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東直子/著『ひとっこひとり』を読む!【書店員花田さんのハタチブックセンター】

街の書店員花田菜々子のおすすめ本ハタチブックセンター

やさしい気持ちをくれる『言葉』がテーマの短編集

『ひとっこひとり』
東直子/著 ¥1650 双葉社


私たちが日常でかわす何気ない「大丈夫」「ごめん」「ありがとうね」などの《言葉》をテーマに綴られた12の短編小説集。孤独や寂しさを抱える現代人の心をすくい取りながら、ラストにはほのかな希望をそっと提示してくれる。

「大丈夫」「ごめん」「ありがとう」……、ふだんから私たちが何気なく使う言葉だけど、必ずしも相手に良い意味で受け入れてもらえるとは限らなくて、誰かをモヤモヤさせてしまったり、ときには傷つけてしまうことさえある。大人になっても(なったからこそ?)言葉ってほんとうに難しい。
 この小説では、それぞれの事情で孤独さや喪失感を抱えている登場人物たちが、そんな一言をきっかけに互いを思い合ったり、心を少しだけ開いたりしながら生きていく様子が描かれる。彼らはみんなちょっとずつ不器用なのだけど、そのいびつなやさしさが胸に広がって、読んでいるあいだじゅうずっと幸せな気持ちでいられた。誰かとつながるってこんなすてきなことだったな、と思い出させてくれる読書だった。
 少し肌寒くなる季節に読みたい、あたたかいミルクティーのような1冊。『コワかわいい』挿絵にも癒されます!

 

『深く、しっかり息をして 川上未映子エッセイ集』
川上未映子/著 ¥1760 マガジンハウス


作家・川上未映子によるエッセイ。日常にあふれる喜び、悲しみ、言葉にできない気持ち……。さまざまな感情と出来事が丁寧に、読者に語りかけるようにつづられた1冊は、読了後、穏やかな気持ちを運んできてくれるはず。

『百年の子』
古内一絵/著 ¥1980 小学館


舞台は令和と昭和のとある出版社。主人公・明日花は学年誌の歴史を調べるうちに、認知症の祖母が学年誌の編集に携わっていたことを知る。祖母の過去を探るうち、子どもと女性の権利について考える人々の姿を知って――。

『カム・ギャザー・ラウンド・ピープル』
高山羽根子/著 ¥605 集英社文庫


「私」には昔、ニシダという話のつまらない男友達がいた。大人になった「私」は映像作家のイズミと知り合う。イズミの撮った映像には、美しいワンピース姿のニシダが立っていて――。第161回芥川賞候補作を含む4作を収録。


はなだ ななこ 
東京・高円寺にある書店「蟹ブックス」で店長を務める。著書『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』が好評発売中。

2023年11月号掲載

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