――ハロプロエッグから初めてのモーニング娘。加入メンバーとなった譜久村さんですが、他の9期メンバー3人が一般加入ということでプレッシャーを感じたりしていたのでしょうか?
譜久村 自分が先輩だとかそういうことは一切思っていなかったですね。3人のことはオーディション番組で観ていたので、ちょっと不思議な感じはしましたけど。最初、鞘師里保ちゃんと鈴木香音ちゃんは「ハロプロエッグ出身の先輩なので譜久村さんって呼びます」って感じだったんですけど、そんな時にえりぽん(生田衣梨奈)が「ねぇ、みずきって呼んでいい?」って言ってくれて(笑)。それで最初から9期の間で敬語はなしにしようって話になりました。
でもハロプロエッグとしての経験があるからこそ、自分が9期を引っ張っていかないと! という気持ちは確かにありましたね。例えば香音ちゃんはモーニング娘。のオーディションを受けるまで敬語という存在を知らないような子だったので言葉遣いだったり、自分が使った楽屋は最後に片付けてから出ることとか、基本的なことを教えたり。レッスンでも「譜久村はエッグ出身なのになんでできないの?」って言われたりすることが結構あったので、自分がちゃんとしないとダメだという意識は常に持っていたと思います。
――なかなか複雑な立場ですよね。
譜久村 そうですね。でも当時は、それよりも自分の中にあるネガティブな考えのせいで勝手に疎外感を感じてしまったことのほうがつらかったかもしれないです。当時はレッスンで二つのチームに分かれることがよくあったんですけど、なぜか私だけ別のチームになることが多かったり。あと、加入後初めてのシングル『まじですかスカ!』のグループ写真で、他のメンバーは前のほうなのに私だけ違ったりしたんですよ。当時のメンバー数や構成を考えると特別不自然なことでもなかったんですけど、その時の自分は「私も新メンバーなのに……」とか「オーディションに一回落ちているしオマケみたいな存在なのかな」とか思ってしまったりしていました。
そもそも自分に自信がなかったのが一番の原因なんですけど、他の9期メンバーみたいに明るいテンションではいられなかったし、みんなの個性が羨ましくって自分と比べては落ち込むみたいなことも多かったです。
――当時そういった不安な気持ちを相談できる相手はいたのでしょうか?
譜久村 もともと悩み事を人に言うのが苦手なタイプなんですけど、当時はつんく♂さんから「毎日連絡して」って言われていました。もちろん毎日は申し訳なくてできないんですけど、三日に一回ぐらいのペースでメールをしていました。そこで「他の9期メンバーにはすごく素敵な個性があるのに自分にはないんです」って相談したら「無理に探そうとしなくていいんだよ」ってメッセージをくださって、それがすごくうれしかったのを覚えています。その時の自分はすごくプレッシャーに弱くて、つんく♂さんに直接話す機会があってもすぐ泣くような子だったので、だからメールでコミュニケーションをとってくださったのかなと思います。
――そんな自分自身が不安な状況下で、10期オーディション開催が発表された時はびっくりしたのではないでしょうか?
譜久村 そうですね、9期メンバー全員ですごく落ち込みました。「私たちがダメだったってことかな」って。それで「クビにならないように頑張ろう!」みたいな感じになって、もともと仲はよかったんですけど、このタイミングでさらに結束力が高まりました。
――先輩メンバーとの交流だったり思い出も教えてください。
譜久村 なぜかすごく覚えているのが『女と男のララバイゲーム』を先輩が9期にマンツーマンで教えてくださった時のことです。私たちが基本的な部分を覚えていたこともあって先輩から「すごいね」、「めっちゃできてるじゃん」とすごく褒めてもらったんですよ。でも、その一か月後ぐらいのリハーサルで先生から「9期はなんでこんなにできないの?」ってすごく怒られて。私たちも「……あれ?」みたいな。これは先輩たちの思い出というよりも、当時の環境の話になっちゃうんですけど、そういう厳しい状況がすごく衝撃的でした。私たちができていなかったのが悪いんですけど、その当時は褒められていたのに急に怒られるという展開にとにかく気持ちが追いつかなくて「大人って怖い……」みたいになっちゃってました(笑)。誰か一人間違えると全員の責任みたいな感じだったので、私たちも切羽詰まりすぎちゃって「なんで間違えるの?」みたいにお互いを責め合うようなこともありましたし。そして自分たちができないせいで先生から怒られて、高橋さんや光井(愛佳)さんを泣かせてしまったこともありました。その時は本当に心苦しくて……。
でもつらいことだけじゃなくて、もちろん楽しいこともたくさんありました。ファンクラブイベントでパントマイムとかダブルダッチとか普段の活動とは全然違うことをする機会があったんですけど、先輩たちとゼロの状態から何かを一緒にできたことが楽しかったです。みんなで「できないー!」とか言いながら練習した時間がすごく幸せで記憶に残っています。あとは初めてのハワイツアーも本当に楽しかったです。行きの飛行機で道重さゆみさんと隣の席だったんですけど、そこで私の亀井絵里さんへの想いを存分に語って聞いてもらったり、逆に道重さんから『3、2、1 BREAKIN’OUT!』で高橋愛さんのソロアングルがすごく可愛いって教えていただいて一緒に観たり。それで最終的に可愛すぎて二人で泣く、みたいな(笑)。この時を機に道重さんとの距離はすごく縮まった気がします。