#前田拳太郎と沼るマンガアニメ道!
俳優 前田拳太郎さん連載【#前田拳太郎と沼るマンガアニメ道!】vol.6 憧れの漫画家 咲坂伊緒先生に会ってきた!!(後編)
2024.08.16
大のマンガ&アニメ好きの俳優・前田拳太郎さんがノンノ読者にオススメの作品について熱く語る連載。『アオハライド』や『ストロボ・エッジ』『思い、思われ、ふり、ふられ』など、少女マンガ界の第一線で活躍し続けるマンガ家・咲坂伊緒先生との豪華対談の後編をお届け! 最後には先生から前田さんへのスペシャルなサプライズも!
ふとした瞬間に思い浮かぶ珠玉の名シチュエーションたち
前田 僕は先生の作品で描かれる“人を好きになるキッカケ”がすごく好きなんです。『ストロボ・エッジ』の、仁菜子ちゃんと蓮くんだけが「季節の変わり目が匂いで分かる」という描写が大好きで! 影響されて、友達の前で「あ、冬の匂いになった」とか言っていました。
咲坂 なんと! ありがたい。
前田 「好きになるキッカケ」のエピソードはどうやって思い浮かぶのですか?
咲坂 たまたま思いつくことが多いですね。匂いや色など、自分から見えているものが他の人と同じとは限らないじゃないですか。それをどうやったら相手と共有できるんだろうということはよく考えています。“楽しい”っていう感情もどれだけ言葉を尽くしてもまかないきれない瞬間はあるし……。どんなシチュエーションや言葉なら、好きな人と共有することができるのかなって。
前田 なるほど。その中で思いついたことを何かにメモしたりするのですか?
咲坂 しないんです。したほうがいいとは思うんですけど(笑)。
前田 作業しながらふいに思い出して、それを作品に落とし込むっていう感じなんですね。
咲坂 そうです。もし忘れちゃっていた時は、それまでなのかな、と。
電車通学には恋のキッカケがたくさん♡
前田 お話を考える時は展開をしっかり決めていますか? それとも大枠を決めて……という感じですか?
咲坂 基本的にはストーリーの大枠と、どう終わるのかの絵を決めて描くことが多いです。ただ『サクラ、サク。』だけは、大枠は決めつつ、ラストシーンが浮かばないままライブ感覚でやってみた作品でした。
前田 僕は『サクラ、サク。』を読んで、電車通学をしたくなりました!
咲坂 電車通学っていいですよね。これまでの作品でも何度か電車を出していたので、“出しすぎ”って言われて抑えていたんですけど(笑)、『サクラ、サク。』でそろそろまた描きたいなと思って。
目立たず、誰も気付かないような存在だった主人公・藤ヶ谷咲。ある日、「桜」という名前の人に電車で助けられたことをきっかけに「困っている人を見たら絶対放っておかない」と決め、自分を変えていく。そんな咲が高校生になり、「桜」と呼ばれる男の子に出会うことから物語が動き出し……! お互い同じ気持ちなのにすれ違ったり、揺れ動いたり。高校生ならではの繊細な思いを丁寧に描いた学園ラブストーリー。咲坂伊緒/著 全9巻 集英社
前田 僕は徒歩通学だったし周りも自転車の人が多かったから、電車通学にはあまりなじみがなくて。電車通学はマンガの中のシチュエーションっぽくて青春を感じます。先生は電車通学でしたか?
咲坂 高校生の頃はそうでした。好きな先輩の帰りの時間にあわせたり、電車通学ならではの出来事があったなぁと思いますね。
前田 確かに、先輩だと電車ぐらいでしか会える機会がなかったりしますもんね。
咲坂 そうなんです。
“高校生”にしかない未完成のきらめきに夢中!
前田 僕は学生役を演じることで、自分が高校生の頃に経験できなかった青春を追体験している気分になるんです。先生も描きながら青春を感じたりしますか?
咲坂 “青春だな〜”と思うことはあるのですが、意外と客観的にみている気がします。
前田 学生ものを描くのは楽しいですか?
咲坂 楽しいです。学生ものって限定感があるじゃないですか。文化祭とか体育祭、修学旅行とかイベントも多いですし。
前田 僕も読み手としてはもちろん、演じる上でも学生ものが好きなんです。高校生ってどこかまだ不完全じゃないですか。
咲坂 ものすごーーく分かります。
前田 その不完全さが演じていて楽しいんです。今、24歳の僕が同じ立場だったらもっとうまくできると思うけど、高校生の頃の自分を思い出すとそれができなくて。そんな不器用な部分を演じることに魅力を感じています。
咲坂 分かります。私もその不完全さを描きたいから、学生ものが好きなのだと思うんです。自分が学生の頃を思い返すと“なんであんなちょっとしたことでこの世の終わりのように思っていたんだろう”とか(笑)、好きな人からメールがきて1日中うれしかったこととか、どんな感情もコントロールできないところがすごく好きです。
あえて“苦手”な感情から誕生したあのキャラクター
前田 女性のキャラクターについては、描きやすい・描きにくいはあるものですか?
咲坂 男の子よりは肩の力を抜いて描けているような気はします。
前田 『ストロボ・エッジ』の仁菜子ちゃんみたいに明るい子もいれば、『思い、思われ、ふり、ふられ』の由奈ちゃんみたいにおとなしい子、山本(朱里)さんみたいにサバサバだけど繊細な子といろんなタイプがいますよね。
咲坂 ちなみに由奈は私が苦手なタイプを好意的な気持ちで描いてみようと思って生まれたキャラクターです。
前田 そうなんですね!
