フィギュアスケート

友野一希|浪速のエンターテイナーのプロフィールとプログラム解説【フィギュアスケート男子2025-2026】

2025.12.18

初出日:2019年10月1日

友野一希
Kazuki Tomono

友野一希のプロフィール写真

1998年5月15日生まれ、大阪府堺市出身の27歳。 趣味はサウナ、古着屋巡り、老舗ごはん屋巡り。直近の新しい趣味は読書。“浪速のエンターテイナー”の異名をもつ、表現力豊かなスケーター。

層の厚い日本男子の中で、地道に積み重ねてきた努力が開花した2021-22シーズンは、四大陸選手権2位、世界選手権では世界歴代6位の記録でショート3位につける大躍進。
2022-23シーズンは、全日本選手権で初の表彰台、自らの力で世界選手権出場を果たし、大舞台で自己ベストを更新。ステップは出場選手中1位の評価を獲得。
2023-24シーズンは、あえて自分の苦手とする部分を前面に出すプログラムを用意し、輝く個性+αの武器を求め加速度的に進化。
2024-25シーズンは、グランプリシリーズ前に右股関節を痛めるアクシデントやスランプを経験。ここで困難を乗り越えたことで、自信をもって勝負のオリンピックシーズンへ。競技者・友野一希としての完成形を目指す。

シニア1年目からこれまでの歩み

シニアデビューを果たした2017-2018シーズン

急遽出場で5位入賞!スケート人生を変えた運命の「世界選手権」

2018年世界選手権での友野一希
2017-2018シーズンのショートは「ツィゴイネルワイゼン」

ジュニアグランプリシリーズデビューまで足掛け4年と、苦労もあったジュニア時代を経て、19歳でついにシニアデビュー。
オリンピックイヤーでもあった2017-2018シーズンは、11月に繰り上がりでグランプリシリーズNHK杯に初出場、12月の全日本選手権では自己最高位の4位に入った。

2018年世界選手権で涙する友野一希

そして3月、イタリア・ミラノで開催された世界選手権に、またしても補欠から繰り上がり出場。
ショートで24位以内に入れば翌シーズンのグランプリシリーズ出場枠を自身で獲得することができると、スケート人生をかけて挑んだショート。自ら課した大きなプレッシャーに打ち勝ち、見事11位。演技後は、恐怖から解放された安堵感から涙がこぼれた。

2018年世界選手権で5位入賞した友野一希
2017-2018シーズンのショートは『ウエスト・サイド・ストーリー』

「失うものは何もない」と向かったフリーでは、自己ベストを20点近く更新する堂々たる演技で3位に。総合で5位入賞を果たし、翌シーズンの世界選手権日本男子出場枠「3」獲得に大きく貢献。
さらにグランプリシリーズ出場どころか、2戦出場をつかみ取り、晴れて日本の特別強化選手に。自らのスケート人生をその手で変えてみせた瞬間だった。

強くなると誓った2018-2019シーズン

2018-2019シーズンのショート『ニュー・シネマ・パラダイス』を披露する友野一希
2018-2019シーズンのショート『ニュー・シネマ・パラダイス』

シニアの第一線で活躍するスケーターとして迎えた2018-2019シーズン。
グランプリシリーズ2戦目ロステレコム杯では、シリーズ初の表彰台に。
全日本選手権では4位とわずかに表彰台に届かず、2年連続の世界選手権出場とはならなかった。

初出場の四大陸選手権では、ジャンプのミスが重なり12位に。本来の力を発揮できなかった悔しさに涙しながらも「どれだけ苦しんでもいつかトップで輝けるように、必ず強くなって戻ってきます」と、覚悟をにじませた。

2018-2019シーズンのフリー『リバーダンス』を披露する友野一希
2018-2019シーズンの友野一希選手のフリー『リバーダンス』

長いトンネルから抜け出した2019-2020シーズン

2019-2020シーズンのショート「The Hardest Button to Button」

シニア3年目となった2019-2020シーズンは、新たに4回転トーループを投入。
ショートは、コンテンポラリーダンスを取り入れた意欲作「The Hardest Button to Button」。日本屈指のエンターテイナーとしての真価が試される、難易度の高いプログラムに挑戦することとなった。
一方フリーは、フィギュアスケートの定番曲として名高い、映画『ムーラン・ルージュ』。静と動の緩急に富んだ構成、かつタイトな赤と黒の衣装にオールバックのヘアスタイルを合わせ、大人の魅力が詰まったプログラムで新シーズンに挑んだ。

