本&マンガ

蟹ブックス店主・花田菜々子さんが20代におすすめする本。今月は小沼理/著『共感と距離感の練習』

2024.07.28

街の書店員花田菜々子のおすすめ本ハタチブックセンター

東京を生きるゲイ男性、とまどいとたたかいのエッセイ

『共感と距離感の練習』小沼理/著 ¥1760 柏書房

『共感と距離感の練習』

小沼理/著 ¥1760 柏書房

ゲイであることを公表しているライターの著者。同性の恋人と暮らす引越しで業者に言われたこと、学生時代のせつない思い出、男らしさ、同性婚、東京とソウルで参加したLGBTのパレード……。自身の思いをやわらかな言葉で描く。

 LGBTという言葉は定着したけれど、今の日本はまだまだ差別的な状況。政治家が「同性カップルが隣に住んでいたら嫌だ」と発言したり、女子が「彼氏はいないの?(異性愛が前提)」と聞かれたり、何より同性同士の結婚はできなかったり……。
 「わかるかも」が口癖で、誰かにすぐ共感してしまいすぎて「共感」も「距離感」も下手だと悩む著者。彼が日常で感じたことや、日本で同性愛者として生きていくことについて綴ったこの本は、同じ悩みを抱える人やLGBTについてもっと知りたい人にぜひ読んでほしい! 読みやすくかっこいい文章で、切実だけどどこかさわやかなところも魅力。
 パレスチナ問題を始めさまざまな社会問題にもページが割かれているので「差別や戦争、社会の問題について、どんなふうに考えを深めていったらいいんだろう?」と思っている人にもおすすめ! 絶対記憶に残る1冊になります。

『イルカも泳ぐわい。』加納愛子/著 ¥792 ちくま文庫

『イルカも泳ぐわい。』

加納愛子/著 ¥792 ちくま文庫

お笑いコンビAマッソ・加納愛子初のエッセイ集が、書き下ろし「むらきゃみ」と、フワちゃんの解説を加えて文庫化。動画視聴中に発見したツッコミぜりふに感銘を受けた時のことを記した表題作をはじめ、軽快で小気味いい文章を味わって。

『私の身体を生きる』西加奈子・村田沙耶香・金原ひとみほか/著 ¥1650 文藝春秋

『私の身体を生きる』

西加奈子・村田沙耶香・金原ひとみほか/著 ¥1650 文藝春秋

17人の女性の書き手が自らの体や性と向き合いながらつづった、文芸誌『文學界』での人気連載が単行本となって登場。まっすぐな言葉の数々は、"自分の体"という一番近いようで、難しい存在とつき合っていくためのヒントをくれるはず。

『クラスメイトの女子、全員好きでした』爪切男/著 ¥660 集英社文庫

クラスメイトの女子、全員好きでした

爪切男/著 ¥660 集英社文庫

「おまえは、女の子と恋はできないだろう」。小学4年生くらいの頃、突然父から告げられた一言がすべての恋の始まりだった――。小学生の時も、中高生の時も、クラスメイトの女子全員を好きだった著者がしたためた"時を越えたラブレター"21編。

●はなだ ななこ 
東京・高円寺の書店「蟹ブックス」店長。著書『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』『モヤ対談』が好評発売中。

2024年9月号掲載

Staff Credit

選書・原文/花田菜々子 web構成/轟木愛美 web編成/ビーワークス

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