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岩井なな
2026.08.24
奈良公園の一角に佇む、明治42年(1909年)創業の「奈良ホテル」。
かつて「関西の迎賓館」とも呼ばれ、皇族や国内外の要人を迎えてきた、日本を代表するクラシックホテルのひとつです。

今回は、2泊3日の奈良旅行のうち1泊を「奈良ホテル」で過ごしてきました。
和と洋のテイストが見事に調和した館内、想像以上に開放感のある客室、そして特別な日にもぴったりなディナーまで、クラシックホテルならではの特別な時間をじっくり体験。
さらに、アフタヌーンティーを思わせる優雅な朝食、旅の思い出を持ち帰れるショップなど、観光だけではなくホテルそのものを目的にした滞在を楽しみました。


「奈良ホテル」には、創業時からの歴史を受け継ぐ「本館」と、1984年に増築された「新館」があります。
大規模リニューアル工事に伴い、2026年1月4日のチェックアウトをもって全館休館。2026年6月4日から本館のみ営業を再開したとのことで、今回はそのタイミングに合わせて宿泊を予約しました。
なお、現在(2026年8月)は本館のみで営業。西館(旧・新館)は2026年9月2日からの営業再開を予定しています。

本館は、東京駅などの設計で知られる建築家・辰野金吾(たつの きんご)氏が手掛けた、大和モダン建築の最高峰です。桃山御殿風の檜(ひのき)造りで、瓦屋根の外観から館内の細かな装飾まで、和と洋が美しく融合しています。
一方、新館は南側の傾斜地という土地の形状を活かすため、奈良県吉野地方の伝統的な建築様式「吉野建て」を取り入れた建物。中庭に面した客室から緑を眺められる、よりモダンで落ち着いた雰囲気が特徴です。

まずは、本館1階のこちらのお部屋に通され、チェックインの手続きを。
ウェルカムドリンクとして、奈良県オリジナル品種の高級ブランドいちご「古都華(ことか)」と、奈良県が生産量が全国トップクラスを誇る「富有柿(ふゆうがき)」のサイダーをいただきました。
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赤いじゅうたんが敷かれた床に、ゆったりと腰掛けられるチェア。クラシックホテルならではの品格を感じる空間に身を置く時間の尊さを、早速感じられました。

本館には、1階から2階にかけて62室の客室があります。
今回宿泊したのは、そのひとつ「デラックスガーデンビュー」。料金は、1泊2名・朝食付きで8万円〜9万円ほどでした。

39㎡のゆったりとした空間に、シングルベッドを2台配置。天井が高く、実際に足を踏み入れてみると、数字以上に開放感があります。

木目の美しい設えに、落ち着いた色調のクラシカルな家具。随所に歴史を感じさせる趣があり、時間を巻き戻したかのよう。
ガーデンビューの客室を選んだため、窓の外には奈良らしい豊かな自然が広がっていました。

客室にはテレビやデスクも備わっていて、ホテルでゆっくり過ごすにも十分な設備。
観光を詰め込まず、あえて客室で過ごす時間をつくりたくなります。



客室に設置されているこだわりのティーや「奈良ホテル」オリジナルラベルのお酒などは、無料で自由に楽しむことができます。


洗面台は、石材と木材で仕立てられた上質感のある空間。


ソープ類は、イギリスの老舗ブランドでサステナブルな取り組みが人気の「バンフォード」のものを採用。ゼラニウムの香りもよく、ホテルの雰囲気ととてもマッチしていました。

バスローブに加えて上下セパレートタイプのルームウェアを用意。とろんとした質感で柔らかくとても心地よく睡眠できました。

クラシックホテルと聞くと、「古い」「設備が少し不便そう」といったイメージを持つ人もいるかもしれません。
しかし、「奈良ホテル」の客室は、歴史ある趣を残しながらも、ゆったりとした広さと必要な設備が整っていて、とても快適に過ごせます。

「奈良ホテル」の魅力は、客室だけにとどまりません。滞在中は、ロビーラウンジ「桜の間」に自由に出入りできます。

桜の間でひときわ目を引くのが、「平成の大時計」。1990年(平成2年)に、上皇・上皇后両陛下のご即位を祝して設置された、重厚な木製枠が印象的な時計です。
現在も時を刻み続けていて、15分に一度、美しいメロディを奏でます。

廊下、階段など、館内のいたるところにもクラシックホテルならではの意匠が残されています。
西洋の暖炉を飾る「マントルピース」と、日本の神社にある「鳥居」を組み合わせた珍しい調度品は、西洋の建築様式を取り入れながら、日本らしい意匠を随所に取り入れた「奈良ホテル」の和洋折衷の世界観を象徴する存在です。

ロビーラウンジの約9mの吹き抜け空間にある、美しい大階段も「奈良ホテル」を語る上では外せません。
大階段の手すりには一本の檜材を削り出したものが使われ、先端には奈良の伝統工芸「赤膚焼」による擬宝珠があしらわれています。

見上げれば、杉材を格子状に組んだ「格天井」が静かに、永い思い出を語りかけてきます。「格天井」寺院や神社、書院の広間など、かつての和風建築に用いられてきた伝統的な様式で、今もなお格式の高さを感じさせます。

