「大丈夫」「ごめん」「ありがとう」……、ふだんから私たちが何気なく使う言葉だけど、必ずしも相手に良い意味で受け入れてもらえるとは限らなくて、誰かをモヤモヤさせてしまったり、ときには傷つけてしまうことさえある。大人になっても(なったからこそ?)言葉ってほんとうに難しい。
この小説では、それぞれの事情で孤独さや喪失感を抱えている登場人物たちが、そんな一言をきっかけに互いを思い合ったり、心を少しだけ開いたりしながら生きていく様子が描かれる。彼らはみんなちょっとずつ不器用なのだけど、そのいびつなやさしさが胸に広がって、読んでいるあいだじゅうずっと幸せな気持ちでいられた。誰かとつながるってこんなすてきなことだったな、と思い出させてくれる読書だった。
少し肌寒くなる季節に読みたい、あたたかいミルクティーのような1冊。『コワかわいい』挿絵にも癒されます!