友野一希の2019-2020シーズンのフリー「ムーランルージュ」の衣装
2019-2020シーズンのフリー「ムーランルージュ」

10月に開幕したグランプリシリーズは初戦のスケートアメリカに出場。ショートでは4回転ジャンプに苦戦し8位スタートとなったが、フリー冒頭の4回転+3回転の連続トーループジャンプでは、初戦のサマーカップを超える、3点近い加点がつく出来栄えで着氷。
その後ジャンプの乱れはあったが、スピンステップではすべてレベル4を獲得。最後まで情熱的な滑りで総合5位に。エキシビションでもショーマンシップを発揮し、アメリカの観客の心を掴んだ。

2戦目ロステレコム杯では8位と、2年連続の表彰台とはならなかったものの、ショート、フリーともにシーズンベストを更新し、着実な成長を残した。

全日本選手権 フリーで猛追、自己ベスト更新

全日本選手権に向けて徐々に調子を上げ、迎えた本番。
ショートではジャンプがなかなか決まらず、まさかの11位と大きく出遅れてしまうが、このまま引き下がるはずがないのが友野選手。
2日後のフリー。精悍な顔つきでリンクの中央に立つと、冒頭の4回転+3回転の連続トーループジャンプ、4回転サルコーを鮮やかに着氷。そのままほとんどのジャンプを加点がつく出来栄えで次々と成功させ、勢いに乗る。
見せ場であるコレオシークエンスでは、これまでの思いや努力をぶつけるような力強い滑りを披露。燃え盛る炎を背負っているかのようにリンクを駆け抜け、渾身のフィニッシュで、会場は歓喜に包まれた。

全日本選手権フリー後のキス&クライに座る友野一希さんとミーシャ・ジーさん
全日本選手権フリー後のキス&クライ。お隣はミーシャ・ジーさん

得点は国際スケート連盟(ISU)非公認記録ながら、自己ベストを大幅に更新する171.63点で4位に。総合では6位に入り、ショート11位から一気に追い上げを見せた。
すべてを出し切りしばらく涙が止まらない友野選手に、幼少期から師事する平池大人コーチと、振付だけでなく精神的な支えにもなっているであろうミーシャ・ジーさんが温かく寄り添った。

四大陸選手権に繰り上がり出場
ショート、フリー、合計で自己ベスト更新

年が明けてもインカレに国体と、休む暇なく試合に出場。
2月には宇野昌磨選手の辞退により、ソウルでの四大陸選手権への繰り上がり出場が決定。前シーズンの同大会での雪辱を果たす、絶好の機会が巡ってきた。

是が非でも成功させたいショートは、「The Hardest Button to Button」。訳は“最もかけにくいボタン”。
冒頭の4回転+3回転の連続トーループを成功させ勢いに乗ると、そのまますべてのジャンプを加点がつく出来栄えで着氷。体を大きく使った大胆な動きで躍動し、演技後にはガッツポーズ。ここにきて複雑な振付を完全にものにし、得点は自己ベストの88.22点。唯一無二の表現力を世界に見せつけた。

フリーではすべてのジャンプ成功とはいかなかったが、4回転ジャンプ3本にチャレンジする攻めの姿勢で、162.83点をマーク。トータルは251.05点と自己ベストを更新し、権威のあるISUチャンピオンシップの一つである四大陸選手権で存在感を十分にアピールした。

ほぼノーミスの演技をしたがショート7位、総合でも同順位と、非常にレベルの高い大会となった四大陸選手権。
実力を出し切り、シーズンを通して肉体的にも精神的にも一回りも二回りも強くなったが、友野選手が目指すのは、出場全試合でのメダル獲得。
北京オリンピックまで約2年。大舞台を夢見てさらなる進化を誓った。

前だけを向き、挑み続けた2020-2021シーズン

2020-2021シーズンは「ムーランルージュ」を継続した友野一希
2020-2021シーズンのフリーは「ムーランルージュ」を継続

コロナ禍のシーズン。グランプリシリーズで2位

新型コロナウイルス感染拡大の影響で氷上練習ができない間も体力の強化に励み、幕を開けた2020-2021シーズン。プログラムはショート、フリーともに継続で、ショートで2本、フリーで3本の4回転ジャンプを予定していた。

