インタビュー

【モーニング娘。’24】石田亜佑美卒業記念連載 第三回 「歴史と思いを“繋ぐ”」 モーニング娘。愛を育みながら成長した日々の思い出

2024.11.22

12月6日に横浜アリーナで開催される『モーニング娘。’24 コンサートツアー秋 WE CAN DANCE !〜Blå Eld〜石田亜佑美 FINAL』をもって、モーニング娘。’24およびハロー!プロジェクトを卒業する石田亜佑美さんに、non-no webがインタビュー。

“繋ぐ”というキーワードを立て、これまでの石田さんのモーニング娘。人生を紐解く卒業記念連載の第三回目は、活動を経て石田さんの中に生まれたモーニング娘。愛について、そしてその思いやグループとしての歴史を繋ぎたいと思った過程や出来事を振り返ります。

※今ツアーの披露曲に触れている部分がございます。セットリストを知りたくないという方は、お気を付けください。

キラキラメイクを施した石田亜佑美さんのアップ画像

カッコいいアイドル、モーニング娘。との衝撃的な出会い

この連載の第一回目でも少しお話ししたのですが、オーディションの時に友達の助言を受けて選んだ課題曲の『泣いちゃうかも』が、初めて出合った楽曲でした。この曲が私の中のアイドル像を180度変えてくれたんです。それまでフリフリの可愛い衣装を着てニコニコ笑顔でいるのがアイドルだと思い込んでいたので、衝撃でした。まずMVを見た時に「泣いてる……!?」と驚きましたし、悲しい顔も表現できるようなカッコいいアイドルが存在するんだと思って、ドキドキしました。そこから「私もカッコいいモーニング娘。になりたい!」という思いが強くなっていって。この曲を教えてくれた友達は、特別モーニング娘。のファンだったわけではないと思うんですけど、それでも知っているのがモーニング娘。のすごさだな、とも後から思いました。そこから『気まぐれプリンセス』や『なんちゃって恋愛』も聴いて、どんどんハマっていきました。

『泣いちゃうかも』はモーニング娘。に入ることになったきっかけの曲ですし、加入直後は特に好きな曲としてよく挙げていたので、私のイメージとして印象に残っている人が多いと思います。でも活動を重ねていくうち、その他にも大好きな曲がどんどん増えていきました。『泣いちゃうかも』が自分にとって大切な曲であることにはもちろん変わりないのですが、最後のツアーでは活動をするなかで大切になっていった曲のほうをやりたいかな、と思っていたんですね。でも何も知らないメンバーからは「石田さん、もちろんあの曲は入りますよね?」とか「やったことないメンバーもいるから、あの曲は練習早めにしておかないとだね」とか、『泣いちゃうかも』を期待するような反応が想像以上にあって(笑)。さらにずっとお世話になっているディレクターさんからも「あの曲が希望に入ってなかったけど、いいの?」と言われて。こんなにも自分に身近な人たちが『泣いちゃうかも』=私だと思っているなら、ファンの方たちも絶対に期待しているに違いないと思い、後から希望リストに追加しました(笑)。

加入してまもなくCDとDVD、振りビデオをまとめて大量にいただきました。確か紙袋2つ分ぐらいの量だったと思います。当時は歌詞の資料も紙だったので、分厚いファイルも別で一緒にいただいて。 もらった時はすごくうれしかったですね。特に振りビデオはメンバーにならないと見られない貴重なものですし、リハーサル中の先輩たちの姿が映っていて感動しました。最初はライブでやるであろうと予想される曲を教えてもらって、その曲を覚えるところから始めていって。当時音源は一回パソコンにデータを取り込んでからスマホに移すみたいなことをしていたので、その作業工程も懐かしいです。

当時は『直感2~逃した魚は大きいぞ!~』とか『恋のダンスサイト』など楽しい気分になれる系の曲が気になりました。そして『ハッピーサマーウェディング』は過去に聴いたことがあったけど、ダンスを見たら自分が知っているダンスとは全然違う感じで、衝撃を受けたことも印象に残っていますね。ちなみに今回のツアーでは、楽しい気分になれる系の曲がいいタイミングで組み込まれているので注目していただきたいですね。