ホテルという西洋の空間でありながら、随所に日本の伝統的な工法や職人の技が息づいているのが「奈良ホテル」の特徴です。
観光の合間に泊まるだけではなく、ホテルそのものを目的地にしたくなります。

夕食は、本館1階に位置し、国内外の要人や著名人に愛され続けるメインダイニングルーム「三笠」で。
創業以来続く歴代の料理長から受け継いできた伝統のフランス料理を、クラシックな雰囲気が漂う格調高い空間で食事が楽しめます。

お箸で楽しむ和洋折衷の「斑鳩ディナー」。1人21,000円で、今回は8月末まで提供されている夏メニューを味わいました。
「奈良漬のクリームチーズタルト」は、奈良漬特有の香りをふんわりまとったなめらかなクリームチーズと、サクサクとしたタルトの食感が好相性。奈良らしさを感じる一品から、ディナーが始まります。



岐阜県・長良川で獲れた鮎を使った「鮎のコンフィ 蓼(たで)のエマルジョン」は、じっくりと調理された鮎は、頭から尻尾まで、さらに骨まで食べられるほどやわらか。鮎本来の味わいをしっかり感じられる一方、やさしい風味のクリームソースが添えられ、味わいをまろやかに引き立てています。


鹿児島県産和牛は照り焼きソースをまとわせ、しっとりと仕上げられています。肉の旨みと甘辛いソースがよく合い、最後まで箸が進むおいしさでした。

和の食材を取り入れながら、フレンチの技法や盛り付けで仕立てる「斑鳩ディナー」。料理だけでなく、テーブルセッティングや食器、照明、そしてスタッフのサービスまで含めて、クラシックホテルらしいディナータイムを楽しみました。
観光で訪れる奈良とは少し違う、落ち着いた夜の奈良を感じられておすすめです。

「奈良ホテル」の朝食もとても楽しみにしていました。夕食と同じく「三笠」でいただきます。予約は必要なく、好きな時間に訪れられます。
洋食と和食から選べ、私は洋食を選択。ケーキスタンドに美しく盛り付けられたフルーツやグラノーラ、サラダがエレガントで、朝からアフタヌーンティーを楽しんでいるような気分にさせてくれます。
卵料理とパンも複数種類から選ぶことができ、今回は野菜煮込み入りのオムレツとホットケーキを。

私も大好きな奈良の「柿の専門」の柿ジャムをヨーグルトに添えていただくと、こっくりとした柿の甘みが広がる上品な味わいをプラスします。
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だんなさんは、和食を選択。2段のお重に茶碗蒸しやたらの西京焼などのおかずがたっぷりと詰められていて、とても贅沢な内容でした。

奈良名物の茶粥は蓋付きで提供され、温かさが長持ちします。おかわりができるのも、覚えておきたいポイントです。

朝の奈良の空を眺め、光に触れながら美味しい朝食をいただくひとときを満喫しました。

「奈良ホテル」に宿泊するなら、ぜひ時間をつくってホテルショップにも立ち寄ってみてください。オリジナルグッズをはじめ、ホテルがセレクトした奈良土産が所狭しと並ぶ愛おしい空間です。
今回は、鹿のモチーフがあしらわれたオリジナルハンカチと、ホテルの歴史を詳しく知ることができる「奈良ホテル物語」。さらに、朝食で味わって気に入った「柿の専門」の柿ようかんや柿ジャムも購入しました。

ならまちにある老舗「砂糖傳(さとうでん)増尾商店」のこんふぇいと(金平糖)も、奈良ホテルオリジナルのボックスに入って販売されています。ここで初めて「砂糖傳」の存在を知り、旅の途中で実際のお店にも足を運んでみました。
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ホテルで過ごす時間の中で新しい“好き”を見つけ、そこから奈良の街へ出かけて、また別の“好き”に出会う。そんなふうに旅の楽しみが少しずつ広がっていくのも、「奈良ホテル」に泊まって初めて感じられた滞在の魅力でした。
ぜひ、奈良公園の一角に泊まり、奈良の美味しさや美しさをたくさん発見する旅を楽しんでみてはいかがでしょうか?
📍奈良ホテル
実は、この滞在では本館1階の「ティーラウンジ」でのコーヒーも楽しみました。窓の外に鹿の親子をお散歩を眺める、貴重な瞬間も。ぜひこちらの記事もチェックしてみてください。
【奈良公園カフェ】鹿の散歩が見える『奈良ホテル』ティーラウンジ

この記事では、ホテルライター・トラベルライターの【岩井なな】が、国内外のホテル&お出かけスポットを現地からレポートしていきます!
Instagramのリール動画では、より雰囲気が伝わるかたちで紹介しているので、ぜひお楽しみください♡

岩井 なな(いわい なな)
年間100以上の宿泊施設を利用するホテルライター・ホテrジャーナリスト。Web・紙媒体問わず幅広く執筆。
東京⇄北陸(富山・金沢)の2拠点生活をする取材ライター・トラベルライターとしても活動する。

得意分野
ホテル
年間100以上のホテルを訪れるホテルライター/インフルエンサー。東京と北陸(富山・金沢)の2拠点生活を送りながら、全国各地を取材。インタビューと、スイーツを美味しそうに撮影することが得意。