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No.230 あっしゅ

【朝井リョウ】推し活をしている人に読んでほしい!「イン・ザ・メガチャーチ」

2026.03.04

2026年の本屋大賞にもノミネートされた、朝井リョウさんの新作「イン・ザ・メガチャーチ」。

登場人物たちが劣等感を抱えながら、誰かの物語に身をゆだねることの危うさを鮮明に描いた作品です。

推し活をしている方はもちろん、推し活に夢中になる気持ちがピンとこない方にもぜひ読んでほしい1冊をご紹介します!

記事を書いているのは…

小説から新書まで幅広く読む読書好きです。朝井リョウさんの作品では、『何者』、『正欲』などを読んできました。『正欲』以降の作品は、登場人物の悩みを描くだけでなく、「社会構造としての生きづらさ」にも踏み込んでいて、自分の価値観がアップデートされる感覚があります。

大学生エディターズ No.230 あっしゅ

あらすじ

沈みゆく列島で、“界隈”は沸騰する――。
あるアイドルグループの運営に参画することになった、家族と離れて暮らす男。内向的で繊細な気質ゆえ積み重なる心労を癒やしたい大学生。仲間と楽しく舞台俳優を応援していたが、とある報道で状況が一変する女。ファンダム経済を仕掛ける側、のめり込む側、かつてのめり込んでいた側――世代も立場も異なる3つの視点から、人の心を動かす“物語”の功罪を炙り出す。
「神がいないこの国で人を操るには、“物語”を使うのが一番いいんですよ」

日経BOOKPLUSより引用

主な登場人物

久保田慶彦(47)レコード会社勤務。とある能力を買われ、アイドルグループ運営に参画することに。

武藤澄香(19)留学を志す大学生。内向的な気質に悩むうち、一人のアイドルに出会う。

隈川絢子(35)契約社員。舞台俳優を熱烈に応援中だが、ある報道で状況が一変する。

推し活をしている人に読んでほしい理由とは?

推し活に夢中になる自分を客観視できる

この物語は久保田、澄香、隈川の3人の視点が交差しながら進んでいきます。

久保田の視点からは、マーケットを仕掛ける側の戦略が淡々と描かれる展開。「熱量の低い百万人より、熱量の高い一万人。このチームで、視野狭窄を極めた最強のファンダムを築き上げましょう」という言葉には一種の宗教のような怖さがあり、ゾッとしました。

筆者自身、広い視野を持つことを普段から意識しているつもりですが、web記事を通して好きなアイドルの魅力を発信している時点で、自分も熱量の高い一万人側なのだろうと考えさせられます。

実際、戦略通りに踊らされているのではないかという懸念も生まれ、推し活に夢中になる自分を第三者の視点から見つめなおすきっかけになりました。

「推し以外の話題に困る…」などオタクのリアルな描写が詰まっている

登場人物の隈川は、生活の中心が推しになるほどのいわゆる強火オタク。同僚も隈川と同じ熱量で推しを応援しており、それゆえにオタク同士で言いたい放題、ときには冷静さを失うことも。このようなキラキラしている部分ではない、オタクの陰の部分の解像度の高さに驚かされました。

推しのある報道をきっかけに彼女の生活は一変していきます。推しにお金も時間も使えなくなったとき、あなたならどうしますか?

感想

推し活をしている人にとって、「人生で一番刺さる小説」になるのではないか

第5章では、澄香がまだアイドルに興味を持つ前の視点が描かれています。推しの魅力を語るユリちゃんに対し、澄香は「好きな理由が顔とか、ダンスじゃないんだ」とつぶやくんですね。この言葉に、オタクとしては、「そう!そうなんだよ!」と激しく同意してしまいます、、笑

というのも、過去の記事を読んでいただければ分かると思うのですが、筆者は男性アイドル、女性アイドル、フィギュアスケートにおいてそれぞれ“推し”がいます。でも、「なぜ好きか?」と問われると顔やスキルが1番目には挙がってこないんですよね。その人の信念やオンとオフのギャップに魅了されることが多いんです。それこそ、輝かしい成績にたどり着くまでの泥臭さが垣間見える“物語”が魅力的なコンテンツであること、首がもげるほど共感できます。

でも、澄香はまだその感覚にピンときていない様子。それゆえに、物語の後半で彼女が提供されるコンテンツにのめりこんでいく様子は、人が変わったかのようで不気味さを感じました。

一方で、澄香の父である久保田はマーケットを仕掛ける側として物語を提供し続けます。本作品では、「今後の夢」について語る様子が物語としてYouTubeにアップされる展開でした。実際のアイドルグループでは、ほかにも様々な物語が提供されているのではないでしょうか。

たとえば、東京ドーム公演が決まったらその裏側を描く。周年を迎えたら、ドキュメンタリーとしてこれまでの歩みを振り返る。それをファンである私たちは喜んで享受する…といったように。

作品を通じてこの構造に気づくと、いかに私たちが運営側の戦略のもと熱狂しているかを考えさせられます。推し活をしている人にとっては、「人生で一番刺さる小説」になるのではないかと思うほどの作品でした。

最後に

今回は推し活をしている方に向けて記事を書きましたが、コミュニティにうまく馴染めずにモヤモヤした日々を送っている方にも刺さる1冊となっています。

新生活が始まる前に読んでみてはいかがでしょうか?

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

  • 出身地

    宮城県

  • 身長

    156cm

  • 学年

    大学4年生

  • 推し

    SixTONES・赤西仁・乃木坂46・AKB48

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