2012年に初めてハロー!プロジェクトのコンサートに出演した時、9期メンバー4人と10期メンバー4人、そしてスマイレージ(現アンジュルム)の2期メンバー4人で、公演ごとにそれぞれ一曲ずつパフォーマンスをさせていただいたことがあって。10期は安倍なつみさんの『恋のテレフォンGOAL』と、カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)さんの『初めてのハッピーバースディ!』を披露しました。同世代かつ同じ人数構成のユニットが3つあるということで、自然と競争するような空気感が生まれて。先生たちも切磋琢磨させるために「あっちのユニットはここがよかったよ」などはっぱをかけてくるわけですよ。それで10期も焦って、どうやったらもっとこの曲を伝えられるかメンバーで話し合った時に「まず歌詞の意味をみんなで考えよう」となりました。それが始まりだったと思います。リハーサル室の端っこにみんなで歌詞カードを持って集まる時間を作って、ここはこういう歌詞だからもっと笑顔のほうがいいね、とかそういう感じでやっていましたね。「『恋のテレフォンGOAL』のサッカーボールを蹴る振り付けはもっと大きく蹴ったほうがいいよね?」みたいな。

初ツアーの思い出、モーニング娘。を背負うという意識

片脚に重心を乗せ、美しいポーズで佇む石田亜佑美さんの全身カット

9期さんも加入して1年ぐらいだし私たちも3か月ぐらいだったので、事前にみんなでダンスを練習する時間などをとってもらいました。なので、個人的にそんなにつらかった思い出はないんですよ。そして当時のマネージャーさんが「ライブ中、一人3回はカメラ目線をしてみよう」みたいな明確な目標を作ってくれたりして、それを実践しようと頑張ったりしたことも覚えています。単独ツアーでも9期メンバー4人と10期メンバー4人でそれぞれにパフォーマンスをするところがあったんですけど、9期さんが『涙が止まらない放課後』、10期が『好きな先輩』で。半年ぐらいしかキャリアは変わらないのですが9期さんがすごく先輩に見えてすごいなと思う反面、10期は負けん気がとにかく強いので、「だったら私たちはフレッシュに見せる!」みたいな感じで勝手にバチバチしていました(笑)。初ツアーからすごく前のめりだったと思います。

これはシンプルに環境だと思います。そして自分たちの場合は身近にお手本となる9期さんという存在があったことが本当に大きかったです。いつも近くにいてくれて、半年の間に自分たちが経験したことを含めなんでも惜しみなく教えてくださいましたし、年齢も近いからすごくコミュニケーションもしやすくて。10期は本当にラッキーだったんです。

一番最近の話だと17期メンバーが初めて『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』に主演する時、「二人はまだ新人だけど、加入した以上は周りからモーニング娘。のメンバーとして見られることになるからね。もし二人がちゃんとできてないと、モーニング娘。にできない子がいるって思われることになってしまう。同じステージの上に立ったら先輩も後輩も関係なく頑張らないとだめだよ」と、スタッフの方から言われていました。かなり厳しい言葉ですけど、言葉だけではなく、リハーサルなどでもそういう意識に持っていく環境がセットになっているので、そこはすごく効率的でいいなと思います。なぜなら私たちは常に本番までは時間がない状態で準備を進めるので、新人だからゆっくり自分のペースでやっていけばいいとか、自分で気づくようになるまで見守ろう、みたいな余裕がないんです。だから先輩後輩関係なく遠慮せずに質問し合って教え合う、みたいな空気感が自然とできていて、それも大きいのかもしれません。私も先輩メンバーとして新メンバーにはなんでもすぐ教えるように心がけています。

最近のモーニング娘。はダンスの難易度もすごく上がりましたし、新メンバーでもコンサートではフルステージをこなすので、自分たちの時代よりもかなり大変だとは思います。実際にコンサートが始まる直前まで危うい時も結構あって、「今回はさすがに厳しいかもしれない」と思ったことも何度かあります……(笑)。でもみんな、初日までにはどうにかクリアしてきてくれるんですよね。それはシンプルにすごいなと思います。

