待望のコミックス化!「夢中さ、君に。」を読む。【街の書店員・花田菜々子のハタチブックセンター】

2019.09.20

街の書店員のおすすめ本ハタチブックセンター

個性的すぎる! 男子高校生たちの奇妙な日常


『夢中さ、きみに。』

和山やま・著 ¥700 KADOKAWA


男子校を舞台にして、繰り広げられるシュールな会話を中心に彼らの日常を描く異端派ギャグ漫画。独特の作風はwebでもたびたび話題になっていて、このたび待望のコミックス化。二度三度読んだ時に気づく細かな小ネタにも注目。

顔面偏差値90、かつては学校のアイドルだったが女子にトラウマがあり、制服のブレザーをズボンにインしたり、ホラー漫画のような気配を出してモテないように不気味キャラを貫く二階堂。クラスメイトにしつこく「俺かわいい?」と聞き続けたり昼休みに干し芋を作ったりと、意味不明な行動ばかりしているけれどクールで頼りがいのあるキャラの林。この二人を中心に描かれるなんだかぬるっとした奇妙な世界は、屈折した笑いに満ちていて、一度読んだら忘れられない強烈なクセがある。  

 本に収録された『変な女が変な男と出会う話』がツイッターで34万いいね! をたたき出してから、売れに売れて書店ではどこも即完売してしまったとか。この号が出る頃には書店にも並んでいるはず……。  

 BL的な「萌え」の関係性を描きながらも、エロやときめきでなく、さわやかな青春でもなく、地味でキモい男子たちのジワる魅力をあぶり出した超名作。読後は周りの目立たない系男子がなぜかかっこよく見えてしまうかも?




一緒に読んでほしい2冊

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『お熱いのがお好き?』

大町テラス・著 ¥800 イースト・プレス


最近ブームになりつつある「サウナ」。熱いのは苦手、という人もこれを読めば行ってみたくなるはず。女子の裸の姿もエロくなくて、男子の欲情のために存在している裸じゃないのもよいな。


『しょうゆさしの食いしん本』

スケラッコ・著 ¥619 芳文社


料理漫画は数あれど、このゆる〜い絵柄でかなりレベルの高い本格的な料理を作ってしまうギャップがたまらない。ブリトーとか、もち米シューマイとか、難しそうだけどやってみたくなる!


はなだ ななこ 
HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE店長。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』がある。



2019年11月号掲載
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