書店員という職業柄、お客さんやまわりの友人から「なんか面白い本ない?」と聞かれるのは日常茶飯事です。いつもだったら「面白い、って言ってもいろいろあるしねえ」と煮え切らない態度になってしまうのですが、今はとにかくもうあらゆる人におすすめしたいのがこの本。
作者の井戸川さんはもともと詩人ということもあってひとつひとつの描写が美しく、今までに読んだことのないようなフレッシュな文章が心に深く刺さります。物語の終盤では涙が止まらなくなったけど、それは悲しいからとか彼らがかわいそうだからとかではなくて、「まだ終わらないでくれ、もっとこの美しい世界にいさせてくれ〜」という涙だった気がします。夕陽に反射してきらめく川を見ているような気持ちというか。
「最近感動してないなあ」という人にも自信を持っておすすめしたい1冊。いい読書で春を迎えましょ!