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【キャリアインタビュー】COHINA(コヒナ)代表・田中絢子さんに聞く『好き』を仕事にするということ〈後編〉

身長150cm前後の小柄女性のためのファッションブランド『COHINA』の代表兼ディレクターを務める田中絢子さん。前編は、キャリア選択に悩むnon-no読者の背中を押してくれるような言葉の数々が印象的でした。

後編では、ブランドを立ち上げてからの苦労や新卒で入社したGoogle Japanの仕事との両立生活、2023年に創業5周年を迎えるCOHINAのこれからについてインタビュー。さらに、non-noの読者組織である大学生エディターズからの質問にも答えていただきました!

田中絢子さん_全身カット

Profile

●たなか あやこ
1994年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学在学中、自身の悩みに基づき身長150cm前後の小柄女性のためのアパレルブランド『COHINA(コヒナ)』をローンチ。ブランド立ち上げ後、新卒としてGoogle Japanに入社する。約1年の代理店広告営業&ブランドディレクターの両立を経て、Google Japanを退社。ブランドディレクターに専念。

社会的信用もブランドのコンセプトに対する信頼もゼロ。 そのぶん、ググって、歩きまわって、知識を深めていきました

――立ち上げ当時を振り返って、一番大変だったことはなんでしょうか?

 

「大学生だったので生産してくれる工場のツテがゼロで、いろいろなところに電話しても“学生だから信用ができない”と断られたり、話を聞いてもらえたとしても製品にした時の料金が大学生の感覚からすると高すぎたり。とにかく社会的信用と経験とコンセプトに対する信頼が皆無だったので、いいお取り引き先と出会うことがすごく大変でした。模索した結果、なんとか見つけたのがAlibaba.comという中国工場との直接取り引きを可能にするB to Bサービス。現地の方とSkypeでコミュニケーションをとり続けて、なんとか最初の生産にこぎつけることができました」

――大学時代は政治やメディアを専攻していた田中さん。アパレル業界は未知の世界だったと思いますが、市場のトレンドや販売促進の知識はどのような方法で勉強されましたか?

「生産回りに関しては知り合いの知り合いをどんどんたどって、頼れる人を増やしていきました。あとは……めっちゃググっていましたね(笑)。生地の選定も最初は自分でやらなきゃいけなかったので、世の中にはどういう生地の種類があって、どういう糸を選ぶべきなのか、体系立ててまとまっているサイトを見つけて、そこで基礎知識を学んだり、“サンプル 作り方”で検索してサンプルを1枚から作ってくれるサービスに問い合わせをしてみたり。当時は日本語で“D2C”(中間流通業者を通さずに自社のECサイトを通じて製品を顧客に直接販売する形態)と検索してもほとんど記事がヒットしない時代だったのですが、英語でアメリカのビジネスの潮流を調べているうちに、それが流行っているビジネスモデルだと分かって、そこから自分たちが取り入れられることは何かを深掘りしていったりもしました」

――COHINAのデザインの方向性は、どのように決められたのでしょうか?

「1日中ルミネやマルイを見てまわって、情報を自分の足で稼ぎました。サイズを気にせずに着られるなら本当はどういう洋服を着たいのかをまずは自分軸で考えて、小柄さんがどんな洋服を着られたら、可愛いかっていう妄想も膨らませながら。本を読んで、ブランドのターゲット層も考えましたね。たとえば10代向けとか40代向けといった年齢で切ったら、COHINAの服はどこに対して作っていくのがいいのか、初心者でも販売しやすい価格帯はどの辺りか、雰囲気は超ベーシックがいいのか、一点華やかな独自路線がいいのか……。自分の肌感と市場を見比べて、あとは“えいや!”でした(笑)

――2017年6月にGoogleに就職が決まって、2018年4月に入社。その間の10か月でブランドを商品の販売ができるような状態に持っていった、ということですよね。

「そうですね。2018年1月に創業して、4月にはある程度ビジネスとして可能性が見え始めていました。ブランドを始める態勢を作るまでの10か月間は、やっぱりめちゃめちゃ忙しかったです。」

GoogleもCOHINAも欲張ることで、いい結果を生み出す。 それがベストだと考えてスタートさせた両立生活

――そして、Google社員とCOHINA代表としての生活が始まります。ハードな毎日になると想像できるなかで、なぜ両立させるという選択をしたのでしょうか?

