#前田拳太郎と沼るマンガアニメ道!

【#前田拳太郎と沼るマンガアニメ道!】vol.8『SAKAMOTO DAYS』朝倉シン役声優・島﨑信長さんとスペシャル対談(後編)

2025.03.21

幼いころからマンガやアニメが大好きな俳優・前田拳太郎さんが“沼る作品”をナビゲートする連載。今回は、現在放送中のアニメ『SAKAMOTO DAYS』で、元最強の殺し屋・坂本の部下【朝倉シン】を演じる声優・島﨑信長さんと対談!大盛り上がりの前編に続いて、後編ではインプットの仕方や緊張との向き合い方など、non-no読者にも役立つ話がたくさん!

声優島﨑信長さんと前田拳太郎さんのツーショット

前田 前編では、“声優のキャスティグはバランスが大事”というお話や、“型にあてはめすぎず、キャラの振り幅まで考えて自然な人間にする”というお話を伺わせていただきました。本当に勉強になることばかりです!

島﨑 型にあてはめすぎないとはいっても、もちろんアニメにおけるお約束やお作法もちゃんと立ててあげなきゃいけないよ。

前田 お約束というのは、キメ台詞などでしょうか?

島﨑 そう! 必殺技とか変身とか、そういうシーンはやっぱキメてほしいじゃん。リアルな世界で考えたら、キメ台詞はサラッと言って、ちゃっちゃと敵を退治したほうが有利かもしれない。でも、アニメの世界はそうじゃないからね(笑)。

前田 サラッと済まされたら嫌かもしれないです(笑)。

島﨑 “技名を叫んだら、どんな攻撃をするか敵にバレバレじゃないですか?”とか思うかもしれないけど、アニメの場合はそういうことじゃないんだよね。

前田 確かに。そういう決まりごとも大事ですね。

島﨑 すごく大事。僕は、決まりごとに沿ってばっかりになるのは嫌だっていうだけで、そうやって約束を守りながら演じるのも楽しいと思ってるよ。

前田 やっぱり島﨑さんは柔軟性がすごいです!

島﨑 そんなことないよ(笑)。好きなことだからできるっていうだけだよ。

笑顔で取材を受ける声優島﨑信長さん

前田 島﨑さんの役との向き合い方は、日頃からいろんな人の感情や行動の振り幅を意識していないとできないように感じます。昔から人間観察みたいなことをしていたんですか?

島﨑 昔からではないかな。この仕事にのめりこんで、好きになった結果、どんどん人について考える機会が増えていって。気がついたら普段の生活と密接になって、自然と人間観察をするようになった感じかな。“人間観察をしよう”って意識しているというよりは、自然にアンテナを立ててる感覚かな。

前田 では、他にインプットしようと意識してやっていることはあるんですか?

島﨑 それもないかもしれない。インプットしようとしてやることって、“この教科を勉強しよう”という感覚に近いと思うんだよね。逆に、無意識にやっていること=自分が興味関心のあることだから、それは自然に伸びていくと思っています。例えば、昔から本を読むのが好きだったっていう人は多分、現代国語の読解が得意なんだよね。

前田 確かに。

島﨑 昔から洋画や洋楽に触れてましたっていう人は、英語のリスニングの成績が多分いいだろうし。僕の人間観察力は、成績をあげようと意図して勉強しているわけではなく自然に伸びている、その感覚に近いのかな。

前田 あくまで自然にやっているということですね。

島﨑 たまに、ふと“何十年前の作品を見たいな”とか“あの役者さんが自分と同じ歳ぐらいのときのお芝居を見たいな”とか思ったりすることがあるんだけど……。

前田 “勉強するために見よう”じゃないんですね!

島﨑 そう! “見たい!”っていう欲求だね。いざ見てみると“こういう演出で、こういう気持ちでやってるお芝居なんだ”とか“この人はこの年齢のときはこんな作品にも出てるのか”とか、考えを巡らせたりして。

前田 どんどん考えが広がっていってる!

島﨑 それで機会があれば、作品を見て疑問に思ったことを本人に直接聞いたりもするわけです。

前田 実際に聞いてみるんですね! うわ〜貴重だ。

島﨑 興味関心があるものって無意識下で努力できちゃう。意図的にやることももちろんあるにはありますけどね。

前田 島﨑さんのお話を聞いているとすごく人が好きなんだなと思います。

島﨑 人ね〜。

前田 あれ、違いますか?

島﨑 わかんないよね。でもよくそう言ってもらえるのよ。

前田 そうなんですね。僕もそう感じました!

