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2019.10.25
イヤな汗がにじむ……けれど目が離せない、異色のルポ
2013年、限界集落で起きた連続殺人・放火事件。犯人はすでに逮捕され死刑が確定しているが、真相を追うために著者は何度も集落に一人で向かい、話を聞く。そこで知る事実はTVで報道されている内容とはまったく違うものだった――。
発売前から一部で熱狂的な話題を呼んでいたこの本。自分も手に取ったが最後、夢中でむさぼるように読みふけり、読み終わるまでは仕事をしていても食事をしていても「つけびの村」のことばかり考えてしまう中毒状態に陥ってしまった、そんな1冊だ。
TV、ネット、SNS、情報の渦の中で暮らす私たちは、ひどいニュースに心を痛めたとしても「犯人は異常者、原因は〇〇」と何かで報じられればとりあえず解決したような気持ちになり、いずれ忘れていく。しかし本書では熱心な取材の果てに「噂」という一つのキーワードが浮かび上がり、私たちはさらなる闇に導かれる。それは初めはほんのささやかな悪意だったが、ネットのほとんどないこの集落では娯楽でもあり、重要な情報源でもあった。読み進めるうちに彼らの奇妙な思考回路に視界を覆われ、感じたことのない不気味さに取り憑かれる。
一つの事件を追ってこんな思いも寄らぬ場所に出てしまうこともあるのだと教えてくれる奇書だ。
一緒に読んでほしい2冊
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●はなだ ななこ
HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE店長。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』がある。