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フィギュアスケーター友野一希連載・全日本選手権直前インタビュー【 #トモノのモノ語り。】vol.11 <フィギュアスケート男子>
友野一希選手に全日本選手権への意気込みをインタビュー! 最新の練習の様子、課題の4回転ジャンプ、そしてNHK杯での決意のこと。トップ選手としてのSNSの付き合い方についても詳しく伺いました
友野一希の「トモノのモノ語り。」
友野一希連載【 #トモノのモノ語り。】vol.23「2023-24シーズン開幕インタビュー」<フィギュアスケート男子>
2023.07.06 更新日:2024.05.23
7月に入りフィギュアスケートの新シーズンの到来ということで、ノンノでは昨年に続き、友野一希さんのシーズン開幕インタビューをお届け。
「トモノのモノ語り。」vol.23では、自分の苦手に真正面から対峙するプログラムを用意し、ネクストステージに進もうとする友野さんに、先シーズンの振り返りから、新プログラムに込めた思いと目指すスケートについて伺いました。
2022-23シーズンを振り返って
走り続けることの苦しさと、シーズンを通して感じた成長
――長かったシーズンが終わりましたね。友野さんにとって2022-23シーズンはどんな1年になりましたか?
一言でいうなら、“成長”ですかね。
技術的にもだけど、何より成長できたのは結果かな。
世界選手権では自分の実力を出し切れたと思いますし、メダルという可能性も見えた。失敗があった中でもあれだけの点数が出せて、もうあとはメダルを目指すしかないと改めて感じました。昨シーズンからさらに一段上がってネクストステージが見えた。次はもっと上に上りたい。そう強く感じたシーズンになりましたね。
――その前の2021-22シーズンは、「ジェットコースターのようなシーズン」と表現されていました。先シーズンは照準を世界選手権に定めていた分、心持ちに違いはありましたか?
そうですね。2021-22シーズンは代打で急遽試合に出場したりで、まさにジェットコースターに乗っている気分でしたが、先シーズンはただただまっすぐ世界選手権に向かって突き進んだシーズンでした。
その分気持ち的に落ち着いていたかというと決してそうではなくて、やっぱりしんどかったです。なんだかんだシーズンの最後の最後まで準備し続けたのは初めてだったし、ずっと気を張ったまま3月までいかなきゃいけなかったのは正直苦しかった。
今までの経験を頼りに調整しながらよく走り切ったなと思います。
▶2021-22シーズン総括インタビュー
――シーズンの後半は一気にペースアップされたのを感じました。本誌の取材で目標点数を伺って、そこから1か月後に完成したページの確認をお願いした時、「目標点数を10点上げてもらえますか?」と言ってくださったのがとても記憶に残っています。
そう。これはいけるって思ったんです。全日本が終わってから一気に調子が上がり、自信が出てきた時期でした。何かを掴んだっていうのかな。やっと自分の欲しかった感覚を手に入れたタイミングだった。
振り返ってみるとシーズン序盤はかなり我慢だったんですけど、世界選手権に向けてラストスパートをかけられたのは結果的によかったと思います。
でも同じことを今シーズンもしてると代表にはなれないかな。去年は奇跡的なところもあったし、他の選手がぞわっとするくらい仕上がっているのを感じているので。
僕は(日本男子シングルの中ではほぼ)一番年上ですけど、一番練習して頑張りたいです。
▶世界選手権に向けて。数字でひもとくカズキトモノ
2023-24シーズンのプログラム
新ショートプログラム「Underground」のテーマは“北米感”
――先日の「ドリーム・オン・アイス」で新ショートプログラムを披露された感想を教えてください。
実を言うと「ドリーム・オン・アイス」の直前まで本当に自信がなかったんですよ。ここからジャンプとステップ入れてやるなんて無理無理!って状態だったんですが……やっぱりアイスショーに出ることで、ヒントを掴めた感覚がありました。この時期にショーがあって本当によかったです。
ショートでは、ジェフリー・バトルさんと念願の初タッグが実現!(友野さん提供)
――素敵なプログラムでした。シックな黒のシャツは正式な衣装ですか?