咲坂 初期は自分では何もしないのに“何かいいことないかな”って思っている子で、私はそういうところに共感はできないタイプなんです。あえてそういうタイプを好意的に描いてみようと思って、描き進めたら結果としてすごく成長して、自分からどんどん行動してくれるようになりました。
前田 苦手なキャラクターを描いてみようという視点がすごいです。
咲坂 きっと成長させれば好きになるだろうなとは思ってはいました。
前田 そのアプローチで描かれたのは初めてだったんですか?
咲坂 そうですね。
前田 すごい、大成功だ!
第一線で活躍し続ける秘訣は“執着しない”こと
前田 咲坂先生はマンガ家として長く活躍されていますが、ひとつの仕事を続けるためのモチベーションの保ち方はどうされていますか?
咲坂 そうですね……、“この仕事がなければ生きていけない”と思っていないことかもしれません。『思い、思われ、ふり、ふられ』の約4年の連載が終わった後、割と長いお休みをいただいたんです。次の連載の『サクラ、サク。』が始まる前までに2年ぐらい空いて、その間におそらく読み切り1本ぐらいしか描いてなかった気がします。周囲の人には「絶対にすぐマンガを描きたくなるよ」と言われていたんですけど、いい意味でそうでもなくて(笑)。もちろん描いたら楽しいことは分かっていたので、“これがなくなったらどうしよう”がないからこそ続けていられているのかな、とも思ったりします。
前田 いい意味で執着を持たないというか。“マンガを描く楽しさ”はどこに感じていますか?
咲坂 自分が漠然と思っていることを、言語化できてロジック的にもつながって一つのストーリーとして出せた時はすごく楽しいです。思っていることがふわふわしていて、うまくストーリーに落とせない時は消化不良でモヤモヤします。
前田 その場合はどう対応するのですか?
咲坂 担当編集さんに話してみます。そこでどんなふうに通じるかを確認したり、補足してもらうことで自分の中で腑に落ちたり。
前田 担当編集さんってすごい。僕は先生が描かれるキャラクターのクセもリアルですごいなと思っています。“ふりふら”の和臣くんが「ウソをつくと鼻を触る」っていうクセはすごく印象に残っています。読み返すとたまに触っていることがあったりして、楽しい。
咲坂 “読み返したら楽しい”っていうのはマンガを描く上で大事にしていることではあります。好きなマンガって何回も読んじゃうじゃないですか。
前田 もう何周もしちゃっています(笑)。
咲坂 うれしいです。読む度に新しい発見がある感覚を私も昔読んでいた作品で経験しているからこそ、そういうギミックも考えるようにしています。
前田 うわ〜すごすぎる! ストーリーの考え方やキャラクターの生み出し方など、たくさんのお話を伺うことができて、感激しっぱなしでした。帰ってまた読み返します!
咲坂伊緒先生のプロフィール
6月8日生まれ。1999年にマンガ家デビュー。美しさとリアリティが共存する絵柄と、感情豊かな心理描写で多くのヒット作を生み出す。『ストロボ・エッジ』、『アオハライド』、『思い、思われ、ふり、ふられ』など実写映画化作品も多数。現在、「別冊マーガレット」で最新作『ユメかウツツか』が連載中。
「別冊マーガレット」で最新作『ユメかウツツか』が好評連載中!
人とうまく話せないのが悩みの高校1年生の宝生いろは。彼女の心のよりどころは、高校の受験勉強で通っていた図書館で出会った先輩の阿久津想。同じ高校に入学するも想を見つけられず、クラスメイトとの距離も縮められないままで落ち込む日々。そんなある日、ずっと欠席していたクラスメイトとして、阿久津想が登校してきて……!? 気になるストーリーは「別冊マーガレット」でチェック!
おまけの「今日のけんたろう」
なんと対談の最後に咲坂先生からサプライズで、前田さんのイラスト入りサイン色紙のプレゼントが! 「まさかこんなに素晴らしいものをいただけると思っていなかったので本当にビックリしました! 額を買って家宝として飾ります!」
Profile
前田拳太郎
俳優
1999年9月6日生まれ、埼玉県出身。劇団EXILEのメンバー。2021年に俳優デビュー。同年、『仮面ライダーリバイス』で、五十嵐一輝/仮面ライダーリバイ役で主演を務めた。その後も、ドラマ『女神の教室〜リーガル青春白書〜』や映画『劇場版 美しい彼~eternal~』、ドラマ『わたしのお嫁くん』など、話題作に立て続けに出演。放送中のテレビ朝日シン・時代劇ドラマ『君とゆきて咲く〜新選組青春録〜』(毎週水曜深夜0時15分〜)では、奥智哉さんとW主演を務める。前田さんは鎌切大作役を演じる。8月20日(火)夜7時30分~放送のNHK総合ドラマ「ダーウィンが行く!?」に出演。
Item Credit
[プロフィール画像] カーディガン¥48400・シャツ¥48400/エンケル(ヨーク) Tシャツ¥16500/スタジオ ファブワーク(リヴォラ)
[トップバナー画像] シャツ¥35200/77サーカ(CIRCA) Tシャツ¥17600/アー・ペー・セー カスタマーセンター パンツ¥31900/ユハ
Staff Credit
撮影/千葉タイチ ヘア&メイク/佐藤健行(HAPP’S.・前田さん) スタイリスト/高野麻子(前田さん) 文/上村祐子 web構成/吉川樹生
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