自国の選手を中心に、異例の形式で開催されることとなったグランプリシリーズは、NHK杯に出場。
ショートでは冒頭の4回転トーループからの連続ジャンプで着氷が乱れたものの、ミスを引きずることなく残り2本のジャンプは加点がつく出来栄えできっちり着氷。2位という好位置でスタートを切った。

逆転を目指したフリーでは、4回転サルコーからの連続ジャンプに成功。しかしその他では乱れるジャンプが続き、悔しさが残る演技となった。
それでも2シーズン目で凄みを増したロクサーヌのタンゴは、圧巻としか言いようがない大迫力。ラストのコレオシークエンスには多くのジャッジが最高評価をつけた。

フリーの結果は3位で、総合は2位。惜しくも表彰台の真ん中とはならず、全日本選手権でのリベンジを誓った。

全日本選手権「絶対に諦めへん」壁を打ち破る決意

そしていよいよ全日本選手権が開幕。
国内の有力選手が一堂に会し、ただでさえ独特の張りつめた空気があるというこの大会。このシーズンはパンデミックの影響から、本大会が初戦となる選手も多く、より一層緊張感が高まる中、開催された。
ショートでは2本目のジャンプ、4回転サルコーで転倒、しかし最後のトリプルアクセルは華麗に決め、7位で折り返した。
勝負を決めるフリーでは、冒頭からジャンプがなかなか決まらない場面が続く。しかし2シーズンしっかり滑り込んできたプログラム。最大風速でリンクを駆け巡る猛然たるコレオシークエンスで会場を魅了。心震わせる熱い滑りで演技を締めくくった。

結果は、フリーが8位で総合は6位。
ここに来るまでに、これ以上ないというほどの練習を積んできたという友野選手。それだけに練習の成果を出し切れなかった悔しさは計り知れない。

だが得点を待つキスアンドクライでは、その気持ちを隠して懸命に笑顔を見せ、「絶対に諦めへん」という言葉も飛び出し、来るオリンピックシーズンに向けての成長を決意した。

自らの力で切り拓いた2021-2022オリンピックシーズン

2021-2022シーズンのショート『ニュー・シネマ・パラダイス』を演技する友野一希
2021-2022シーズンのショート『ニュー・シネマ・パラダイス』

大学を卒業し、スケートに専念。グランプリシリーズで3年ぶりの表彰台

学業と競技、どちらにも情熱を注ぎ、4年間自宅とリンクと大学を往復するハードな生活を送ってきた友野選手。春に大学を卒業し時間ができたことで、スケーティングの原点に立ち返り、基礎を丹念に磨く日々がスタートした。

初戦のサマーカップ以降、試合を重ねることでプログラムを体になじませ、いざグランプリシリーズに参戦。
1戦目イタリア杯。ショートは6位発進。フリーは前半で4回転ジャンプをすべて完璧に決める素晴らしいスタートを切ったが、後半ではスピンや得意のトリプルアクセルでミスがあり、総合6位。

2戦目は、3年前グランプリシリーズ初のメダルを獲得した縁起のよいロステレコム杯。
ショートではすべてのジャンプに加点がつくノーミスの演技を披露。2020年の四大陸選手権で出した自己ベスト88.22点を大きく上回る95.81点で堂々の首位に。
最終滑走で登場したフリーは、冒頭の4回転トーループ+3回転トーループのコンビネーションを見事に成功させるも、4回転サルコーは回転不足に。しかしその後はゴージャスな4回転トーループでロシアの観客を魅了。後半はジャンプが乱れたが、スピン、ステップでは最高のレベル4を獲得し、フリーも168.38点と自己ベストを更新。トータル264.19点で3位と、この地で再びメダルを手にした。

