思春期といえば一般的には10代の頃を指すのだろうけど、実は20代のほうがずっと思春期なんじゃないかと思ったりする。自分の過去を振り返っても20代の日々はずっと不安で苦しくて、でもその一方で毎日のようにこの世界の美しさに驚き、感動していた。
ふだんはライターとして活躍する中前さんは本書『好きよ、トウモロコシ。』がデビュー作。気弱でたよりないひとりの女の子がゆっくり大人になっていく様子を子どものようにピュアな感受性で綴ったエッセイ集だ。詩人・茨木のり子の作品にも「大人になるということはすれっからしになるということではない、初々しさが大切だ」とあるが、そんな言葉どおりに、やさしさを失わずに生きる著者の姿に思わず涙ぐんでしまった。
もしこの春からの新しい生活にうまく乗ることができずに自信を失っているならこの本を手に取ってほしい。きっと《ひとりじゃない》と思えるだろう。