新田真剣佑×北村匠海対談★ 二人だけが知っているお互いの素顔とは?【vol.1】

2020.01.27更新日:2020.01.29

新田真剣佑×北村匠海 映画『サヨナラまでの30分』重なり合う2人

普段から仲がよく、友達として、役者として、強い絆で結ばれている二人が共演。作品にかける思い、現場の裏側のエピソード、二人だけが知っているお互いの素顔を語る

正反対、だけど、一つ。二人の奇妙な“共有生活”

――ドラマ『仰げば尊し』で初共演を果たしたのが約3年前。そこから、映画『OVER DRIVE』『十二人の死にたい子どもたち』と共演が続いた二人。

北村 実はドラマ『僕たちがやりました』でも共演しているんだけど。残念ながら、一緒の場面はなかったんだよね。

新田 なので、それを“0.5作品”と数えさせていただくと。

北村 今作は“4.5作目”(笑)。

――共演をきっかけにプライベートでも親交を深め、友達として役者として、お互いをリスペクトし合っている。そんな二人が“4.5作目”と語る作品が映画『サヨナラまでの30分』だ。

北村 僕が演じる颯太は、内向的で矢印が自分にしか向いていない大学生。周りを拒絶して壁を作り自分の世界の中で生きている。だからこそ「友達はいらない」と言い放ってしまったりするんです。

――ある日、そんな颯太が偶然拾ったカセットテープ。それを再生した瞬間、不思議な出来事が起きる。1年前、メジャーデビューを目前に事故で亡くなったバンド「ECHOLL」のヴォーカルのアキ、彼と体が入れ替わってしまったのだ。

新田 颯太の矢印が内側に向いているなら、アキはそれが思い切り外側に向いている人。ある意味、正反対というか。明るくて、ポジティブで、誰とでもすぐに仲よくなれて、エネルギーを自分で作って放出する太陽みたいな人なんです。

――アキの姿が見えるのは颯太だけ。驚く彼にアキは言う。「お願い、ちょっと体貸して」。そして、カセットテープが再生される30分だけ、二人が入れ替わり体を共有する、奇妙な生活が始まる。

颯太かアキか聞かれたら、僕たちは“颯太”です

北村 颯太はわりと演じやすかった。僕、内気な役は得意なので(笑)。また、似ているなと感じる部分もあって。たとえば、音楽好きなところ、人と距離をとってしまったりするところ。僕はあそこまで人との関わり合いを避けたりはしないけれど、過去には人見知りだった時期も経験しているので。颯太はアキと出会い、彼の仲間や人生に関わることで少しずつ変わっていく。それはアキが作り出してくれた道だったんだけど、次第に自分の道を自分の足で歩き始めて……。共鳴する部分があったからこそ、日々、そんな颯太に勝手に勇気づけられたりもして。

新田 アキ、難しかったな……。

北村 最初、まっけんとアキはイメージが重なると感じたんだけど。

新田 アキか颯太かと聞かれたら、実は二人とも、颯太だよね。だから、難しかった。芝居はもちろん、音楽的な場面も。匠海は普段からプロとして音楽と密接に関わっているけど。僕はバンドも音楽もやっていないので。音のノリ方だったり“慣れ感”を出すのがとにかく難しかった。

――今作で二人は歌声を披露。その素晴らしさも大きな話題を呼んでいる。その中には二人でWボーカルを務めた楽曲も。 レコーディングも経験した。

北村 レコーディング現場のまっけんはストイックでしたね。最近、「僕はストイックじゃない」と否定している記事を目にしたんですけど……。やっぱり、ストイックでしたよ、彼は(笑)。

新田 いや、あまりにも「ストイック」「ストイック」言われるからさ……。

北村 ちょっと反発したくなったんでしょ(笑)。

新田 そうそう。「そんなことないぞ」「だらしないぞ」って(笑)。

北村 でも、根っこはやっぱりストイック(笑)。僕なんか、流れをつかみながら歌う感じだったんだけど。まっけんは「ここはもう一度歌いたいです」って、一音一音にこだわっていて。

