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2019.11.26
日常が溶けてしまうような怖くて楽しい妄想エッセイ
頭くらくら、胸どきどき、腰がくがく、おどる言葉、はしる妄想、ゆがみだす世界は、なんだか愉快。出版社のPR誌『ちくま』で18年連載が続く、奇想天外抱腹絶倒のエッセイ集。ちなみに海外文学の話はほとんど出てこない。
岸本佐知子さんといえば、海外文学好きなら誰もが知っている大人気の翻訳家。そんな人が書くエッセイって、きっと美しくて、でもちょっと難しくて、ためになることが書いてあるんだろうな……と期待と不安を抱えながら読み始めたのだが、これがまったくの勘違いだったようで、岸本さんはどうも、いつも何の役にも立たない妄想をしているようである。
ひらがなの「ぬ」は宇宙から来たんじゃないか。夜道できかんしゃトーマスに襲われたらどうやって倒そうか。人間とゴキブリの立ち位置が逆転したら。部屋に落ちている見知らぬネジは自分の体から落ちたもので、本当は自分はレプリカントなんじゃないか。
日常のひとコマから始まる非日常を自由に飛び回るように描かれた文章は、読んでいるうちに脳みそを侵略し、一度キシモト脳になってしまったらもう後戻りはできない。自分の思考回路がぐにゃぐにゃにねじれていく感触がなんともおもしろくてやみつきになってしまう、キモ楽しい1冊だ。
『ひみつのしつもん』とともに読みたい本
岸本佐知子さんの本職がこちら。教師、シングルマザー、アルコール依存……作者の実人生をさまざまな年代と角度から切り取った物語はあらゆる意味で圧倒的で、日本でもベストセラーに。
ハライチの目立たないほう(?)……による、あまりにも普通すぎる日々を描いたエッセイ。なのだが、こちらも岸本さん同様、「何も起きていない日々がなぜこんなにおもしろいのか」と思わせる衝撃作。
●はなだ ななこ
HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE店長。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』がある。

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