衣装はまだ仮のものなんです。最初は衣装どうしよう、Tシャツ一枚にしようかなと思っていたところにあの黒いシャツを見つけて。既製品なので襟が大きくてちょっとバランスが悪かったんですけど、合うものが見つかってよかったです。
正式な衣装は最近デザインができたところで、ああいったイメージのシャツにちょっと色が入った感じになりそう。「THE ICE」にも間に合いそうにないので、もう少々お待ちくださいね。
今回はプログラムのテーマ的に、衣装よりも自分自身を見せたいなと思ったので、衣装は超シンプル。振付もですが、きっと衣装を見ても「ジェフ(ジェフリー・バトル)やな」って感じがすると思います(笑)。
このショートは、“北米感”がテーマ。僕は昔から北米のスケートが大好きで、カート・ブラウニングさんみたいなスケートが憧れ。カナディアンスケートはもちろん、アメリカンスケートのコントロールされた感じも好きだから、今シーズンはそんな北米のテイストをうまく自分のスケートに取り入れたいなと思っています。
▶ジェフリー・バトルさんとの振付エピソード
“スーパー挑戦”のフリープログラムを選んだ理由
“自分のしたい表現と、自分のやりたいスケートを貫き通す”
――ミーシャ・ジー先生振付のフリーはいかがでしょう。
ショートよりもフリーのほうが不安なんです。だって今回のフリーは僕にとって“スーパー挑戦”なので。
ピアノ曲のずっと静かなメロディですし、自分のよさというものからまあまあ逆方向に行っているといえばいいのかな。
――昨シーズンのテーマは“自分らしさ全開のプログラム”でした。今シーズンはその真逆をいくわけですね。
はい。一つ一つのポジションの美しさがしっかりと出るプログラムなので、成長につながればいいな。難しいプログラムですけど、なんか意外とジャンプが全部はまって、いい雰囲気で終えることができるんじゃないかなとも思っていますし……。
とにもかくにも本当に自分次第! だから楽しみでもあるんですよ。自分がこのプログラムとどう向き合って、どうやるのかっていうのが。
――難しいことに挑戦するのが楽しみ?
はい。やっぱり難しいことに挑戦している時のほうが楽しいじゃないですか。守りに入っているよりは断然いい。
――得意を極めてスコアを上げていくという道もある中で、そう言えるのが友野さんの強さの一つですね。
僕、今はあんまり点数を気にしてないんです。どうせいい演技をしたらいい点数が出てくるので。
自分に集中して自分の見せたい演技ができたら、自然と点数がついてくるんじゃないかなと最近は思うようになりました。
もちろん試合を追うごとにこうしたほうがもっと点数が伸びるかもとは考えますけど、基本的には自分のしたい表現と自分のやりたいスケートを貫き通す。
この自分のやりたいスケートのために必要なことが今回のプログラムに詰まっていると考えているんです。今シーズンは僕にとって自分が目標とするスケーターになるための大切な1年。そしてその結果、成長もできたらいいなって。
自分が目標とするスケーターになるための1年。プログラムを通して成長したい
“自分の苦手な部分が出るプログラムにしたら、何が何でも克服してやろうと頑張るじゃないですか。だって僕には自分自身を少しでもよくしたいっていうプライドがあるから”
――自分のやりたいスケートというと?
