1話目は、図書館の管理をする先生と、その先生が好きな女の子。
いきなりですが、私はこの物語が一番好きです!!
お伝えしたい魅力はたくさんあるのですが、厳選しました。
それは、「この物語の朗読劇があったら絶対行きたいなあ」と思うほど、文章がきれいなこと。
自分で心の中で話しながら読むと、何回でも繰り返したくなるほど、文章ひとつひとつが好きです。
この冒頭の文章で絶対に心をつかまれてしまうはず。
「伸ばした小指のつめはきっと、春のさきっぽにもうすぐ届く。」
なんでこんな文章が思いつくんだろう、と引き込まれていったのを覚えています。
何回も読むと、なんだか心の中がきれいになっていく感じがしませんか?
また、一番好きなのはこの場面。
「今日が卒業式だなんて、やっぱりそんなのうそみたいだ。
カバンの底で、文庫本が動いた。」
卒業式の朝、式が始まる前に、女の子は先生に借りていた本を返さなくてはなりません。
そのため、朝早く先生と学校の近くで待ち合わせをして、二人で学校に向かいます。
これはその道中の場面の文章で、
今日が卒業式だと思いたくない主人公。だけど、「卒業式の今日」返さなくてはいけない文庫本の存在がしっかりカバンの中から伝わってくるので、嫌でも卒業式当日であるということを実感させられた。
のではないかなと個人的に思いました。
こんな感じでちょっと立ち止まって読むと、物語全体にせつない気持ちがちりばめられている気がするんです。
だから、文章全体が静かな雰囲気で、
と同時に「早朝」で「高校への道のり」という朝の外の冷えた空気も伝わってきて…
先生と主人公が二人歩く映像が、頭の中に自然と出てきてしまいます。
「エンドロールが始まる」というタイトルがどのような意味なのか、ぜひ最後まで読んでみてください。