グランプリシリーズで表彰台に上るのは3年ぶり。さらにショート、フリー、合計すべてで自己ベスト更新と、覚醒の兆しを感じさせる大会となった。

全日本選手権
観客を総立ちにさせた『ラ・ラ・ランド』

2021-2022シーズンのフリー『ラ・ラ・ランド』を演技する友野一希
2021-2022シーズンのフリー『ラ・ラ・ランド』

北京オリンピックの最終選考会を兼ねた全日本選手権。
集中力を欠いたと言うショートでは、4回転サルコーの着氷が乱れる場面もあり、7位スタート。
逆転を狙うフリー。ピアノの調べにのせてしっとりと滑り始めると、前半4つのジャンプをすべて加点つきで成功。途中ジャンプのミスもあったが、リカバリーする冷静さも見せ、そのまま最高のコレオシークエンスへ。ありったけの思いを込め、誰よりもこの瞬間を楽しみ滑る姿に会場も共鳴し、拍手の音がどんどん大きくなる。
両手を力強く突き上げフィニッシュを決めると、観客からはスタンディングオベーション。
得点はISU非公認ながら、自己ベストを上回る175.88点で5位。トータルでも5位と、ショートから順位を上げた。

チャンピオンシップ初表彰台
四大陸選手権銀メダル

2022年四大陸選手権で銀メダル獲得の友野一希
2022年四大陸選手権でついに銀メダル獲得。大きな肩書が加わった

惜しくもオリンピック、世界選手権代表とはならなかったが、3大会連続となる四大陸選手権代表に選出。優勝を目指し、タリンの地に降り立った。

この大会に向け地道に練習してきた成果が実を結び、ショートではノーミスの演技を披露。2シーズン目となる『ニュー・シネマ・パラダイス』の世界を見事に紡ぎ、得点は自己ベスト更新の97.10点と、いよいよ100点の大台が見えてきた。

2位で迎えたフリー。前半の4回転トーループで転倒するも、すぐに切り替え、その後はすべてのジャンプをクリーンに成功。ショート、フリー、トータルで自己ベストを更新し、見事2位に。“史上最高の自分”を見せ、ついにISUチャンピオンシップ初のメダルを獲得。
しかし銀メダルという華々しい結果にも、本人は金メダルに届かなかった悔しさを滲ませていた。

3月。いよいよシーズン終盤戦となるプランタン杯へ。
ジャンプが乱れるも、ショート、フリーともに4回転トーループからのコンビネーションジャンプは見事決め、優勝。国際大会初となる金メダルに輝いた。

“代打”で2度目の世界選手権へ
ショートでついに100点超え

2022年世界選手権に急遽代打出場した友野一希
羽生結弦選手、三浦佳生選手の欠場により急遽出場が決定し、プランタン杯からそのまま世界選手権へ。運命に導かれるようにして辿り着いた2度目の大舞台。着実に積み上げてきた練習と自分を信じて、演技へと向かう

三浦佳生選手の欠場による世界選手権出場の知らせが飛び込んできたのは、ちょうどプランタン杯出場のため、ルクセンブルクに向かう道中。大会開幕までわずか1週間という時のことだった。

世界選手権出場は2018年大会以来、実に4年ぶり。前戦の疲れも残る中、再び巡ってきたチャンスで再び“史上最高の自分”を更新すべく、覚悟を決めた。

「1回目の世界選手権は、何もわからないまま。でも今回は何も怖くなかった」と語ったショート。
万感の思いでリンクに立つと、“愛のテーマ”が流れ始める。そのままこれまで歩んできた道のりを思い返すかのように彼方を見つめ、心地よい余韻が残るなか演技がスタート。
冒頭のコンビネーションジャンプを3点以上の加点がつく出来栄えで成功させると、そのまま音楽と溶け合うような美しい滑りで魅了し、次々とジャンプを着氷。
ノーミスでフィニッシュを決めると、思いを噛みしめるように力強く拳を握り、ガッツポーズ。
2シーズン磨き上げてきた自分だけの『ニュー・シネマ・パラダイス』。この大きな舞台で見事な集大成を見せた。

得点は目標にしていた“101点”を超える101.12点で3位に。“代打”での急遽出場から、世界歴代6位のハイスコアをたたき出した。

コレオシークエンスでは、出場選手の中でトップの加点を獲得した友野一希
2022年世界選手権。代名詞のコレオシークエンスでは、出場選手の中でトップの加点を獲得

フリーではジャンプのミスがあったが、代名詞の一つであるコレオシークエンスでは会場を大いにわかせ、出場選手中トップの加点を獲得。得点は168.25点で8位。

結果は6位入賞。メダル獲得とはならなかったが、4年前とは一回りも二回りも成長した姿を見せ、ここから再び始まる4年間に向け、新たなステージへの扉を開いた大会となった。

