友野一希の「トモノのモノ語り。」
友野一希連載「秋の夜長の新習慣&グランプリシリーズに向けた近況報告」【 #トモノのモノ語り。】vol.41
2024.10.18 更新日:2024.11.05
こんにちは。フィギュアスケーターの友野一希です。
皆さん、僕の地元・堺市と連携した「堺市おさんぽMAP」企画はもうご覧いただけましたか? 季節はすっかり秋に突入し、お散歩が気持ちいい時期となりました。ぜひマップを持って堺に遊びにきてくださいね!
さて、連載第41回目のテーマは、今年の夏から始めた僕の新しい趣味について。
また、いよいよシーズンが本格開幕したということで、近況パートでは近畿選手権の感想やグランプリシリーズの目標、また『ワンピース・オン・アイス』の思い出も報告しています。
そして記事の最後にはスペシャルなお知らせも!
今回も内容もりもりの回となっていますので、最後までお楽しみください!
今年の夏の過ごし方
10月。ようやく僕の大好きな季節がやってきました。皆さん冬服の準備は進んでいますか?
ここのところ連載で服のお話ができていなかったのは、忙しかったのと夏が暑すぎたせい。おかげでオフの日は買い物に出かけることなく、ずっと家に閉じこもる生活を送っていました。
友野一希、小説にはまりました!
では自宅で何をしていたかというと……それは「読書」。
きっかけは、家の本棚にずっと眠っていたある本をようやく読み切ったこと。ついに読破できたという達成感に喜びを感じ、そこからどんどん小説を読むようになりました。
なぜ小説かというと、自分の知らない人生を疑似体験できるという点に魅力を感じたから。
それからはなんとなくスマホを見る習慣をやめて、時間ができたらすぐ本を読むように。練習後には本屋さんに寄って、次に読む本を探す日々。売り場を眺めているだけでもわくわくしちゃうくらい、小説の世界にはまってしまいました。
まだ本の世界に足を突っ込んだばかりなので、現段階で手を伸ばすのは、1、2時間くらいでさらっと読めるもの。1日の大半は練習なのでたっぷり時間は使えないですし、最初から分厚い作品に挑戦すると自滅する恐れもあるため、読みやすい文章、かつ比較的短いものをセレクトして読んでいます。
この新しい趣味について連載で話したい!と思ったのですが、なにぶん超初心者なので、まだ語るほど読書という行為を深めることができていないんです。
だから本当はもう少し時間が欲しいところなんですが、いち早く報告したいという思いから、今回は読書初心者が読んだおすすめの本というテーマにしようと思います。
最初に断っておくと、多分皆さんがすでに読んでるだろう作品を、「僕も読みました!」ってだけの報告です(笑)。すべて超初心者の感想になりますので、その点だけ許していただければと思います!!
Book log #01
『白夜行』
心に闇を抱えた男女の人生を描いた長編ミステリー
まずは先ほどもお話しした僕が小説にはまるきっかけとなった大事な一冊を。
じゃん! 東野圭吾さんの超有名な長編推理小説『白夜行』です。
最初にさらっと読める本が好きだと言っておきながら、これは文庫本で864ページにも及ぶ超大作でした。すみません(笑)。
実は僕がこの本を手に入れたのは、10年近く前のこと。僕にとって『白夜行』といえば、町田(樹)くんが自ら振付を行ったエキシビションのプログラム。そんな思い入れもあって、かなり昔に気合いを入れて購入したものだったんです。
ただ買ったはいいものの、読書習慣がない当時の僕にはこのボリュームはなかなかハードルが高く……読み始めては途中で断念するというのを何度も繰り返していたのですが、この夏、ついに読み切ることができたんです!
