90年代と現在の一番の違いといえばやはり、インターネットがあるかないかだ。いいなと思う作品に出会ってもそれについてもっと知るのは大変だったし、同じものを好きな人と出会うこともすごく難しかった。じゃあ不便でつまらなかったかというとそんなことはなくて、あれはあれで憧れが増してよかった、と作者と同じく当時10代だった自分は思う。
この作品に登場するのは当時最先端の音楽やお笑いに出会って、すっかりそのカルチャーに夢中になった10代の少年少女たち。何者でもないふつうの彼らが「好き」を突きつめ、失敗したり挫折したりしながら少しずつ大人になっていく姿が描かれる。
90年代カルチャーに興味がある人や、今何かに夢中になっている人はもちろん、そうでない人にも読んでほしい。時代が変わっても、大人になる直前の時間のせつなさは変わらないものだし、好きという想いを胸にひたむきに生きる人の姿はどんなに情けなくても美しくてかっこいいと思えるだろう。