そしてこれは活動を経て気づいたことなのですが、私たちはすごいプロの方々と一緒にお仕事をさせてもらっているんですよ。素晴らしい方たちに囲まれ、支えていただいてモーニング娘。は活動しているからこそ、その状況に恥じないようにしっかり意識しないといけない。歴史あるモーニング娘。という存在を背負っていくのはそういうことだと思いますし、後輩たちにもこの意識は持っておいてほしいなって勝手に思っています。

一番最初は高橋愛さんの卒業だったんですけど、10期が加入したタイミングでもあったので、よく分かっていない状態で一緒にステージに立たせていただいてました。そしてその後のツアーで新垣さんと光井さんが卒業されて。新垣さんは当時リーダーだったこともあり、約半年と短い間ではありますが10期は相当お世話になっていたんですよ。なんなら子どもみたいな喧嘩の仲裁をしていただいたりしたことも(笑)。多分新垣さんは子育てしているような感覚だったんじゃないかと思います。すごく大変な時期をリーダーとして請け負ってくださって……。当時はそんな状況をちゃんと理解できていなかったので、新垣さんと光井さんの卒業に対しては「今までありがとうございます、寂しいです」っていう感情でしたけど、今改めて振り返ると本当に感謝しかないです。

そして田中さんの卒業ぐらいから、やっと気持ちがそこに追いついてきて。卒業は前向きなことではありますけど、残るメンバーとして感じる“失う気持ち”みたいなものを感じるようになりました。特に田中さんはモーニング娘。の歌を担っている方でしたし、すごく大きな存在じゃないですか。あまりイメージにないかもしれないですけど、後輩に対しても歌ができていないとハッキリ注意してくれるんです。とにかく後輩のことをすごくよく見ていてくれる情に深い方で。これは最近知ったんですけど、通常の卒業コンサートの時って残るメンバーが卒業する人に対してコメントをしていくのが定番ですよね。でも田中さんは「メンバーと自分が一緒に喋るほうがいい」とおっしゃって、それで構成が変更されたらしいです。当時は気づけなかったけど、それって各メンバーのことを知らないとできないことですし、まずそんな発想にならないと思うので、なんか本当にありがたいなって改めて思います。そして田中さんと道重さんがグループにいる間、一緒に『シャボン玉』を歌えたことも個人的にすごくうれしい思い出として残っています。私が憧れたカッコいいモーニング娘。ど真ん中の楽曲でしたし、お二人の映像も本当によく見ていたので、実際に見て「本物だ!」と感動しました。

田中さんの卒業はショックでしたが、道重さんという心強い先輩の存在がまだあったので「道重さんの背中を見ていれば間違いない」という安心感も同時にありました。だから道重さんが卒業を決意された理由として「後輩が頼もしくなったから」と言ってくださったんですけど、私たちからすると「そんなことないです、ずっといてください!」という気持ちでした。でもここまで引っ張ってくださった道重さんの卒業に対して私たちが泥を塗るようなことがあってはならないですし、気持ちを奮い立たせて頑張ろうと思うことができました。そこまで全部含めて道重さんのおかげだなと思います。でも実際に道重さんが卒業されてからの2015年の私たちは本当に大変でした。それでも頑張って今があるんですけれども。

先輩たちの姿ですごく印象に残っているのが、あんなに高いヒールをはいてダンスしているのに、なんで脚がこんなに細くてきれいなんだろう……っていうことです。筋肉のつき方がアイドルというか。私はずっとダンスをやってきて、すっかり筋肉質なダンス脚になっていたので、その違いにびっくりしたんです。あとは、自分が加入する前にMVなどを見ていた時代の先輩方のダンスにも衝撃を受けました。うまいヘタの次元ではなくて、「本物」という説得力が桁違いなんですよね。でもそれを「先輩たちはお姉さんだから」という言い訳をして逃げてはいけないと思って。その説得力の出し方や具体的に何をしたらいいのかは、当時分からなかったけど、モーニング娘。として早く自分もその説得力を持ちたいという気持ちでいっぱいでした。そこから四苦八苦して頑張ってきたので、今の自分からも先輩たちと同じような説得力が出せていたらいいなと思います。