新田 こだわりがね、強くなっちゃうんだよね。レコーディングした曲は高校生の頃のアキの歌なんで。新田真剣佑として本気で歌うんじゃなくて、カラオケを歌うような感じにしたくって。

北村 そう言いつつ、すごくうまいよね。映画を見てもらえば分かると思うけど、本当にうまい。でも、作中の歌声はやっぱりアキで、普段のまっけんとは少し違う。カラオケで洋楽とか歌わせたら、驚くくらいにうまいからね。

一つの役を二人で演じるそれは不思議な感覚だった

北村 アキと颯太が入れ替わっている場面では僕がアキを演じることになる。まっけんが納得する芝居を僕がしないと、それはアキではない。僕が作り出したアキとまっけんが演じるアキにはきっと誤差が生まれる。だからこそ、僕はもう「まっけんになろう」と。撮影が始まったばかりの頃は、彼に段取りを演じてもらい、それを見てから演じたり。彼の芝居を見ながらアキを作っていきました。

新田 完成した映画を見ると、見事にスイッチしていて。自分が演じるアキと重なるものが多々あった。

北村 颯太は演じやすかったけど、アキはやっぱり難しくて……。たとえば、まっけんならではの言葉のスピードがあるんですよ。最初にポンッと走り出す感じ。僕はムワ〜ンとしゃべってしまうので。まっけんがそう言ってくれて安心した(笑)。

――お互いをよく知る関係性だからこそ演じることができた“二人で一つ”の役。

新田 オレもアキだし、匠海もアキ。すごく不思議な感覚だよね。

北村 二人で歌っているのも不思議な感じ。ちなみに、台本を読んだ時「これは青春を取り戻す映画だな」って思ったの。アキは“あの頃”の、颯太は“手放した”青春を取り戻すためにもがくというか。同時に、やり残したこと、足りないものだらけだった自分……自分の学生時代をふっと思い出した。それだけに、現場ではもう一つの青春を体験できたような、自分も何かを取り戻せたような、そんな感覚もあって。

新田 現場、楽しかったもんね。共演者との距離も縮まるし、作品の中にずっといられるから、オレ、地方ロケって好き。

北村 変わっていく颯太の姿もだけど、颯太を変えていくアキの言葉にも勇気をもらった。足りないものだらけだった“あの頃”の自分に届けたいと思うくらい、背中を押してくれる作品になってるから。

新田 多くの人に見てもらいたいよね。

北村 最後、めっちゃ泣いたからね。一人号泣。ネタバレになっちゃうから言えないんだけど、アキがねぇ、本当にねぇ、泣かせるんですよ……。

新田 匠海の涙を誘える芝居ができていたなら、オレはすごくうれしいよ(笑)。


©2020『サヨナラまでの30分』製作委員会

映画『サヨナラまでの30分』

一つの体を二人で共有することになった颯太(北村)とアキ(新田)。最初は正反対のアキを毛嫌いしていた颯太だが、アキの言葉や彼を通して出会う友達や恋が少しずつ彼を変えていく。心を揺らし背中を押してくれる、不思議で泣ける青春ムービー。

Profile

あらた まっけんゆう

1996年11月16日生まれ。アメリカで俳優活動をスタートさせ、2014年に活動拠点を日本に。以降、国内外の話題作に次々と出演。3月から舞台地球ゴージャス二十五周年祝祭公演「星の大地に降る涙 THE MUSICAL」に主演する他、主演映画『ブレイブー群青戦記ー』が2021年公開予定。

きたむら たくみ

1997年11月3日生まれ。幼い頃にスカウトをきっかけにこの世界へ。話題作への出演が途切れない人気俳優。今年は今作の他にも映画『さくら』『思い、思われ、ふり、ふられ』の公開も控えている。ダンスロックバンド「DISH//」のメンバーとして音楽活動も。

2020年3月号掲載
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