「両立させれば、たしかに私自身は忙しくなるだろうけれど、その方がプラスの結果を作れるのではないかと考えました。Googleでは中小企業の広告担当だったので、実際に事業をしている自分の考えをいかせるのではないかと考えました。このまま泥臭くルミネやマルイを歩きまわって情報を集めるより、Googleでマーケティングや会社運営の知識を学んで、社会経験を積んだほうがCOHINAの役に立つと思ったんです。それに体力には自信があったので、そこはなんとかなるんじゃないかと(笑)。どちらかを選ぶんじゃなくて、どちらも選ぶことで全部にとっていい結果を生み出すことがベスト。そう考えて、全どりしようと決めました

 

――実際に当時はどのようなスケジュールで働かれていましたか?

「朝7時か8時に起きて、10時くらいまで家で仕事をして、Googleのオフィスに出社して17時まで働いて、そのあとCOHINAのオフィスに移動して終電まで働いて、土日もCOHINAにいて……という毎日でした。だから、Googleの飲み会に全然行けなくて、友達が少ないことがいまだにちょっと心残り(笑)。厳しさはもちろんあったけれど、COHINAのこの課題を解決したい、もっと人を増やしたい……といった永遠に消えないToDoリストに突き動かされて、疲れているヒマもなかったです。 GoogleでもCOHINAでも仲間がフォローアップしてくれて、それがなかったらあの生活を実現できなかったことはまちがいないので、本当に感謝しています

自分の正解は、自分で作り上げるもの。 選んだほうをより納得のいく結果にするために頑張ることが大事

――2019年6月にGoogleを退社されますが、そこに迷いはありませんでしたか?

「あったのかなぁ、なかったのかな? 少しは悩んだと思います。でも、両立させていた1年ちょっとの間にCOHINAが自分のペースではコントロールできないくらいのスピードで大きくなっていって、責任者の私がフルコミットではないことがそろそろ事業にとって致命的なダメージになってくるだろうなという実感もあったので、もうこれ以上両立生活を続けることは厳しいと思い、決断しました。Googleは、今思い返してもとても素敵な会社だったなと思うし、大好きな会社なんです。ただ、Googleという恵まれた環境から卒業するということ自体には不安はなくて。社会人になる前に思い描いていた、グローバルで活躍できる土俵ができて専門性を高められたのか、その部分で胸を張って“私は一人前です”と言えるほどの自信はなかったのですが、今しかないっていうタイミングに対しての決断だったかなと思います」



――これまでキャリアや事業においてさまざまな選択をされてきたと思いますが、決断する時の軸になっているものはなんでしょうか?

楽しそうかどうか、やりたいかどうか、です。後先はあまり考えていないかも(笑)。負の側面ももちろん見続けているし、そこにとらわれそうになることもあるのですが、最後はやっぱり自分の“やりたい”っていう感情に従いがち。そうやって決断してきて、後悔したことは1度もないです。それはきっと、就職活動中にも感じたように、理想郷なんてどこにもないから。自分の正解は自分で作り上げるべきものだと思っているので、選んだ時点でそれが正解。あとは、その選択をより納得のいく結果にしていくために頑張るしかないと思っています



――2023年はブランド創業5周年という節目の年です。これからCOHINAをどのように展開していきたいですか?