島﨑 どうなんだろうな〜。作品の中で人にするのが好きなのか、人間自体が好きなのか……ちょっとわかんないよね。

前田 確かに、僕もそう言われるとわからないかもしれないです。役作りをしてる時間が1番好きではあるんですけど。

島﨑 “人”を作る時間って楽しいよね。

前田 自分以外の人はどんな考えを持っているんだろう?って考えるのも好きで。

島﨑 わかる。

前田 でもずっと人と一緒にいるのはあんまり好きじゃないです……って突き詰めていくと、人が好きかどうかって結構難しいです。

島﨑 人と一緒に飲んだり遊んだりするのが楽しかったりもするし、考えれば考えるほどわかんなくなる議題だね(笑)。でも声優は、人のこと知ってないとできない仕事ではあるなと思います。

考える声優島﨑信長さんを見つめる前田拳太郎さん

前田 オーディション前って緊張されますか?

島﨑 いい緊張感は持ちたいと思っているよ。変な助平心があると緊張しやすいかもしれない(笑)。

前田 “受かりたい”みたいな。

島﨑 そうそう。欲がありすぎると緊張するんじゃないかな。

前田 僕はそれがあるから緊張しちゃうのかもしれません(笑)。

島﨑 前田くんはまだ緊張して当たり前だと思うよ。それをいい方向に昇華できればいいんじゃないかな。ただ僕の場合は、それなりに回数を重ねて慣れている部分もあるから。僕が今の段階で緊張するのは、余計なことを考えているってこと(笑)。

前田 僕の場合は、オーディションで、前に好きな声優さんが出てきたときに緊張しちゃったりすることも……。

島﨑 そういう緊張もあるのね(笑)。

前田 はい(笑)。ドキドキしながらやってます!

島﨑 緊張感がないよりずっといいと思うよ!

前田 今回の対談でより一層、声優というお仕事への興味が強くなりました。でもやっぱりまだ自信がないんですよね。島﨑さんは自分に自信ありますか?

島﨑 さすがにこれだけ長くやっていると、経験が自信みたいなものに繋がる部分はあるけど、“自信があります!”っていうのとは違うかもしれない。それは僕に限らず、みんな。むしろ不安がある人とか、危機感がある人のほうがちゃんと研鑽や努力をし続けたり、時代に適合しようとアップデートをし続けると思うから、不安な気持ちも大事なんじゃないかな。自信に溺れちゃうと努力しなくなって、時代においていかれたりもするからね。

前田 全ての仕事に通づる大事な考え方だなって思いました……!

島﨑 本番だけ自信満々にやったらいいと思う。俳優さんのお芝居でもそうじゃない? 仮に稽古のときに不安があったとしても、舞台に立ってるときに不安になるわけにはいかないじゃん。“できてない”と思っていたとしても、開き直って“俺、最高!”って気持ちでやるしかない!

前田 その通りですね! 本当に勉強になることばかりでした。ありがとうございました!

12月6日生まれ、宮城県出身。2009年に声優デビュー。2013年第7回声優アワード新人男優賞、2021年第15回声優アワード助演男優賞を受賞。演じた主な役は、『ブルーロック』凪誠士郎、『東京リベンジャーズ』黒川イザナ、『忘却バッテリー』千草瞬平、『WIND BREAKER』蘇枋隼飛など

アニメ『SAKAMOTO DAYS』キービジュアル

かつて“最強の殺し屋”と言われた男・坂本太郎。しかし彼は恋をして引退。結婚、我が子の誕生を経て幸せな生活を送る中で、ふくよかな体型に! そんな彼を、かつての部下でエスパーの朝倉シンが組織に戻らせるために訪ねてくる。断固として殺し屋には戻らないと決めている坂本だったが、いつの間にか10億の懸賞金がかけられていて!? 次々と刺客がやってくるように! 原作マンガは『週刊少年ジャンプ』にて2020年に連載スタート、コミックスは20巻まで発売中。TVアニメはテレ東系列ほかにて毎週土曜23時から放送中。

アニメ「SAKAMOTO DAYS」のグッズをもらってうれしそうな前田拳太郎さん

島﨑さんの役の捉え方や考え方は、声優だけでなく俳優としても役立つことがたくさんありました。お話しさせていただきながら、僕が島﨑さんのお芝居を好きな理由がわかった気がします。アニメ『SAKAMOTO DAYS』最終回も、7月からの第二クール放送も楽しみです!

Profile

前田拳太郎

俳優

1999年9月6日生まれ、埼玉県出身。劇団EXILEのメンバー。2021年に俳優デビュー。同年、『仮面ライダーリバイス』で五十嵐一輝/仮面ライダーリバイ役で主演を務めた。2024年にはオリジナル長編アニメーション映画『ふれる。』の井ノ原優太役で念願の声優デビューを果たした。

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