世界選手権に向かって突き進んだ2022-2023シーズン

2018年の世界選手権はフリー3位、そして2022年はショートで3位と、それぞれスモールメダルを獲得するも、まだ大きなメダルを手にしていない友野選手にとって、このシーズンの目標は、正式な代表選手として世界選手権に出場し、表彰台に上ること。
「トップへ」をスローガンに掲げ、自分と向き合い自分だけの武器を磨いていく日々が始まった。

2022年ドリーム・オン・アイスでショート「Happy Jazz」を初披露した友野一希。こちらは旧衣装。
2022年ドリーム・オン・アイスでショート「Happy Jazz」初披露。こちらは旧衣装。

オフシーズンはアイスショーに精力的に出演。合間にアメリカでの振付や合宿と、かつてないほど忙しい、充実した日々。特に憧れのクリケットクラブでは、ジャンプからスピン、ステップとあらゆる技術をレクチャーしてもらうなど、基礎に立ち返って練習に励んだ。

げんさんサマーカップ、ネーベルホルン杯

初戦は毎年恒例となったげんさんサマーカップ。
直前までアイスショーと合宿に奔走し、ほとんど通し練習ができなかったことに加え、大会5日前に靴を戻すなど、万全とはいえない状態での出場となった。
結果は2位と惜しくも優勝を逃したが、調子を落としていたトーループも復調の兆しを見せ、収穫の多い大会に。特にこの後のグランプリシリーズ2戦で共に戦う山本草太選手の優勝を勝ち取った演技が、大きな刺激となったという。

LAでのジーさんとブラッシュアップを終え、9月後半には、チャレンジャーシリーズのネーベルホルン杯に出場。ジャンプがふるわず、ショートは11位発進。フリー3位で一気に巻き返すも、4位と惜しくも表彰台とはならず。

大会前、結果を求めすぎる余り、満足できないまま練習を終える日々が続いていたという友野選手。点数や順位にとらわれすぎず、己に集中することこそが今の自分に必要なことだと気づきを得た大会となった。

近畿選手権優勝。シーズン序盤、自分を縛っていた負のイメージから脱却

気持ちを切り替えるべく、いつも以上に練習に打ち込み迎えた近畿選手権。
前戦からの嫌なイメージが残ったままだったというショートでは、4回転ジャンプがなかなかはまらず2位発進。

ショートでの自分の表情を見て、「自分はやっぱり笑ってないと」と気持ちを切り替え、自然体で臨んだフリーでは、着氷が乱れるものもあったが、すべてのジャンプを着氷。168.56点で、見事逆転優勝を決めた。

負のイメージに囚われ、自分を見失いそうになっていた状態から無事抜け出し、試合との向き合い方を思い出すことができた近畿選手権。自分に打ち勝ち、いよいよグランプリシリーズでの戦いの準備が整った。

フランス杯銅メダル。グランプリシリーズ初戦で初の表彰台

2022年グランプリシリーズフランス杯。2022-2023シーズンフリーは『こうもり序曲』
2022年グランプリシリーズフランス杯。2022-2023シーズンフリーは『こうもり序曲』

いよいよグランプリシリーズへ。
前を向き直し自分らしさを取り戻して以降、失敗をしてもいいと思えるくらいの練習を積んできた。

1戦目はフランス大会。
ショートは冒頭の4回転トーループの着氷が乱れるも、残り2本のジャンプは加点がつく出来栄えで、2位発進。スピン、ステップでも最高評価のレベル4をそろえた。

当日の練習からあまりジャンプの調子がよくなかったというフリーではやはりミスが出てしまうも、得意のステップや演技構成点で得点を稼ぎ、合計では3位表彰台。ジャンプのミスがあっても演技構成点で評価されたことが大きな自信につながった。
さらにグランプリシリーズ初戦でのメダル獲得は初と、例年に比べて仕上がりの早さを感じさせる大会に。

悔しさは残ったが、ポジティブな気持ちで終えたフランス杯。エンターテイナーとして気合が入るエキシビションでは、足が動かなくなるくらいに命を削った伝説的なパフォーマンスを披露。力尽きるくらいがロックだ、と浪速のロック魂を見せ、会場を盛り上げ帰国した。

