理想の人生、という言葉から思い浮かぶのはどんなイメージだろうか。憧れの職業、幸せな家庭、友達と過ごす時間……それらもすてきに違いないけれど、私たちがつい見過ごしてしまうものがある。シンプルなやさしい線で描かれるこの漫画の中で、主人公はカフェでとなりの席の会話にツッコミを入れたり、道で話し込む中学生カップルをいいなと思ったりしているだけ。だが、そんなささやかさになぜか心を揺さぶられる。
「自分が何かをする」ことだけでなく、そこに広がる世界から美しさを感じ、受け止めること。これも大事な自分の人生ではないだろうか。壮大な夕焼けやきらきらする海を見たとき、私たちは目を奪われてあるがままを感じようとする。けれどその態度は、特別なものを見たときだけでなく、何気ない日常にこそ必要な感覚なのかもしれない。
この人のように世界を見てみたら、人生はもっと輝き出すだろう。そんなことを教えてくれる本だ。