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2020.08.22
詩の形で書かれた、どこまでも美しい物語
サラ・クロッサン・著 最果タヒ、金原瑞人・訳¥1700 ハーパーコリンズ・ジャパン
グレースとティッピは結合双生児として生まれた16歳の少女。死の影におびえ、好奇の目にさらされながらも、初めての学校生活で友達を作り、そしてグレースは恋に落ちるが……。海外の児童文学賞を総ナメの話題作がついに日本で発売。
読んでいる間はずっと涙が止まらず、何度も読むのを中断してはまた本に戻ることを繰り返していた。泣ける本がいい本だとは限らない。けれどこの本は、一生大事にしたい、何度も読み返したい、心に刻みつけておきたい。そう思わせてくれる本だった。
登場人物たちの優しさや痛切な叫び声がやたらと刺さるのは、この本の少し不思議な成り立ちによるものかもしれない。もともとすべて詩で書かれていた英語の原文を児童文学翻訳の第一人者である金原瑞人さんが自ら日本語に訳し、それを詩人の最果タヒさんに「自分の作品として書き直してほしい」と託す形で依頼したのだという。
できあがった日本語の本作は子どもも読める易しい文章で、薄い布を何枚も折り重ねたように柔らかいのにもかかわらず、とても激しく心を揺さぶられる。
一人で生きることとは。誰かと生きることとは。答えなんてないが、きっと読後は台風の後のような爽やかな風を感じられるだろう。
夏の終わりに読みたい2冊
対照的にこちらはひたすら笑える夏の本。突然の意味不明なお題(タイトル?)を著者自身が2コマの漫画で表現するのだが、このニュータイプな笑いの破壊力たるや。友達に貸したくなること必至。
夕方のベランダや大事に集めた紙せっけんの香り。どこか懐かしいようでいて暗さが立ち込める、少女たちの夏の記憶を巡る小説集。そういえば結合双生児のエピソードも収録されていた。
●はなだ ななこ
HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE店長。新刊は『シングルファーザーの年下彼氏の子ども2人と格闘しまくって考えた「家族とは何なのか問題」のこと』。

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