物語はある殺人事件を契機とした、被害者の息子と容疑者の娘、二人の男女の19年間の人生を描いたもの。
最初は「この事件の犯人は一体誰なんだろう」と疑問を抱きながら読んでいくのですが、作品中では他にも二人が成長していく過程でたくさんの事件が起こるんです。だけどその事件の真相はどれも明確には描かれていない。
ただ読み進めていくうちに、自分の中にあった「もしかしたらこうなんじゃないか」という疑惑が確証に変わるような瞬間がいくつもあって。そうやって点と点とがつながるたび、張り巡らされた伏線と巧妙に練られたストーリーにただただ「すごい!」と唸らされます。
登場人物それぞれが抱える闇が徐々に暴かれていく展開がとてもスリリングで、ページをめくる手が止まらない……こんな経験は初めてのことでした。
罪を重ねながら歩む二人の壮絶な人生。読み終わった後はその人生を自分も体験したような気持ちになり、これが小説のおもしろさなんだ!と気づかされた作品です。
Book log #02
『ノルウェイの森』
村上春樹作品デビュー!
2冊目は……ダダン! こちらもド王道。1987年に発売された村上春樹さんの世界的ベストセラー小説『ノルウェイの森』。すでに2回読みました。
いつもこの連載を読んでくださってる皆さんは今「友野くん大きく出たな」って心の中で思ってらっしゃるかもしれません。まあきっかけは、ちょっとかっこつけてみたかったっていうのもあるんですけど……(笑)。
村上春樹さんの小説はめちゃくちゃ刺さる人と、そうでもない人に分かれがち、と聞いたことがあります。僕は断然前者。むしろぶっ刺さって、自分でも驚くほどその世界に引き込まれてしまいました。
好きな小説の方向性を教えてくれた『ノルウェイの森』
『ノルウェイの森』は僕でも名前を知っているくらい有名な作品。古書店で次に読む本を物色していたところ、「お!知ってる作品がある」と、ピンときて買ったもの。赤と緑の装丁も素敵だし、読みやすそうなボリュームも決め手の一つでした。
ストーリーは、37歳になった主人公ワタナベがドイツへと向かう飛行機の機内から。着陸とともに流れてきたビートルズの『ノルウェイの森』によって、大学時代の記憶が蘇るというシーンから始まる回想録です。
高校時代に親友を自殺で失くした経験があるワタナベは大学入学後、その親友の恋人だった直子と偶然再会。いつしか惹かれ合い、次第に親密な関係になっていくものの、直子はかつての恋人の死を受け入れることができず、精神を病んでしまう。そしてワタナベは直子を愛す一方で、新たに緑という女性に出会い惹かれていく――という、喪失感の中で揺れ動く感情と恋愛模様を描いたお話です。先ほどの『白夜行』のようになにか大きな事件が起きるのではなく、ただ人の内面の奥深くを覗き込むような作品です。
主人公のワタナベ含め、本書に出てくるのはちょっとややこしくて、性に奔放で、心に痛みを抱えた人物たち。一見ぶっ飛んだ行動も多いし、僕はこの登場人物の中の誰にも感情移入はできないけど、でももしかしたら。僕がまだ気づいてないだけで、どこかにそういう自分もいるのかもしれない、そんな考えを抱きました。
普通なかなかこんな複雑な人生を送ることってないんですよ? だけど不思議なリアリティがあって、小説を通してまだ知らない痛みを体験することができた。人間の心の奥深く、柔らかいところにはこんな感情があるんだと。そしてそれは自分の見ている世界を広げてくれることにもつながるんじゃないかなって。
きっとこれから年を重ねて読み返したらまた感じ方も違ってくるだろうし、これからもっと読み込んでいきたい内容でした。
……とまあ、僕はまだ感想をうまく言えるくらいまで到達していないんですけど、『ノルウェイの森』は自分の好きな小説のジャンルを知るきっかけになりました。僕の好きな本の方向性というのは、自分にはなかった考え、気持ちを知ることができるようなもの。最初は全然共感できないって思うようなことでも、読んでいるうちに歩み寄れるような、そんな気持ちになれるお話が好きなようです。
登場人物のシティボーイ的暮らしに共感
村上春樹さんの作品に惹かれた理由は他にも。
なんといっても作品に登場するカルチャーは、僕の趣味嗜好にマッチするものばかり。レコードやジャズバーにコーヒー……しゃれた大学生の過ごし方っていうのかな。作品に出てくる本を読んだり、曲を聴いたりして、理解を深めるのもいいし、自分の日常に落とし込んで新しい扉を開く、なんて楽しみ方ができるのも魅力ですね。
これをきっかけに村上春樹さんの作品に興味をもち、今は『1Q84』を読んでいるところ。全3冊にわたる長編なので、読むのが遅めな僕にとっては結構時間がかかるのですが、毎晩少しずつ読み進めています。
そうそう、この連載が始まって間もない頃、撮影の小道具として僕に、と選んでもらった本があったんです。撮影後そのままプレゼントしてもらったのですが、それが村上春樹さんのエッセイ『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』。ちょっとした縁を感じて、それもすぐに読みきってしまいました。
読みすぎるとこじらせちゃいそうだけど(笑)、登場人物の人間臭さも愛しいんです。まずは『1Q84』を完走することから達成して、それから他の作品もどんどん読んでみたいと思います!
