2020年は甲子園を目指す人でなくとも、誰もが少なからず夢を奪われた年だったのではないだろうか。高校球児への一瞬のインタビューなら、彼らは、悔しいです、と答えるのかもしれない。だけど、もしゆっくり話を聞けたら。今、何を考え、どんな言葉を持っているのだろう? 野球名門校で補欠止まりだった小説家がそんな疑問を胸に、20歳以上も年下である彼らの「ほんとうの言葉」を聞きに行く。
私は野球とも部活動とも無縁な人生で、甲子園にも興味はない。しかし「コロナのせいにせずに頑張ろう」と思いながら何をどう頑張っていいのかわからず停滞する日々を持て余す中、彼らへのインタビューにはついつい引き込まれ、一気に読んでしまった。
何かに真剣に向き合っている人にしか見えない光がある。それはよく考えてみればコロナ禍に関係なく、ずっとある光だ。彼らの「ほんとうの言葉」は、輝きを失ってしまった心にも光のようにまっすぐに差し込むだろう。