きていない日々がなぜこんなにおもしろいのか」と思わせる衝撃作。
●はなだ ななこ
HMV&BOOKS HIBIYACOTTAGE店長。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』がある。
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