Book log #03
『少女は卒業しない』
『正欲』
『何者』
自分の考えを一度ぶっ壊される『正欲』
続いては昨年映画化もされた話題作。でん! 朝井リョウさんの『正欲』です。
最近は至る所で“多様性”という言葉を耳にしますよね。中でもLGBTQ+といった性的マイノリティの人たちへの理解を深め、これまで生きづらさを抱えていた人たちにとってよりよい社会を作るという動きがさかんです。
でもこの『正欲』という作品は、その“多様性”の範疇の外側にいる人たちの話。これを読んで、“多様性”という言葉はあくまで想像できる範囲のものであって、世の中にはそこからこぼれ落ちてしまった人だっている、ということに気づかされました。
そういった人たちがどういう胸の内で、どんな人生を歩んで、何に打ちのめされ、どうやって自分の心を守ろうとしているのか。この本には僕が知らなかった、また目を背けていた現実がありありと描かれています。
本書の帯に書かれたキャッチコピーは、「読む前の自分には戻れない――」。
本当にその通りで、自分のこれまでの価値観がひっくりかえるような内容でした。“多様性”という、都合のよい言葉で理解したような気になっていた自分を見つめ直すきっかけをくれた一冊。ぜひ一度手にとって、ご自身の目で確かめていただきたいです。
就活生の自意識をリアルにあぶりだす『何者』
朝井リョウさんの作品は、すらすら読める分かりやすい文章でありながら、時に自分を疑ってしまうような問いかけも多く、読む前と読んだ後では世界の見方がガラッと変わることも。
そんな朝井ワールドにすっかり魅了されてしまった僕が次に手に取ったのが、就活を題材にした『何者』。こちらは直木賞を受賞し、映画にもなった作品話題なので読まれた方が多いかもしれません。
作品中には主人公を含む5人の就活生が登場するのですが、そこで描かれる就活の超リアルなこと! 途中、各人のSNS投稿が挿入されることでリアリティや切実さが増し、僕は就活を経験していないのに心がヒリヒリしました。
ここからは少し本質の部分に触れるため、見たくない方はスキップ推奨!
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この物語は主人公の視点をもとに進んでいくため、読み手も知らず知らずのうちにその周りの登場人物を評価してしまっているんです。そしてそれが最後の最後、ぞっとする「どんでん返し」につながるんです。
朝井さんの巧みな文章にのせられ主人公に感情移入して読んでいると、痛い目を見る。積み重ねてきたものが一瞬で壊れるようなぞくぞく感もあり、自分丸ごと疑ってしまうような恐ろしさもあって……。実際に読んでみてこの作品が就活ホラーと言われる理由がよく分かりました。
決して読後感がいいとは言えないけど、その分心に大きなインパクトを残す作品でした。
高校最後の卒業式を描いた7つの物語。『少女は卒業しない』
そしてこの2冊の他にも、校舎の取り壊しが決まっている地方の高校が舞台の『少女は卒業しない』という短編集も読みました。
その学校の最後となる卒業式の一日を7人の女子高校生の視点から描いたお話。短編集なので気軽に読めてふふっと笑えて、青春のすべてが詰まっていました。青春最高!