「弱さではなく、これからは自分の強さに目を向ける」転換期となったNHK杯

2022年NHK杯での友野一希
2022年NHK杯

2戦目はNHK杯。出場選手12人のうち6人は1戦目でのメダルの獲得者と、激戦が予想されたこの大会。

ショートでは冒頭のコンビネーションジャンプに成功。4回転トーループにきっちり3回転を付け、加点も獲得。しかし、このジャンプに意識がいく余り、普段の練習ではトーループよりも調子のよかった4回転サルコーで転倒。4位で折り返すこととなった。

翌日のフリー。ショートに続き冒頭の4回転トーループ―3回転トーループを美しく着氷。続く2本の4回転でミスが出るも、引きずることなくその後のジャンプはすべて成功。滑りでも表情でも魅せるステップシークエンスや、優雅なコレオシークエンスで、会場の拍手を誘い、プログラムの世界観を存分に伝えてのフィニッシュ。合計251.83点で、シーズンベストを記録した。

2022年NHK杯フリーで会場をわかせた友野一希
フリーでも大いに会場をわかせた

結果は4位と、フランス杯に続いてのメダル獲得とはならなかったが、まっすぐ前を見据える瞳には、芽生えた自信と燃える決意が見てとれた。

その精悍な顔つきの背景にあったのは、ショート終了後に偶然目にした自分の演技に対するポジティブなツイート。それを見たことで、これまで自分の弱さばかりに目を向けていたことに気づき、これからは自分の強さに向き合う覚悟ができたという。
心の奥底でずっとくすぶっていた不安を取り払い、初めて自分を信じきって滑ることができた日。「僕はやれば戦える」。目の前に広がっていた霧が晴れ、自分の成長のために必要なことがクリアになった大会となった。

10回目の全日本選手権で初の表彰台。自らの力で世界選手権代表に

2022年全日本選手権での友野一希
2022年全日本選手権

このシーズンの目標を世界選手権とする友野選手にとって、一番の正念場となる全日本選手権が開幕。10年連続10回目の出場。会場は地元大阪。舞台は整った。

キスアンドクライのボードに記した言葉は「脱!代打!」。繰り上がりではなく、正選手として世界選手権出場へ。自分の手で代表をつかみ取る、強い決意を込めた言葉だった。

2022年全日本選手権ショート終了後の友野一希
2022年全日本選手権

開会式では選手宣誓も務め、迎えたショート。
予定していたコンビネーションジャンプで大きく転倒するも、続く4回転サルコーにトーループを付けることに成功。“毎日本番”だと思ってやってきた練習が実を結び、この独特の緊張感の中でも冷静なリカバリーを見せた。そのまま集中を途切れさせることなく、得意のトリプルアクセルは音楽に合わせた完璧な着氷。得点は85.43点で4位と、メダルを射程圏内に捉えた。

グランプリシリーズ以降、重点的に練習してきたフリー。「上野芝スケートクラブ」の名がコールされ、リンクの中央に立つ。あとは“自分のやってきたことをやりきるだけ”。

冒頭の4回転トーループ―3回転トーループは見事成功。2本目はこの大会から順番を変更した4回転トーループ。惜しくも2回転となり、3本目の4回転サルコーは着氷が乱れたが、そこからは音楽を体いっぱいに感じながら、この時間を心の底から楽しむような表情で滑り上げる。観客の手拍子とともに晴れやかな表情でクライマックスへ。右手を高く上げフィニッシュポーズを決めると、客席は歓喜に包まれた。
得点は165.41点で、合計では250.84点で順位は3位。10回目の出場でついに悲願のメダル獲得。有言実行、世界選手権代表の切符をその手でつかみ取ってみせた。

2022年全日本選手権表彰式での友野一希、平池コーチ、ミーシャ・ジーさん
全日本選手権表彰式で平池大人コーチ、ミーシャ・ジーさんらと記念写真

「最後にメダルにつながったのは、今までの経験」そう語った友野選手。絶対に諦めることなく、どんなペースでも成長を続けることが大事と自分に言い聞かせ、一歩一歩進んできたこの10年間。首に掛けたメダルが何よりその正しさを証明していた。

