ノンノ書籍連載・花田菜々子さんに聞く「こんな私におすすめの本ありますか?」《前編》

2020.07.13

ノンノの書籍連載を担当する、書店員の花田菜々子さん。今回はノンノウェブオリジナル企画として、いろいろな悩みをもった20代女子におすすめの本をチョイスしてもらいました。同じような悩みを持った人にはもちろん、そうでない人にも面白い本が揃っているので、是非チェックしてみてくださいね。

 1人目 Nさん(大学4年生)

自粛期間中に、3年付き合っていた彼氏にフラれました。前向きになれる本はありますか?

自粛で会えない時間が多くなり、3年間付き合った彼氏にフラれてしまいました。話し合った末の結果なので別れに納得はしていますが、人生初の失恋。モヤモヤして、立ち直ることができません。自粛がなければこうならなかったのでは、というどこにもぶつけられない悔しさもあります。また、新しい出会いを考えるうえで自分の結婚願望が強いのも悩み。こういうのは、男性にとっては重いのかな、と思ったり、ネガティブに考えてしまいます。

\ おすすめの本、1冊目は /

『ノルウェイの森』

村上春樹・著 上・下巻 各¥620 講談社文庫

「あまりに有名な名作なので今さら紹介するような本ではないかもしれませんが、20歳くらいのみなさんにはかえって新鮮かもと思い、選ばせていただきました。1970年前後が舞台で、物静かで地味な大学生の男の子が主人公。二人の女性が登場するのですが、一人は直子という、自殺してしまった友人の元恋人で、心を病み、療養所で過ごしています。もう一人は主人公がその後新しく出会う、緑という女性。明るくて、彼の世界の色を変えてくれるような存在です。彼は直子を気にかけ、想いを寄せていますが、緑にも心を動かされています。

単純にどちらかを選ぶというようなストーリーではなく、彼が二人それぞれに向き合い、自分自身にも向き合いながら物語が美しくゆっくりと進んでいきます。人生でたった一度の季節にしか訪れない、複雑で特別な恋愛感情を描かれていると思いました。私自身も高校生のときにはじめて読んで、何度も繰り返し読んだ特別な1冊。恋愛って、こうだからこうなった、という明確な因果関係があるわけではなく、PDCAで回せないものだと思うんです。記憶に焼き付いて離れず、その後の人生に大きく影響する恋愛は、私のまわりを見ても若い頃に起こることが多いような気がしています。Nさんも、3年付き合って別れてしまった、しかも初めての失恋だったということで、大きな出来事だったのではないかと思います。この作品に描かれた《人生に一度の恋愛》を読むことで、Nさんの次の一歩に繋がるところがあれば、と思い、おすすめさせていただきました」(花田菜々子さん・以下同)

\ おすすめの本、2冊目は /

『ハッピー・マニア』

安野モヨコ・著 全11巻 祥伝社

「もう1冊おすすめしたいのは、うって変わって明るいトーンの安野モヨコ先生の恋愛漫画。90年代後半に爆発的にヒットした漫画で、私も20歳くらいのときはバイブルのように読んでいました。主人公のカヨコは、とにかく彼氏が欲しい、男が欲しい、結婚したい!と情熱に燃えていて、トライアンドエラーを繰り返します。「あの人かっこいい、付き合いたい!」と思ってすぐにアタックをかます。その結果、セックスして彼女になれたと思ったけどあれから連絡がない……みたいな展開もしょっちゅう。基本的にはドタバタギャグ漫画で、マシンガンのような恋愛の「あるある」描写にはとても共感できます。カヨコは言ってみればおバカだけど打たれ強い。何があっても「よし、次行こう」と前に進むんです。辛いエピソードも笑いに変えてくれる作品。カヨコはとにかく結婚、結婚、と前のめりで、それゆえの失敗もあります。結婚を追い求めた先に本当の幸せがあるのか、ということも問いかけてくる。結婚願望自体が悪いことだとは思わないですが、結婚願望が今の恋愛への障害になっているということは、もしかしたら自信の無さや、将来への不安や、周りと比べてしまう気持ちが、結婚への欲求になっている部分もあるのかもしれないですね。そういうことも、深く描いている作品。失恋直後には合わないかもしれないですが、ちょっと元気が出てきたときに是非読んでいただきたいなと思います」

次回は、また違った悩みを持った2名の方に本をおすすめします。是非チェックしてくださいね。

● はなだななこ

HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE店長。新刊『シングルファーザーの年下彼氏の子ども2人と格闘しまくって考えた「家族とは何なのか問題」のこと』発売!

▼この記事を書いたのは…

編集 E美

編集 E美

入社3年目。主にファッションを担当。漫画とイケメンが好き。最近は変なガチャガチャを集めるのにハマっています。

Icons made from svg iconsis licensed by CC BY 4.0