これ以外にも、デビュー作『桐島、部活やめるってよ』など、まだまだ読みたい本がたくさん。朝井さんの作品を通して、世の中への考えを深めていきたいです。
Book log #04
『コンビニ人間』
「普通ってなんなんだろう」と考えさせられる話題作
次もですね、めっちゃ気になってました。
じゃん!『コンビニ人間』です。
コンビニバイト歴18年目、彼氏なしの36歳の女性が主人公。彼女にとってコンビニは唯一普通の人間らしく振る舞うことのできる場所。そこに心地よさを感じているからこそずっと働いているわけなんですが――そんな彼女に対してやっぱり世間は厳しい。周りからは変な目で見られるし、いつまでコンビニで働くの?とか、結婚しないの?とか……とにかく社会の勝手な常識を持ち込まれていろいろ言われちゃう。
確かに、コンビニを唯一の拠り所として過ごす彼女は世の中から見ると“普通”ではないかもしれない。だけど読んでいると、そもそも“普通”って何?と自分の中に疑問と違和感が生まれてくるんです。
そんな僕自身も一般的には“変わった人”の部類に入る人間だと思ってて。人と考え方が違うなと思うこともあるし、「なんでこれができないの? 普通はこうだよ」って言われたりする場面も多々あります。
それにきっとフィギュアスケートやってる時点でまあまあ普通とはかけ離れてる(笑)。それこそ昔は「男の子なのになんでフィギュアスケートやってるの?」って何度も言われてきましたし。
なので世の中の常識とのギャップに心を乱される、という点では共感も。実際に大学卒業後の進路については少し悩むこともあったし、自分の進むべき道は決まっているけど、みんなが就職していく中で一瞬だけ孤独を感じたのも覚えてる。もちろん一度も後悔はしてないし、続けられる幸せを常に感じているんですけど。この世に普通といわれる基準があることで、自然とそれと比べてしまっていたんだと思います。
生きていればいつか社会という壁にぶち当たる日がくるもの。この小説も最後、主人公が現実という壁の前で選択を迫られるところで終わります。
ハッピーエンドなのかバッドエンドかと聞かれると難しいですけど、僕は彼女の決断については、それでいいんじゃない?という意見。だって世間の普通に合わせて生きていくほうがずっとつらいから。
今後生きる上で大事にしたいのは、何事も決めつけず広い視点をもつこと。そして自分と違う価値観の人に会った時も、まずは受け入れて歩み寄る努力ができる人でありたいです。
Book log #05
『成瀬は天下を取りにいく』
『成瀬は信じた道をいく』
予測不能・かつてない最強の主人公に心奪われまくり!
続いては、ドン!
今めちゃくちゃ話題の『成瀬は天下を取りにいく』と、その続編『成瀬は信じた道をいく』です。
もう超面白いんですよ!!! これは説明簡単。
主人公は成瀬という14歳の女の子。こんな主人公今まで見たことない! ってくらい個性が際立った子で、自分のやりたいことに対していつも猪突猛進。行動力にあふれたニュータイプのヒロインなんです。
この物語は、そんな成瀬がいろいろな目標に向かってひた走る話なんですが、普通目標というと誰しも社長になりたいとか、優勝したいとか、わりと分かりやすいビッグなものを掲げる思うんです。でもこの子の場合は、そうくる? みたいな斜め上の発想が多くて。
例えば成瀬が友人の島崎に対して「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」と決意表明するところから始まる第1章。成瀬は閉店を控えた地元百貨店のカウントダウン中継に毎日映り込みに行くと宣言。周りがあっけに取られている間にすぐさま実行、達成してみせるんです。
他にも突然「M-1グランプリ」に挑戦してみたり、髪を坊主にしてみたり……と、はたから見れば成瀬の挑戦は突拍子もないことばかり。中には読んでいて戸惑ってしまう人もいるかもしれないですけど、僕はこの主人公のこと、なんかめちゃくちゃ好きになっちゃう。
