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2019.07.04
家族の役割を演じないことばが光る美しい物語
『コスモス』
光用千春・著 ¥1000 イースト・プレス
父母の離婚をきっかけに始まる、花と父との二人暮らし。日常の中のささやかなシーンと、それぞれの心の揺れ、緊張、戸惑いを丁寧になぞり、少しずつ近づいていく二人の距離を優しい線画と秀逸なモノローグで描き出した異色のコミック。
「家族」という箱は時々やっかいです。親の前でつい「子ども」を演じてしまうことはありませんか? あるいは親が「親」すぎて、一人の人間として受け止められなかったり。この漫画の主人公、花は小学生の女の子。物語は母が家を出ていき、居間でうなだれる父の背中を見つめるところから始まります。父と二人の生活。時に無遠慮な親戚たちの視線や、風変わりな転校生と対峙しながらも、二人はお互いに相手を再発見し、思いやりながら生きていく――。物事を冷静に捉え、洞察力のある花のモノローグは「父子家庭の子になったかわいそうな小学生」というパターン像にとらわれず、ことばの一つ一つが繊細で「こんなふうに感じてよかったんだな」と教えてくれるよう。役割に縛られることなく、すべての登場人物が自分らしく生きることを肯定し、応援し合って、それぞれがきちんと幸せを目指していいのだと優しい気持ちになれる作品です。
従来の親子関係を打ち破る小説2冊
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『Masato』
岩城けい・著 ¥500 集英社
海外転勤を機に、父・母・姉・弟、4人家族はそれぞれに新しい土地での居場所を作るために格闘するが、家族には亀裂が生じていく。家族の真っすぐなぶつかり合いを激しく描いた青春小説。
『神様のボート』
江國香織・著 ¥520 新潮社
帰らない夫を信じて待ち続ける葉子と、二人の娘である草子。土地から土地へ放浪を続けながら、狂信的な愛を生きる母と、現実を生きようとする娘の葛藤を、あやうくも美しい描写でつづる。
●はなだ ななこ HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE店長。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』がある。
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