読んでいる間はずっと涙が止まらず、何度も読むのを中断してはまた本に戻ることを繰り返していた。泣ける本がいい本だとは限らない。けれどこの本は、一生大事にしたい、何度も読み返したい、心に刻みつけておきたい。そう思わせてくれる本だった。
登場人物たちの優しさや痛切な叫び声がやたらと刺さるのは、この本の少し不思議な成り立ちによるものかもしれない。もともとすべて詩で書かれていた英語の原文を児童文学翻訳の第一人者である金原瑞人さんが自ら日本語に訳し、それを詩人の最果タヒさんに「自分の作品として書き直してほしい」と託す形で依頼したのだという。
できあがった日本語の本作は子どもも読める易しい文章で、薄い布を何枚も折り重ねたように柔らかいのにもかかわらず、とても激しく心を揺さぶられる。
一人で生きることとは。誰かと生きることとは。答えなんてないが、きっと読後は台風の後のような爽やかな風を感じられるだろう。