ピンチをチャンスに変えていった印象的な思い出

目元につけたストーンがキラリと輝く石田亜佑美さんのアップ写真

譜久村(聖)さんがリーダーになられた時、同い年のメンバーがリーダーになるということについて、シンプルにすごいなって思いました。私には計り知れないものを背負って活動していくことになるんだなって思ったし、でもすごく信頼をしていたので安心感もあって。メンバー全員同じ気持ちだったと思います。だから譜久村さんがリーダーに就任した際に、「歴代で一番頼りないリーダーと思われてしまうかもしれないけど」みたいなことをおっしゃっていたんですけど、「そんなことないです!」と全員でめちゃくちゃ首を横に振りましたね。でも譜久村さんの不安な気持ちも分かるので、だからこそ何の役職もないけど自分も支えられたらいいなと思って、ちょっとずつ意識が変わっていったタイミングでもありました。2014年になったぐらいから家族みたいなすごくいい空気感で活動していたので、それを経て2015年ぐらいから期を飛び越えて遊ぶようになったり、そういう変化も新しいモーニング娘。を作っていったのかなと思います。譜久村さんとは同じ高校に通って勉強も一緒にしたりしていましたし、青春を感じるような時間もたくさん過ごしていたなと思います。

ライブって止められないものだからこそ、アクシデントがたくさんありますよね(笑)。初期の思い出だと、2013春 ミチシゲ☆イレブンSOULの座間夜公演で急遽田中さんの代わりに『私のでっかい花』を歌った時のことでしょうか。その時はできる、できないとかそういう感情はなくて、「やらなきゃ」って思っていました。そして私の場合、「これはチャンスかも」って思っている部分もあって。だから焦ってはいるけど「……歌わせてもらいます!」となりました。この時のハプニングは相当大きなものでしたけど、他にも小さいハプニングは常にいろいろあって、間違えてマイクを持たないで出てきちゃって、どうやってマイクを回して対応する!? みたいなこととか。そういう場合はもはやワクワクしちゃうような感じもあり(笑)、逆に燃えるんですよね。急に誰かがトラブルでステージからはけた時に、他のメンバーがそのパートをカバーしたりすることも多いですけど、アイコンタクトを取りながら誰が歌うか決めたりしています。場位置の急な修正なども経験値が大きいかなとは思いますが、自然とできますね。

改めて考えるとすごい特殊な出来事ですよね(笑)。でもやっぱりどこかで「これはチャンス」と捉えていた自分もいたと思います。真ん中で踊れるし、たくさんの人に見てもらえるチャンスだと思って。お邪魔している身ではあるけれども、プライドを持ってやらせていただきました。だからある意味ライブと同じ感覚なんですよね。

「泣かないでちゃんと歌いなさい」って先生から言われたことは一度もないんです。ファンの皆さんも泣いていいよって言ってくださると思うんですけど、多分自分たちが嫌なんだと思います。曲をしっかりお届けできなくなるということが。マイクホールドをしっかりすることや、ユニゾンをちゃんと歌わないといけないという意識が自分たちの中に根付いてしまっているので、それもあるかもしれません。もちろん泣くことはあって、イヤモニを通じて泣いて歌えてない部分が聞こえてくることもありますけど、それでも声を出そうという姿勢だけは絶対に崩さないのがモーニング娘。なのかなと思います。そして自分が卒業する身になって気づいたのは、最後に泣いて歌えないとなったら絶対に悔しいので。だから泣かずに最後まで歌えたらいいなって思います。

先程もちょっとお話ししたんですけど、活動の中で練習に割ける時間は決して多くないんです。だからこそ私たちは各々が復習する時間をすごく大切にしていて。リハーサルやコンサートの、いただいた映像もすぐチェックします。そうやって全員が常に全体像を見ていることも、アクシデント対応力に繋がっているのかなと思いますね。そしてこれはモーニング娘。あるあるなんですけど、映像を見る際にアクシデントがあった所を、みんな真っ先にチェックするんですよ(笑)。「転んでるのに立ち上がるの早!」とかすごく盛り上がります(笑)。

