木下龍也、鈴木晴香／著『荻窪メリーゴーランド』を読む！【書店員花田さんのハタチブックセンター】

『荻窪メリーゴーランド』
木下龍也、鈴木晴香／著　￥2200　太田出版

現代短歌シーンを牽引する歌人ふたりによって作られたラブストーリー。男と女、ふたりの登場人物をそれぞれが演じながら言葉を重ね、恋が成就する最高に幸せな瞬間から、少しずつ歯車がずれ、壊れていく過程を短歌だけで綴る。

　うわ〜、濃い恋愛を「体験」してしまった、というのがまずこの本の感想だ。恋愛を味わえるコンテンツと言えば映画やコミック、小説などが多いけど、短い言葉で情景を浮かび上がらせてくれる短歌は、より心にダイレクトに刺さる気がします。
　ラブラブな時期を経て、サスペンスのように不穏な影が差してくるところからがこの作品の本番。恋人たちの心とリンクするように「あれ？ なんでお母さんには恋人が見えないの？」「あれ？ ふたりが飼い始めたのってトイプードルだったよね？」と、次々に世界がずれ始める。そのスリリングさに身を任せて読み進めていけば、いったいふたりに何が起きたのかは次第に解き明かされていく。
　うーん、恋愛って恐ろしい……いや、これ以上はネタバレになるのでやめておきましょう。でもやっぱりそれでも、この恋愛を読めてよかったなと思うんです。

『こんがり、パン　おいしい文藝』
津村記久子、穂村弘ほか／著　￥880　河出文庫

シンプルなトースト、ひと手間かけたサンドイッチ、甘い菓子パンにおかずパン、ひいてはパンの耳まで！ 著者たちそれぞれの思い出深いパンが登場する、おいしいエッセイ40編。読んだらあなたもきっとお腹がすくはず。

『鬼強ギャルマインド 心にギャルを飼う方法』
赤荻瞳／著　￥1650　SDP

「世の中は今、ギャルを求めています！」衝撃的な一文から始まる、前代未聞の実用書。つらい時、悲しい時、壁にぶつかった時……誰しもの心の中に存在している、ポジティブで優しいギャルマインドを呼び出せば、人生はなんとかなっていく――!?

『猫だけがその恋を知っている（かもしれない）』
櫻いいよ／著　￥814　集英社文庫

海と山に囲まれた町で、猫たちは今日も人間の恋を見守っている。年上女性に恋をした渉。結婚間近なのになぜか憂鬱な美海。恋人の不在に苦しむ千咲……。今注目の『交換ウソ日記』著者が贈る、5編からなる恋愛連作短編集。