成瀬の行動が周りにいい影響をもたらしていくストーリー
全力で我が道を突き進む過程でどんどん周りを巻き込んでいく成瀬。きっと成瀬自身はそんなつもりはないんだろうけど、自然と周囲にいい影響を与えていく――という圧倒的主人公感にやられます。
先ほども言った通り、「え、そんなこと?」みたいな挑戦もあるけど、自分がこうだと決めたことを疑わず、まっすぐに進む姿がすごくかっこよくて、自分もこんなふうに生きられたらと成瀬に憧れてしまうんです。
このシリーズの舞台は滋賀県大津市の膳所(ぜぜ)。作品内ではこの地にちなんだものがたくさん登場することから、現在膳所では聖地巡礼フィーバーが起きているとか。ラッピング電車が走ったり、スタンプラリーが開催されてたりと街は大盛り上がりだそうで、原作同様、成瀬の与える影響ははかりしれないなと感じました。
周りがどう思うかなんて気にしない。自分の信念のもと、こつこつ頑張る姿に勇気をもらえるシリーズ。何かに挑戦したいと思っている人に読んでもらいたい本です。
Book log #06
『カラフル』
元気がない日に読みたい不朽の名作
最後に感想は短いのですが、これ読んだよ!っていうのも紹介しちゃいますね。
でん! 森絵都さんの『カラフル』。僕はこの年齢になって初めて読みました。
生前、ある罪を背負ったことで転生できなくなった魂が抽選に当選し、再挑戦のチャンスを獲得した「ぼく」。前世での罪を思い出すため、自殺を図った少年の体に乗り移り、もう一度人生をやり直すというお話です。
最初は新しい環境に悪態をついていた「ぼく」ですが、物語が進むにつれて、少しずつものの見方に変化が訪れる。そうして迎えるラストの展開にはすごく胸を打たれるし、読み終わった後は心がじんわりと温かくなるのを感じます。
作品中の“角度次第ではどんな色だって見えてくる“という言葉通り、この小説から教わったのは、世の中にはこんなにたくさんの“カラフル“な視点があるんだということ。人って煮詰まると視野がどんどん狭くなってしまって落ち込んでしまうこともあるじゃないですか。そんな時に手に取りたい名作中の名作です。
本は人生を豊かにしてくれるもの
読書を始めたことで、これからは喫茶店に行って本を読むという過ごし方ができるじゃん!って、うきうきしているところ。『ノルウェイの森』でもそういうシーンがたくさん出てきて、いいなあって思ってて。今はまだ時間がないから専ら家のソファだけど、今後休日の過ごし方も変わってきそう!
そして今回初めて読書に触れてみて感じたのは、一冊の本から受け取るものの多さ。
インターネットやSNSの場合、自分の興味のある視点でしか見ないけど、本だとまた違った角度から訴えかけてくるから、思いもしなかった世界を知ることができるんですよね。
特に小説は、読むだけで自分とは違う一つの人生を経験したかのような気持ちに。このように他者の言葉で自分の知見が広がっていくことが、読書の醍醐味の一つなんだなと実感しました。
まだ僕は初心者だから、読書を通して自分が変わったなんて大きなことはまだ言えないし、人ってそんなにすぐに変われない。でも今後道に迷った時、ふっと本で学んだことを思い出して、考えの助けになったら、それって素敵なことじゃないですか。
書いてあることが100%理解できなくても、世の中には自分とは違う視点がたくさんあることを知っているだけでも、きっと見る世界は変わってくる。こういう人もいるんだ、でも自分はこうだなって、自分自身を知ることにもつながるから。
これからいろいろな痛みや喜びを知って、もっと人に優しくなりたい。それだけで十分自分の人生にとって意味あるって思います。
それから本を読んでいると、僕には人生経験が足りないなと思い知らされることがいくつもありました。これからさまざまな価値観を知っていろんなことに敏感になりたい。そうすれば人としての魅力がレベルアップするような気がします!(笑)
ぜひおすすめの小説を教えてください!