モーニング娘。愛を育んでいった過程、後輩に繋ぎたい思い

椅子の上に座り、笑顔で目を閉じる石田亜佑美さん

きっかけは道重さんです。道重さんがファンの皆さんやスタッフさんなど、周りからすごく愛される方で。すごく頼りにもされているし、なんでだろう?って思って観察していたら、道重さんが周りの人をすごく大切にしているからということに気づいたんです。自分の思いをしっかり口に出してファンの方に伝えることもそうですし、行動することの大切さだったり、愛情について教えていただきました。私の場合、もともとモーニング娘。がすごく好きで加入したわけではないので、加入してからどんどん好きになっていってるんですよ。でもこれだけ好きになれたのは、魅力があるグループだからこそだと思いますし、先輩方の活動があったからこそなんですけど。モーニング娘。を囲んでくださっている方々の愛情もそうですね。だからそんな環境の中で自分の中に芽生えた愛情や思いをこれからも繋いでいきたいなと自然に思うようになりました。

私は15周年、20周年、25周年のタイミングに現役のモーニング娘。として立ち会うことができました。その他でもモーニング娘。やハロー!プロジェクトの先輩たちとご一緒する機会に恵まれていたとは思うのですが、一つすごく後悔していることがあって。2013年のカウントダウンコンサートに松浦亜弥さんが出演されたことがあったんですけど、その時にちゃんと目に焼き付けることができなかったんです。今の自分からすると本当にありえないって思っちゃいますね。加入当初は自分のほうにしか目が向いていなかったので。活動を経て、モーニング娘。が大好きになった最近のほうがより印象に残っていることは多いですね。25周年も現役メンバーとして過ごせることがすごく光栄でしたし、中澤裕子さんのソロステージはじめリハーサルの段階からとにかく目に焼き付けました。そして最近はOGの先輩たちは本当にすごい存在だけど、変に物怖じしなくていいんだ、と思えるようになりました。OGの先輩たちの「今のモーニング娘。はすごいよ」って言葉を信じようって。そういう思考回路に持っていくと自然と先輩にも話しかけやすくなるんです。なので自分からOGの先輩に話しかけに行ったり、最近では太陽とシスコムーンさんと仲良くさせていただいたり。

あります。そのことについて考えるようになったきっかけは道重さんが卒業されるタイミングでした。道重さんのことは知っているけど、今のモーニング娘。のことはあまり知らないという方が業界のスタッフさんでも多かったと思うので、道重さんがいなくなったらどうしようという危機感を感じました。なので、私は道重さんが卒業するまでの限られた時間で、道重さんについていって一緒にスタッフさんなどへの挨拶をするように心がけていました。本来人見知りな性格なので、そういうことは今まで自分から進んでやったりしなかったんですけど、そこは意識することが大事だなと思って。今の後輩メンバーにも、自分から進んでいろんな人に話しかけるのは得意じゃない子がいたりするので、卒業前に自分が先輩と会う機会があったら、その子を誘ってあげたりしたほうがいいのかなとは考えたりしますね。

この連載の第二回目の時にも出てきた話なのですが、鞘師(里保)さんから受け継いだ『冷たい風と片思い』のソロダンスパートは印象に残っています。鞘師さんの印象がすごく強い曲だったからこそ、「鞘師さんが卒業してもやるんだ……!?」と最初は思いました。鞘師さんにしか踊れないダンスだったからこそ、自分はどうやって踊ろうって悩んで、最初は模索から始めてなかなか納得できなかったけど、自分の振り付けに変えて踊ることになり、それが本当に自分の中で踊りに対する意識が変わるきっかけになりました。今回のツアーでも、この曲も外せない、と思って入れていただきました。

昔、9、10期で高校生イベント、中学生イベントみたいなのをやっていたことがあって、『SEXY NIGHT ~忘れられない彼~』でラップをした時が多分始まりですね。当時まさか自分がラップをすることになるとは思っていなかったのでびっくりしましたが、続いて『私のでっかい花』でつんく♂さんからもラップパートをいただいて、私ってラップなんだ……と思った記憶があります。周りの方にキッカケを作っていただいて、それが自分の色になっているのはすごくありがたいです。その後に『HOW DO YOU LIKE JAPAN?〜日本はどんな感じでっか?』で新垣さんが担当されていた冒頭のラップパートを受け継ぐことになって、そこでよりラップの印象が強くなったのかなと思うんですけど、ここのパートを歌ったことがあるメンバーがまだ新垣さんと自分しかいないというのは、なんか個人的にすごくうれしくて。自分が卒業した後、誰が引き継いでくれるのかはすごく気になりますね。今回のツアーでもセットリストに入っているのですが、ディレクターさんから「石田がいなくなったら他にできる人いない」って言われて。たとえ嘘だったとしてもその言葉は私が一番言われてうれしいことなので、最後まで気持ちを込めてやり切りたいと思います。

