この春読みたい!「生きづらさ」を描いた衝撃作【街の書店員・花田菜々子のハタチブックセンター】

2019.03.31

街の書店員のおすすめ本ハタチブックセンター|ノンノカルチャー

涙が噴き出す! 「生きづらい」を描いた衝撃作

書店員は休憩中によく本を読みます。読むというよりは入荷した新刊にざっと目を通し、内容を把握するのみのこともあるのですが、がっつり読んでしまって、しかも号泣してしまうことがある。『ダルちゃん』は泣いて泣きすぎて、そのあととても仕事なんかできない状態になってしまった1冊です。実はダルダルの生き物だけど、人間のOLに擬態してなんとか周囲と話を合わせ、普通の人たちに溶け込もうとするダルちゃん。傷つきながらも少しずつ世界に手を伸ばし、本当の自分を生きてもいいんだと立ち上がる姿が優しく描かれています。偽りの自分を生きることは誰だって少しはしていること、自分も我慢しなくちゃ、普通でいなくちゃ、本当の自分を出したら嫌われる……本当にそうでしょうか。意外と好き勝手に自由に生きてもいいのかもしれませんよ。「普通」「普通じゃない」「生きづらさ」、そんなテーマがなぜか心に引っかかる人にぜひ手に取ってほしい本です。




『ダルちゃん』 全2巻

はるな檸檬・著 各¥850 小学館


資生堂のweb花椿での連載時から大きな反響を呼んだ注目のコミック。社会になじめない一人の女性が友情、恋愛、また詩の創作に自らをなげうつことを通して世界に踏み出し、自分らしく生きることを獲得していく姿を描く。




一緒に読んでほしい2冊

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『えーえんとくちから』

笹井宏之・著 ¥680 筑摩書房


『ダルちゃん』にも登場するこの本は、著者が亡き後も多くの本好きに熱狂的に愛されています。静かで透明な言葉をじっくりかみしめれば、森の中で深呼吸をしているような気持ちに。


『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』

Jam・著 名越康文・監修 ¥1100 サンクチュアリ出版


SNSやリアルの人間関係のなかで、何げなく投げかけられる悪意やネガティブな言葉。気にしないようにするのは難しいですが、そんな心がラクになるヒントをくれる4コマ漫画&エッセイ集。


はなだ ななこ 
HMV&BOOKS HIBIYACOTTAGE店長。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』がある。



2019年5月号掲載

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