ちょっと背伸びして昔の名作文学作品を読んでみたいという気持ちもあるけど、しばらくはサクサク読める本をたくさん手に取って、読んだ本をどんどん増やしていくのが目標。
僕の好みは今回紹介した本のように、表面的な語りよりも、問いを投げてくるようなもの。それから僕は服でも家具でも、作り手の思いや背景に興味をもつタイプだから、人のそういった人の思考、生き方を知ることができるような本が合うんだと思います。
そんな僕にぴったりなおすすめの本がありましたら、ぜひコメント欄で教えてください。練習の合間に少しずつ読んでいきたいと思います。
(訳:Xで「#トモノのモノ語り」のハッシュタグを付けて、おすすめの本を投稿してください)
近況報告
ワンピース・オン・アイス
待望の再演、コーザとの再会。
9月頭には、『ワンピース・オン・アイス』に出演。1年ぶりにコーザとして皆さんの前に帰ってくることができました。
さまざまなアイスショーに出演させていただいてる中でも、再演というのは初めての経験。まずは昨年の動画を見ながら、振付や流れを思い出すことから始めました。そうやって過去の自分の姿を見ていると、初演からこの1年の間に本当にたくさんのことがあったなあと感慨深い気持ちに。
初戦を終えた8月半ば。いよいよ練習がスタート。いざ氷の上に立つと、体が覚えていたのか、意外とすんなり自分のパートを演じることができました。ただやっぱり練習着のままだと、まだ完全にはコーザに入り込めてないという気持ちがあったのも事実。
でもいざ衣装を着てリハーサルに臨んだら、自分の中で完全にスイッチが入るのを感じました。それはきっと僕だけなく、他のキャストも同じだったはず。衣装を着た瞬間、みんなの中にいたキャラクターが一気に覚醒したのを感じて、『ワンピース・オン・アイス』が本当に帰ってきたんだ!と胸が熱くなりました。
コーザも大活躍のスペシャルフィナーレ
今回新たに追加されたスペシャルフィナーレ。有難いことにコーザはたくさん出番をいただきました。気づいた方もいらっしゃるかもしれないけど、ジャンプパートもパワーアップ。なんとあの衣装で3-3(3回転フリップ-3回転トーループ)を跳んだんです。台本にはコンビネーションジャンプと書かれていたので、もしかしたら3-2でもよかったかもしれないんですけど、みんなから「そこは3-3でしょ?」って言われてたのもあり(笑)。思い切って挑戦してみたら、超きれいに着氷。やればできる!という自信になりました。
あとはやっぱりきただにひろしさんの生歌唱! パワフルで迫力があって、踊っている僕らもめちゃくちゃテンション上がりまくり。全4公演、最高の時間を過ごすことができました。
『ワンピース・オン・アイス』円盤化決定!
今回の会場は、新しく誕生した「LaLa arena TOKYO-BAY」。さらに隣接する「ららぽーとTOKYO-BAY」では、開催を記念したパネルの展示があったりと、このショーの規模がどんどん大きくなっているのを感じました。
2年目ということで、キャスト、スタッフの絆も深まり、「チーム ワンピース・オン・アイス」としての団結力を発揮できた公演になったと思います。来年2月にはBlu-ray・DVDも発売。自分が出演するアイスショーが円盤化されるというのは初めてのことなので、とても楽しみです。
シーズン開幕、4試合を終えて
8月頭の木下トロフィーから始まり、サマーカップ、全大阪Ⅱ選手権、近畿選手権とここまで4戦。直近の近畿のフリーはジャンプでやらかしてしまったけど、意外とそんなに焦りはなかったというのが本音。ようやくショートでいい演技ができたので、今後もコンスタントにそれができるように、というのがまずありました。
近畿選手権での反省点
ここまでたくさんの試合に出場してきましたが、ジャンプはまだしっくりきていない部分も多い。近畿前は質の高い練習ができている感覚があったし、現にショートで、4-3(4回転トーループ-3回転トーループ)を決めたのはその証拠でもあると思います。でもそれをフリーまでもっていくことができなかった。日ごろの練習の成果を2日連続フルで発揮できるくらいの練習がまだ詰めていなかったんだと痛感しました。
それからショートプログラムに対して苦手意識があった分、近畿ではとりあえずショートをなんとかしたいと、気持ちが偏りすぎちゃったのも原因。結果、1日目で集中力を使い果たしてしまって、ミスに対するリカバリーもできず、悪い日の練習内容がそのまま実戦で出てしまった、というのが近畿選手権だったと捉えています。
今後の課題は、ジャンプへの自信を上げること
全集中でショートに臨んで、ノーミスでしたイェイ! みたいなやり方だと、到底フリーまでもたない。なんならショートはアップくらいの気持ちで、なんなくこなせないと4回転も3回転も入らない。
今後大事になるのは、やっぱりジャンプに対して自信を高めていくこと。その上で、より細かいところまで気を配り、ミスがあったとしてもそれ以上点数を落とさないよう基準自体を上げる。
フリーは後半のジャンプでもミスが出ているし、結果演技の流れも悪くなっている。プログラム全体を通して、流れのある演技ができるよう、ここからしっかり修正していきたいと思います。
ショートの衣装を初お披露目!