自分のパフォーマンスを見ていてすごく感じたのは、最初の頃から気合いは十分なんですけど初期の自分は「なんか一生懸命だね」っていう印象で。気合いが入りすぎて顔もすごく怖い、みたいな(笑)。「私が!」が強くなると逆効果なんです。今はお客さんを楽しませる気持ちでやっているので、その違いはすごく大きいなと思いました。そして私の場合はカッコつけようとすると空中を見てしまうクセがあったんですけど、お客さんのほうを見たほうが全然リアクションがよくて。ジェスチャーも交えつつレスポンスを煽っていくと、すごく楽しいし盛り上がるんですよね。余裕がないとなかなか気づけない部分かもしれませんが、そういう部分も含めてこれから後輩がラップパートを担ってくれたらうれしいなと思います。

舞台も大好きなんです。最初に出た『ステーシーズ』で、先生から「勘がいい」とすごく褒められ、急遽セリフも追加されたりしたので、そこから「私って舞台得意なのかも」とすごくポジティブに受け止めていました(笑)。そこからモーニング娘。でたくさんの舞台を経験させていただきましたが、『トライアングル』では、すごく重要な役どころを任せていただきメインヴィジュアルでもドーンとセンターにしていただいて。それまで基本的には鞘師さんとどぅー(工藤遥)がメインになることが多かったのですが、自分がセンターで、しかも歌姫と呼ばれている小田(さくら)より曲数を多く歌うみたいな時はすごく重圧を感じましたね。ちょうど歌に対してすごく苦手意識が大きかった時期だったので、どうしよう……みたいな。思い余って夜中に公園に行って一人で歌の練習とか、走りながら歌ったら体力がついて安定するかもしれないと思って実践してみたりとか(笑)。とにかくもがき苦しみましたけど、舞台作品は終えるたびに毎回必ず自分の歌い方や表現の仕方など、分かりやすく得る何かがあったのでやりがいもすごく感じていました。個人としてだけではなく、グループとしても必ず一個チームワークが上がる感覚があって、それも大きかったですね。毎年舞台をしていた時期はツアーとハロー!プロジェクトのコンサートの合間にやっていたので、なかなかすごいスケジュールをこなしていたなとは思います(笑)。

モーニング娘。’24のInformation

モーニング娘。’24アルバム『Professionals-17th』通常盤ジャケ写

17th album『Professionals-17th』

11月27日(水)に通算17枚目の、石田亜佑美さんにとってはラストとなるアルバムが発売に!石田さんのダンスにフィーチャーしたリード曲『勇敢なダンス』をはじめ、13曲を収録。初回生産限定盤に付属するBlu-ray Discには、春ツアーの舞台裏に密着した『モーニング娘。’24 MOTTO DOCUMENTARY in BUDOKAN』(Huluオリジナル番組)も収録。

Profile

⚫︎いしだ あゆみ 1997年1月7日生まれ、宮城県仙台市出身。『モーニング娘。10期メンバー『元気印』オーディション』に合格し、2011年9月29日にモーニング娘。10期メンバーとして加入。2012年1月25日に48thシングル『ピョコピョコ ウルトラ』でCDデビュー。現在はサブリーダーを務める。メンバーカラーはロイヤルブルー。ニックネームはだーいし、あゆみん。トップレベルのダンススキルを持つことから“ダンスマシーン”という異名を持つ。

パンツ¥14960/アンティローザ(LA BELLE ETUDE) その他/スタイリスト私物

撮影/山越翔太郎 ヘア&メイク/河嶋希(io) スタイリスト/佐藤朱香 取材・原文/武内亜紗

石田亜佑美卒業記念連載

関連記事

インタビューの新着記事

VIEW MORE

エンタメの新着記事

VIEW MORE

Icons made from svg iconsis licensed by CC BY 4.0