──零細工場の息子と大企業の御曹司という、違う境遇に生まれた同じ名前の男たちの運命を描いた『アキラとあきら』は、ベストセラー作家・池井戸潤の原作を映像化した手に汗握るお仕事映画。
「『陸王』など、池井戸さんの作品は個人的に好きで読んでいましたし、今回の原作もすごくスピーディであっという間に物語に入り込めました。いつも思うのは、池井戸さんはどれだけ自分に厳しく生きていらっしゃるんだろうってこと。仕事に対して闘志を燃やしている人たちがたくさん描かれていて、”ああ、自分はこんなんじゃダメだ”って水をかけられたような気持ちになるんです。この映画も自分の甘さに気づかされるような、パワーを持った作品だと思いました」
──演じたのは、竹内涼真さん演じる山崎瑛とともに、横浜流星さん演じる大企業の御曹司・階堂彬の危機を救おうと奮闘する銀行員の水島カンナ役だ。
「今までスーツを着る機会がなかなかなかったですし、社会人をちゃんと演じきることができるか不安でした。所作指導で名刺交換の仕方を教わったり”銀行員とは何か”みたいなことが書かれた本で勉強してから現場に臨みました。竹内さんと横浜さんは、私が生涯口にすることがないであろう、専門用語が膨大なセリフをスマートに口にされていて。近くで見られて勉強になったし、幸せでした」
──絶望的な状況からの逆転劇を描いた本作。上白石さん自身も過去に、乗り越えるのが難しい壁に直面したことがある。
「過去に撮影で、自分が経験して身につけたことが何も通用しないと感じる瞬間があって、すごくしんどかったんです。でもそのおかげで、何ができて何ができないのか、自分自身を深く知ることができました。その経験は、今の私の財産になっています。当時はつらかったけど、終わって初めて気づくこともたくさんあった。もがける時にもがくことは、大切なんだなと感じました」