近畿選手権では、ショート『Tshegue/Muanapoto』の衣装を初お披露目。やっぱり衣装を着ると、より一層身が引き締まります。デザイナーは渡辺浩美さんで、カラフルかつスタイリッシュなイメージでお願いしました。赤、青、黄色などカラフルな色使いが目を引く、僕史上一番派手な衣装。最初は攻めた衣装だと思ってたけど、実際に着てみたら不思議となじんでくれて、周りからもかなり好評。テンションが上がるお気に入りの一着です。
フリーの衣装は、グランプリシリーズのフランス杯でお披露目にしますので、そちらもお楽しみに!
最近の練習状況
最近の僕はというと、やることが多すぎて、全然時間が足りない!という毎日。でもそれだけスケートに向き合えているのはいいことだし、やっぱりオリンピックに向けて頑張るって決めてからは、すごく集中してスケートに向き合うことができていると感じます。
贅沢な話なんですけど、たくさんアイスショーを経験したからこそ、今は競技の練習のほうが楽しいって思える。ショーでたくさん素晴らしい選手を見たことで、自分に足りないものが明確に分かった。必要なのはスケートに本気で向き合うこと。だからそれを会得するための競技の練習が今、めっちゃ楽しいんです。
忙しくしてる分、体調やケガを心配されることもあるけど、毎日何度も何度も根詰めてジャンプを練習していると、どこかしら痛いというのは常にあるもの。ケガだけは絶対しないよう、うまく付き合いながらやっていこうと思っています。今は次戦に向け、充実した練習ができています。
次戦はいよいよグランプリシリーズ!
前回のインタビューでもお話しした通り、今シーズンはグランプリからエンジン全開。1戦目フランス、2戦目フィンランドとの間は2週間足らず。帰国して少し休んだらすぐまたヨーロッパというスケジュールなので、体力面でもしっかり調整することが大事。これまでの4試合でよかったところを全部グランプリにぶつけるという気持ちでやっていかなきゃ。
これまでの僕の戦い方といえば、12月の全日本選手権に向けて限界マックスまで調子を上げていって、自分史上最高のものを出しきるっていうものだった。逆にいうと、そうしないと戦えなかったのが、今までの自分。でも今シーズンは、今の時期から限界突破の気持ちでやっている。全日本の前くらい自分を追い込んでグランプリシリーズに挑みたいと思います。
グランプリファイナルに進むことを目標に、フランス杯に向け、しっかり追い込む毎日。そのお話はまた次の連載でお話します!
友野さんの試合予定
- ・グランプリシリーズ フランス大会
11月1~3日(現地時間)@アンジェ - ・グランプリシリーズ フィンランド大会
11月15~17日(現地時間)@ヘルシンキ - ・全日本選手権
12月19~22日@大阪 東和薬品RACTABドーム
(地元大阪での開催、「堺市おさんぽMAP」企画も開催中)
\TOMONO NEWS/
「友野一希2025年カレンダー」発売決定!