僕の場合、他の選手に比べて、勢いや場の雰囲気作り、見ている人に対するアピール力は優れていると思うんです。でもポジションの美しさ、スケーティングといったシンプルなもので魅せられるスケーターではまだない。
だから今の自分に必要なのは、勢いのままにやることじゃなく、細部までコントロールされた演技。
もちろん今まで培ってきたものや自分の個性を捨てるわけじゃなく、その自分らしさに+αのものがあるともっと強くなれる。そう考えているんです。
――自分に必要なものを補うための挑戦のプログラムなんですね。
自然体でうまく見せるショートとは対照的に、フリーは完璧に作り込まれているので、それに沿いながらさらによく見せなければいけない。これはジャンプに比重が傾くと自然とコントロールやスケーティングが疎かになることがある自分にとっては苦手とする部分です。
今まで目をつぶっていた弱点がはっきり表に出る難しいプログラムにすることで、嫌でも自分の苦手と向き合うことになる。そうすると何が何でも克服してやろうと頑張るじゃないですか。だって僕には自分自身を少しでもよくしたいっていうプライドがあるから。
だから今は「うわ、見たくないな」って思いながらも毎日練習を頑張っているんです。きっとこういう気持ちこそが今後大事になってくるはずだから。
(鍵山)優真くんとか、かおちゃん(坂本花織選手)とか他のスケーターを見ていると、すごく難しいプログラムでもシーズンが終わる頃にはちゃんと完成させてるし、自分が成長するようなプログラムにしているいう印象がある。
特にかおちゃんなんか先シーズンの最初はすごく難しそうで、大丈夫かなと思ったんですけど、最終的にちゃんと自分のものにしているのは本当にすごいことだなって。
だから僕も最初から「いいね」って言われるものじゃなく、最後の最後にちゃんと仕上げてステップアップできるようなプログラムにしたいと思っているんです。難しいかもしれないですけど、挑戦を見守っていただければと。
――ミーシャ先生にもそのように?
最初にそう伝えました。トップの選手はそうやって次の階段を上っていってるし、僕もプログラムを通して成長したいと。だから今シーズンはとびきり難しいのにしてくれって言ったんです。「僕、ミーシャの本気が見たいなー」って。それでミーシャが「よっしゃ任しとけ!」ってなって完成したのがこのプログラムです。
――そこまで言われたら、ミーシャ先生も燃え上がらずにはいられないじゃないですか。
そうですよね(笑)。曲も他にも候補があって僕も提案したんですけど、ミーシャがすごく推していたので「Halston」に決めました。
今までは自分の意見もどんどん言ってたけど、今回は成長するためにも他人の視点を大事にしたい。人からの意見を信じてみてもいいなって。
――それでショート、フリーともに振付師の方にお任せしたんですね。フリーはいつお披露目ですか?
「THE ICE」になるかな。キャシー・リード先生に振り付けてもらったエキシビションもその時に公開できればと思いますのでお楽しみに。
2023-24シーズンの目標
グランプリシリーズからガンガンいくシーズンに!
――先ほどのお話にもありましたが、今シーズンは序盤からスピードを上げていくイメージでしょうか?
グランプリ(シリーズ)からガンガンいくのが目標です。
でも実はジャンプがまだ戻ってきてないんですよね。ファンタジー(・オン・アイス)が終わった辺りから、がくんと下がっちゃって。そのままどっか行っちゃった感じがある(笑)。
スケーティングの練習が増えたこともあって、体のバランスが変わったのかな。だけどその分滑りはぐっとよくなった。
どうせ全日本合宿で無理やり調子は上がるので、今は自分の体に聞きながら、 スケートを楽しみながらやっていけたらと思います。
――グランプリシリーズはスケートカナダ、中国杯に出場が決まりましたね。
そう、まさかのアサインだったんですよ。何も希望が通らなくて全部真反対になりました(笑)。NHK杯は地元大阪での開催だったので出場したかったですし、もう一戦はNHK杯とのスケジュールを考えてフランス杯を希望していました。
結果カナダと中国に決まり、どっちも(山本)草太が一緒だし、「おいおいなんで? 二人セットにしとりゃいいと思っとるやろ」って(笑)。
まあでも今はどこに出場することになっても一緒だなって思ってるんです。結局行くところ全部の大会で日本男子が阻んできますし。
なんなら俺らでよかったんじゃないかって。草太は安定感があるし、とてもやっかいですけどね。今の時点であんな完成度にはできないですもん、普通。怖いよ(笑)。
そういえば中国に行くのは2011年のアジアントロフィー以来。あの時も草太と一緒で、なぜか二人でお腹を壊してトイレにこもっていたことを思い出しましたね(笑)。
――またお二人で表彰台に上る姿が見られることを期待しています。それにしても改めて日本の層の厚さを感じますね。
今年は(佐藤)駿がやばいです。元から演技がうまいと思ってたけど、表現の仕方のコツを掴んで、めっちゃよくなってるんです。毎年気になっている選手の一人ですけど、今シーズンは一番気になる存在といってもいいかな。
でも日本男子ってみんな本当にすごいんですよ。(宇野)昌磨くんが最強すぎるから、みんなで彼を目指して頑張ってるって感じ。シーズンの最初から全力でやらないと勝てないってみんな考えてるはず。
もう楽しくて仕方ないですよ、今。この前のドリーム(・オン・アイス)の練習なんてメンバー的にも「あれ? 今って全日本の公式練習?」みたいな緊張感がありましたもん。不思議だな。大変だけど本当にいい時代だなって思います。
――今シーズンも日本勢の活躍から目が離せませんね。気になる友野さんの初戦は?
