王谷晶著『ババヤガの夜』を読む【街の書店員・花田菜々子のハタチブックセンター】

2020.12.21

街の書店員のおすすめ本ハタチブックセンター

ドキドキが止まらない! 女と女の力強い物語

ババヤガの夜


『ババヤガの夜』

王谷晶・著 ¥1500  河出書房新社


ケンカに強く暴力だけが趣味の依子は、ある日暴力団に無理やり連れ去られ、会長の一人娘・尚子の護衛として雇われることになった。だが、彼女の婚約者がとんでもない野郎だと知り……。拳の咆哮がとどろくシスター・ハードボイルド小説。

 この本を最初に友人からすすめられたとき、正直、「ヤクザとかバイオレンスとか苦手なんだけどなあ」と気乗りがしなかった。だが半信半疑でページを開いたが最後、依子のすがすがしい強さ、かっこよさ、今までにないヒーローの登場とスピード感あふれるストーリーにワクワクして、読むのがやめられなくなってしまった。 

 ひと昔前までは、女を助けてくれるのはイケメン男子と決まっていたし、助けられる女もか弱くて可愛くなければいけなかった。そんな常識を軽くぶち壊しつつ、しかもそんなことが関係なくなるくらい面白い物語。そして、絶対に騙されてしまうどんでん返しまでアリ。え? どこから騙されてた? と2周目も読みたくなってしまうこと間違いなしなのだ。

 何かと楽しいことが縮小されがちな2020年だったけど、そんな年の最後には、ぜひ本作を読んでテンションをあげて欲しい。そして2021年も強くやさしくかっこいい女子を目指していきましょう!




破壊力満点な女子たちの2冊

風よ あらしよ


『風よ あらしよ』

村山由佳・著 ¥2000  集英社


ベテラン作家の村山由佳が実在の人物伊藤野枝をモデルに、自由奔放で激しく生きた彼女の恋愛と人生をパワフルに描く。社会小説、フェミニズム小説としても読める重層的なおもしろさが魅力。



マイ・ブロークン・マリコ


『マイ・ブロークン・マリコ』

平庫ワカ・著 ¥650 KADOKAWA


誰よりも大切な女友達・マリコが自殺した――。彼女を苦しめていた父親から遺骨を奪い、主人公は遺骨を抱いて海へと旅立つ。その激しさとスピード感が話題となり’20年大ブレイクした必読の1冊。




はなだ ななこ 
HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE店長。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』がある。



2021年2月号掲載
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