前回大反響をいただいた友野一希さん初となるカレンダー企画。2024年度版に続き、2025年も友野さんと共に過ごすことのできるスペシャルなカレンダーの製作が決定しました。
今回発売するのは、2025年1月~12月の月めくりカレンダー。2025年はオリンピックシーズンにあたるということで、目標に向かうアスリートとしての姿を応援したいという思いから、前回には登場しなかった練習中のカットを多数採用。またカレンダーには、現在開催中の「堺市おさんぽMAP」企画と連動したカットも。26年間暮らす地元での撮影だからこそ見ることのできる、リラックスした柔らかな表情も見どころの一つです。
友野さんのON/OFFさまざまな魅力を切り取った2025年のカレンダー。発売は11月前半を予定しており、続報はnon-no webの特設ページにてお知らせする予定です。グランプリシリーズを応援しながらお待ちいただけますと幸いです。
Staff Credit
語り/友野一希 写真/田形千紘(友野さん) 企画・構成/轟木愛美
友野一希さんが地元のおすすめスポットをナビ!
「堺市おさんぽMAP」企画実施中!
Profile
2022-23シーズンは全日本選手権で初の表彰台、自らの力で世界選手権出場を果たし自己ベストを更新するなど確実な成長を示した1年に。オフシーズン中はありとあらゆるアイスショーに出演。各ショーの特性に合わせた多彩なパフォーマンスでエンターテイナーぶりを発揮。初めてキャラクターを演じた「ワンピース・オン・アイス」での熱演も各界で話題の的となった。
成長を求め自分のプライドをかけた戦いへと臨んだ2023-24シーズン。あえて強みを封印した挑戦のフリー『Halston』は、試合を重ねるごとに輝きを増し、これまで地道に磨いてきたものが結実したプログラムに。昨年12月の全日本選手権では、芸術性を極めたフィギュアスケートの真骨頂ともいえる演技で唯一無二の世界観を作り上げた。
その進化はアイスショーを経てさらに加速し続け、高橋大輔さんプロデュースのアイスショー『滑走屋』ではショースケーターとしての本領を発揮。さらに6月の『氷艶hyoen 2024 -十字星のキセキ-』では歌に演技にと新境地に挑み、競技の枠に留まらない真の表現者としての地位を確立。そうかと思えば翌週の『Fantasy on Ice』では大人のムード満載のプログラムをこなれ感たっぷりに披露するなど、そのステージ一瞬一瞬で眩い輝きを放ち、圧倒的吸引力でいつも観客の心をつかんで離さない。
このオフには、スケーティングの原点に立ち返り、コンパルソリーを一から学び直す姿はどんな時でも基本を重んじる実直な彼ならでは。
迎えた新シーズンは2026年のオリンピックに明確に照準を合わせ、スケートと向き合う1年に。長年振付してもらうのが夢だった振付師とタッグを組み、自分が目指すフィギュアスケートを極限まで追求し続ける姿勢は、彼の崇高な精神そのものだ。
これまで何度も自分だけのやり方で目の前を壁を壊し、乗り越えてきた彼が競技を突き詰めた先に出合う景色はどんなものなのか。その真価は11月のグランプリシリーズフランス大会、フィンランド大会で発揮されるはずだ。
Kazuki Tomono 友野一希
フィギュアスケーター
1998年5月15日生まれ、大阪府堺市出身。
2026年のミラノ・コルティナダンペッツォオリンピックを目指す男子シングル日本代表。感情をスケートにのせ、観客の心まで躍らせるHappyな演技で世界を熱狂させる愛されスケーター。
古着、サウナ、インテリアショップ巡りなど多彩な趣味をもつ26歳。実直な人柄、好きなことに対する探究心など、近年は競技以外で見せる魅力にも注目が集まる。
表現の名手であり、オフシーズンはアイスショーに引っ張りだこ。各ショーの特性に合わせた多彩なパフォーマンスでエンターテイナーぶりを発揮している。
新シーズンは「競技者としてより高みへ」をテーマに練習に励む日々。今季のフリープログラムは『Butterfly』。さなぎが蝶へと変化するように、彼もまた、圧倒的変化を求め日々成長中。その美しき進化に出会える日はもうすぐそこだ。
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