「ひと口に小柄さんといっても、いろいろな体型の悩みを持った方がいらっしゃるので、まずはそういう方の悩みに寄り添っていきたい。今年からは、STRATA(エストラータ)という、より洗練された大人の小柄女性向けのブランドもスタートさせました。STRATAは、COHINAを通じておしゃれが楽しいと思えるようになって、もっとファッション性の高いアイテムも着てみたい、可愛いだけじゃなくてモードな洋服もカッコよく着こなしたいといった、挑戦したいお客様のためのブランドでもあるんです。そんなふうに、体型の悩みを解決するだけではなく、その人が思い描く未来の自分になるためのお手伝い、そしてさまざまなライフスタイルの小柄さんに寄り添いきった洋服の展開を世界中に届けていくことが今後の展望。社会にフィットしきれず悔しい思いをしている人に勇気を与えられるようなブランドであり続けたいと思っています

大学生エディターズからの質問に回答

取材には、non-noの読者組織、大学生エディターズも参加。

就職・就活を控えた4人の質問&お悩みを田中さんに回答していただきました。

田中さん&エディターズ

Q.春からアパレル関係に就職します。一人一人の体型の悩みに寄り添った洋服を提供していきたいのですが、田中さんがお客様の悩みを知る上で大切にしていることをお伺いしたいです。

「知らない人にある日突然“ところで悩みはなんですか?”って聞いても、誰でも“あ、いや……すみません、誰ですか?”ってなると思うんです(笑)。なので、毎日コミュニケーションをとり続けて、1日では成り立たない信頼関係を築いていくことを大切にしています。COHINAの場合はインターネット上での販売が中心なので、私たちにとっての一番の信頼関係構築の場はインスタライブ。10月に連続ライブ配信日数が1200日を超えたのですが、活動している姿を日々お見せすることで、お客様が親近感や愛着を持ってくださる。そのおかげで、商品開発に行き詰まった時などに意見を聞くとたくさんのアドバイスをいただけて、コロナの影響で納品トラブルが起きてしまった時には“大丈夫ですか?”、“大変ですよね”とむしろこちらに寄り添う声をかけていただけたこともあります」



コヒナのインスタライブの様子

Q.現在SNS上で情報を発信する活動を行っています。あまり反応を得られなかった時、見る人の興味をひくにはどうしたらいいのかが分からないので、田中さんがSNSを通した活動をする上で大事にしていることを教えていただきたいです。

「顔の見えない相手が考えていることを想像だけで理解するのは難しいので、少しでも直接的な考えを聞ける機会を作ります。たとえばインスタグラムの質問箱で聞いちゃうとか、YouTubeにコメントしてもらいやすい投げかけをするなど、なるべく文章で答えをもらえるような直のコミュニケーションを意識しています。そして、もう一つ大事にしているのは、1度決めたやり方に固執しないこと。こだわりを持ちすぎず、柔軟に何回もトライしてみてほしいです」



Q.いつかアパレルや化粧品のブランドを立ち上げたいと考えています。田中さんは、ブランド開発にあたっていろいろと苦労をされたと思いますが、気分転換にどんなことをされていましたか?

「旅行は昔から好きですね。生命力あふれる国をフラッと訪れることが多くて、大学時代にはバングラデシュに半年間行っていたこともあります」



Q.失敗するのが怖くて、なかなか思い切った挑戦ができずにチャンスを逃してしまうことが多いです。どうすれば失敗を恐れずに何事にも挑戦できるのか、田中さんがどのようなマインドで新しいことに挑戦しているのか、教えていただきたいです。

「私は、漠然とした不安を具体的なリスクに変換した時に、そのリスクをとれるかとれないかで冷静に判断するようにしています。何が怖いのか、どうなるのがイヤなのか、実際にそのシチュエーションになった時に自分は何を失うのか、つき詰めて言語化してみる。そうやって最悪のシナリオを考えると、そこまでダメージは大きくないだろうなとか、これは一番大事な、例えば健康に悪影響を及ぼしうるからやめようとか、自分がより納得できる決断ができると思います」

COHINA(コヒナ)

2018年1月にスタートした、身長150cm前後の小柄女性のためのアパレルブランド。ブランドコンセプトはあなたに陽が当たる服。小柄さんの体型がきれいに見えるよう、数ミリ単位でこだわられたデザインが人気を集めている。ブランド公式Instagramから毎日配信される、共感を重視したインスタライブによる販売も話題に。

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