8月の全大阪(2023全大阪Ⅱフィギュアスケート選手権大会)に出ようかと。あとは他に国際大会に出場するかもしれません。全大阪はフリーだけの演技になるので、どこかでショートを披露しておきたいという気持ちがありますね。
今シーズンの目標は、すべての大会でメダルを取ること
――今シーズンの世界選手権が北米のカナダ開催というのもいいですよね。最終的な目標はこの大会になりますか?
はい。結局世界選手権でメダルを取らないと意味がないから。
でも(グランプリ)ファイナルにも行きたいんです。だから今シーズンはすべての大会でメダルを取ることが目標。とにかく目の前のことを全部やる。2023-24シーズンはひたすら“脳筋”でいこうと思います。
――シーズン中のお話はぜひ今後の連載の近況報告にて聞かせてください。本日はありがとうございました。
取材・文/轟木愛美 写真/アフロ
今後のアイスショー出演スケジュール
■「THE ICE」
・愛知公演
7月22日~23日、愛・地球博記念公園(モリコロパーク)アイススケート場
・日光公演
7月25日~27日、日光霧降アイスアリーナ
・大阪公演
7月29日~30日、丸善インテックアリーナ大阪
・盛岡公演
8月2日~4日、盛岡タカヤアリーナ
■「ワンピース・オン・アイス ~エピソード オブ アラバスタ~」
・横浜公演
8月11日~13日、KOSE新横浜スケートセンター
・名古屋公演
9月2日~3日、ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)
Profile
フィギュアスケート選手 |
1998年5月15日生まれ、大阪府堺市出身。上野芝スケートクラブ所属。
趣味は古着屋巡り、サウナ。自分らしいスケートを追求し、唯一無二の武器へと変えてきた25歳。観客の心まで躍らせるHappyな演技で世界を熱狂させる愛されスケーター。
日本フィギュア界の“いい兄ちゃん”的存在で、後輩からの信頼も厚い。実直な人柄、好きなことに対する探究心など、近年競技以外で見せる魅力にも大きな注目が集まる。
2022-23シーズンは全日本選手権で初の表彰台、自らの力で世界選手権出場を果たし自己ベストを更新するなど一歩一歩確実な成長を見せ、新シーズンへの期待が高まるばかり。
オフシーズン中は常にアイスショーに引っ張りだこで、今夏には「ワンピース・オン・アイス」に出演。またしても新たな一面を見せてくれるはずだ。
今シーズンはあえて自分の苦手とする部分を前面に出すプログラムを用意。輝く個性+αの武器を求め、自分の成長に貪欲に進んでいく。
▶詳しいプロフィール&これまでの活躍はこちら
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Kazuki Tomono 友野一希
フィギュアスケーター
1998年5月15日生まれ、大阪府堺市出身。
2026年のミラノ・コルティナダンペッツォオリンピックを目指す男子シングル日本代表。感情をスケートにのせ、観客の心まで躍らせるHappyな演技で世界を熱狂させる愛されスケーター。
古着、サウナ、インテリアショップ巡りなど多彩な趣味をもつ26歳。実直な人柄、好きなことに対する探究心など、近年は競技以外で見せる魅力にも注目が集まる。
表現の名手であり、オフシーズンはアイスショーに引っ張りだこ。各ショーの特性に合わせた多彩なパフォーマンスでエンターテイナーぶりを発揮している。
新シーズンは「競技者としてより高みへ」をテーマに練習に励む日々。今季のフリープログラムは『Butterfly』。さなぎが蝶へと変化するように、彼もまた、圧倒的変化を求め日々成長中。その美しき進化に出会える日はもうすぐそこだ。
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