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芥川賞候補の話題作! 年森瑛・著『N/A』を読む【花田菜々子さんのハタチブックセンター】

街の書店員花田菜々子のおすすめ本ハタチブックセンター

「思いやり」が私を苦しめる。芥川賞候補の話題作!

『N/A』

年森瑛・著 ¥1485 文藝春秋

女子高生のまどかは年上女子のうみちゃんとお試しでつき合っているが、だからといって自分をLGBT扱いされることに困惑している。生理が来るのがイヤで食べずにいるだけなのに、拒食症を心配される。どこにも分類できない心の苦しみを描く、新時代の青春小説。

 突然だけど、友達から自分が同性愛者だと打ち明けられたことはあるだろうか? そんなとき、なんて言うべきだろう。「応援するよ」「ふつうのことだよ」とか? でも、友達を傷つけたくない、というやさしさが、もしかしたら逆にその人を傷つけてしまうかも。「LGBTの人」とカテゴライズして答えることは、ときにその人特有の心を無視して、勝手に決めつけることにもなってしまうから。
 主人公のまどかと友達、交際相手との関係がテーマのこの小説は、推し活やSNS、摂食障害、親の問題……と今の10代女子が生きる世界を浮き彫りにしながら、誰にもわかってもらえないことの痛みと、それでもかけがえのない誰かと生きていきたいという願いを切実に描いている。
 悩みを誰かとわかちあえたときはホッとするけど、でも自分にしかわからない悩みもいいものかもしれない。つらいけど。読みながらそんなことを思いました。

 

そらごはん』

町田そのこ・著 ¥1760 小学館

小学校入学を機に育ての「ママ」から離れ、産みの「お母さん」と暮らし始めた宙。自由すぎる「お母さん」に我慢できず家出した宙は、ビストロで働く佐伯に助けを求める。そこで"ごはん"を通して見つけた理想の家族とは?

『夜に星を放つ』

窪美澄・著 ¥1540 文藝春秋

大切な人間関係を失い傷ついた主人公たちが、また誰かとの関わりを築いていく姿を描いた5編の短編集。心情の機微が丁寧に描かれており、新たな一歩を踏み出す登場人物に勇気をもらえるはず。第167回直木賞受賞作。

『居場所がないのがつらいです みんなのなやみ ぼくのこたえ』

高橋源一郎・著 ¥1540 毎日新聞出版

著者が毎日新聞で連載中の「人生相談」より、108のお悩みを収録。一見、難解なお悩みもあるが、高橋さんの回答がなんとも温かく誠実。読後は「話を聞いてもらえてよかった」というような、すっきりとした気持ちになる1冊。


はなだ ななこ 
店長を務める書店「蟹ブックス」が9月1日にオープン。著書『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』が好評発売中。

2022年10月号掲載

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