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ニュース
2025.09.24
シャネル・ネクサス・ホールは、2025年秋、AIアートとエコロジーが融合する展覧会を開催します。

「Synthetic Natures
もつれあう世界:AIと生命の現在地
ソフィア クレスポ / エンタングルド アザーズ」
登場するのは、リスボンを拠点に活動するアーティスト、ソフィア クレスポ(Sofia Crespo)と、彼女がアーティスト・デュオとして活動するエンタングルド アザーズ(Entangled Others)。最先端の彼らの作品は、いま世界のアートとテクノロジーが交差する臨界点で、もっとも注目を集めています。
クレスポは、人工知能(AI)と生命科学の融合において独自の詩学を築いたアーティストです。ニューラルネットワークを通して生成されたイメージは、虫の翅(はね)や植物の胞子、深海のクラゲのような形をしながら、どこか既視感を抱かせる――けれど決して見たことのないものたち。そのフォルムには、AIが人間の観察力を模倣し、進化的な「創造行為」に踏み込むプロセスを可視化しています。
エンタングルド アザーズは、クレスポとノルウェー出身のアーティスト/研究者であるフェイレカン カークブライド マコーミック(Feileacan Kirkbride McCormick)によって2020年に結成されました。彼らは「エンタングルメント=もつれ合い」という概念を軸に、人間と非人間(more-than-human)のあいだにある関係性を、データと想像力を駆使して再構築します。観測できない深海、システムとしての植物、非線形に変化するデジタル生態系――こうした存在の複雑な振る舞いを、ヴィジュアルによる「シミュレーション」として提示するのが彼らの方法です。
本展では、海中2000メートル以深の世界を探る《liquid strata: argomorphs》(2025)、湧昇という地球規模の現象とAIの視覚言語を結びつけた《specious upwellings》(2022-2024)、そして遺伝情報とデジタルデータの構造を重ねた《self-contained》(2023-2024)を含む5シリーズを紹介予定。映像、彫像そしてデジタルインスタレーションなどの展示作品が観るものに投げかけるのは、いずれも、断片的なデータと仮説から世界を読み解こうとする科学的営みと、詩的な想像力との交点に立ち現れるヴィジョンです。
彼らの作品において、テクノロジーを介して生成されたイメージは、自然の“代替物”ではなく、「人間が自然をどう見たいと願っているか」の深層を写し出します。そして、絡まり、共鳴し、変容していくそれらのイメージは、現実世界の見え方を静かに揺さぶります。
展示内容
《specious upwellings(見せかけの湧昇)》(2022-2024)




深海から冷たく栄養豊富な水が、海面近くへと押し上げられる「湧昇」と呼ばれる現象は、地球を覆う海洋全体で発生している非常に大きな運動で、海洋生物の生態系を支える重要な役割を果たしている。本作は、「湧昇」に関するさまざまなデータやイメージをもとに、AIを用いてビジュアライズした作品である。
多様な情報がもつれ合って形成される「未知の生き物のようなイメージ」は、私たちが、巨大な現象の全容を捉えようとするほどに、そこに内包される複雑な関係性と、まだ知覚できない広大な領域の中に迷い込んで行くことを暗示している。
《self-contained(自己完結モデル)》(2023-2024)


本作は、遺伝子の構造をデジタルデータのコードと重ね合わせ、デジタルイメージの遺伝子組み換えをシミュレートする作品である。
特定のイメージを中心に、そこに接木をしていくように様々なイメージのコードが、次々と付与されていくことで、全く新しいハイブリッドなイメージが生成される。また、遺伝子モデルを模した3Dプリント彫刻には、この過程を経て生まれたイメージのDNAデータが保存されている。デジタルデータと、生命の構造を重ね合わせ、イメージのエンタングルメントを生み出す本作は、自然とテクノロジーを並列に捉え、新しい関係性を模索する彼らの思考を表象している。
アーティスト

ソフィア クレスポ
1991年生まれ、アルゼンチン出身。現在はポルトガル・リスボンを拠点に活動。
テクノロジーと有機的生命との共生関係に深く入り込み、テクノロジーを自然から切り離されたものとする従来の見方を再考する作品を制作。彼女は、AIのメカニズムがどのように有機的な形態を模倣し、進化させることができるかを探求し、AIによって生成されたイメージと人間の創造性の間に共通項を模索しています。
代表的なプロジェクトには、《neural zoo(ニューラル・ズー)》(2018-2022)や《artificial natural history(人工自然史)》(2020-2025)などがあり、仮想的な生態系や生命体をAIなどを通じて表現することで、「人工」と「自然」の境界について鑑賞者に問いかけています。
2024年には、バルセロナのカサ・バトリョに招待され、《structures of being(生命の創造性)》というプロジェクション・マッピング作品を制作。アントニ ガウディの建築理念からインスピレーションを得ており、自然を「無限の創造性を持つ進化のプロセス」として表現しています。
アーティストとしての活動に加えて、マサチューセッツ工科大学やオックスフォード人工知能学会などで講演を行い、機械学習を用いる現代のアーティストの役割についても模索しています。
2025年にはABSデジタルアート賞にてアンナ リドラーと共に「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」を受賞。

エンタングルド アザーズは、フェイレカン カークブライド マコーミック(1987ー、ノルウェー)とソフィア クレスポ(1991ー、アルゼンチン)によって2020年に設立された実験的なアーティスト・デュオ。
彼らの活動の根底には「エンタングルメント(絡まり・もつれ)」という概念があります。これは、どのような存在であっても、単独で存在しているのではなく、すべての行動、表現が、相互に結びついた多様な存在を通じて共鳴しているということを意味しています。彼らは作品を通して、テクノロジーや自然界の種の表象に潜むバイアスに対する問いを投げかけます。そして、計算に基づく生物学的モデルへの回帰を提案し、種や生態系を超えて広がる「エンタングルメント」の概念を探究しています。
また、彼らはこの世界を支えている多様性と相互依存性、そこに関与する「人間のテクノロジー」との間の複雑な関係性を認識し、大切に育むことの必要性を強調しています。そして、豊かな未知の存在との間にある距離を取り払い、私たちすべてを支える「世界=生命の精巧な織物(タペストリー)」への深い理解と感謝を呼びかけています。
これまでにトレド美術館(オハイオ州、アメリカ)、ヴィクトリア&アルバート博物館(ロンドン、イギリス)、NeueHouse LA(ロサンゼルス、アメリカ)、マサチューセッツ工科大学(マサチューセッツ州、アメリカ)、Re:Humanism(ローマ、イタリア)、オックスフォード大学(オックスフォード、イギリス)、ユネスコ本部(パリ、フランス)、ゴールドスミス大学(ロンドン、イギリス)、タイムズスクエア・ミッドナイトモーメント(ニューヨーク、アメリカ)など、様々な場所/会場でのプロジェクトに参加。
また、彼らの作品は、バッファローAKG美術館(ニューヨーク、アメリカ)、オナシス財団(ファドゥーツ、リヒテンシュタイン)、コレクシオン・ソロ(マドリード、スペイン)をはじめとする、個人および公共機関のコレクションにも収蔵されています。
「Synthetic Natures
もつれあう世界:AIと生命の現在地
ソフィア クレスポ / エンタングルド アザーズ」開催概要
【会期】2025年10月4日(土)~12月7日(日)
【開館時間】11:00~19:00 (最終入場18:30)(イベント開催時は開館時間が異なります。最新情報はウェブサイトをご確認ください。)入場無料・予約不要
【会場】シャネル・ネクサス・ホール
中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング 4F
【主催】シャネル・ネクサス・ホール