世界選手権に向け、国内で最終調整

年が明け、1月。全日本選手権の余韻に浸ることなく、その目はすでに世界選手権を見据え、歩みを進めていた。

仲間を全力で応援し、引退するスケーターを笑顔で送り出した国体。ショートは首位発進だったが、フリーでは冒頭のジャンプのミスを引きずってしまい、7位で総合4位。最近はノーミスのための練習に力を入れていたということで、ミスをした時どう対処していくかについても考えるきっかけとなった。

2月に入り、世界選手権に向けた最終調整へ。
2週目には全大阪選手権の試技会でフリーを確認。4回転ジャンプ3本を着氷させ、190点を狙える得点をマーク。
そしてその2週間後には、スケートヒロシマに出場。ショートではシーズン初の90点超え。初優勝を果たし、ミスがある中でも得点の基準が上がっていることを再確認。無観客ではあったが、関係者の方からの温かい声援も大きな力となった。

世界選手権まであと1か月。2014年、さいたまスーパーアリーナで開催された世界選手権での町田樹さんの演技に感化されたという友野選手。その町田さんがかつて練習していた場所で、いいイメージで世界選手権前最後の大会を終えることができた。

「自分は戦える」確信した3度目の世界選手権

2023年世界選手権での友野一希の背中
2023年世界選手権開幕

ついに幕を開けた3度目の世界選手権。
目標はショートで100点、フリーで190点の合計290点。ここに到達することができれば違う景色が見えるはずだと信じ、これ以上ないくらいの練習を積んできた。
“世界選手権での自分は最強”。過去2回急遽の代打出場でも自己ベストを出した経験も大きな自信となった。

さらに大会に間に合うよう製作したこだわりのバナータオルも後押しに。大好きな赤に「TOMONO」のロゴが斜めに入った勢いを感じさせるデザイン。オンラインサイトでの初回販売分は即完売。再販に加え、当日の会場販売も品切れとなるほど、誰もが応援を届けたいという気持ちでいっぱいだった。このバナーがあの大きな会場を埋め尽くす光景を想像しながら、気持ちを一つに、本番のショートを迎えた。

2023年世界選手権ショートでの友野一希
2023年世界選手権ショート

この場を楽しみ尽くしてやるといった気概が見える、強気の表情でリンクの中央へ。
4回転トーループ―3回転トーループは3.26点の加点がつく出来栄えで完璧に着氷。客席からは揺れるような歓声が上がった。このシーズンの鬼門だった2本目の4回転ジャンプは激しく転倒し体を大きく打ち付けるも、すぐに立ち上がり、先程のミスなどなかったかのようなはつらつとした表情で次の要素へ。
鮮やかなトリプルアクセルで、再び観客の心を掴むと、伝家の宝刀のステップシークエンス。キレ味抜群の爆速ステップは9人中7人のジャッジが満点をつけ、出場選手中1位の評価に。世界に誇るステップで演技を締めくくると、会場はスタンディングオベーション。赤く染まった客席を万感の表情で見渡した。
転倒があった中でも、シーズンベストの92.68点を記録。7位でフリーを迎えることとなった。

昨年の演技のリベンジを果たすべく、臨んだフリー。
ショートを超えるとてつもない緊張感の中、バナーを手に声援を送るたくさんの観客に見守られながら、演技が始まる。
4回転トーループからのコンビネーションジャンプはきっちり着氷。2本目の4回転ジャンプは惜しくも転倒したが、続く4回転サルコーは3.33点という高い加点のつく質の高いジャンプを披露。
スローパートのステップシークエンスでは、一時振付が飛んでしまったというも、作り出した世界観と思いを一人一人に届けるように丁寧にステップを踏んでいく。
クライマックスへと向かうコレオシークエンスは、加速していく友野選手の滑りと、どんどん大きくなる観客の手拍子がかけ合わさり、まるでここが世界の中心になったかのような圧倒的エネルギーで満ちていた。勢いよくフィニッシュを決めると、観客ははじかれたように立ち上がり、世界のエンターテイナーに拍手喝采を送った。

バナーと日の丸が真っ赤に揺れる光景をしっかり目に焼き付けると、心から幸せそうな表情で、平池大人コーチの待つキスアンドクライへ。 
悔しさはあれど、「やりきった」と充足感を浮かべ得点を待つ。結果は自己ベストを9点近く更新する180.73点。ショートと合わせた合計は273.41点で、こちらも自己ベストを14点以上更新するハイスコアを記録。隣に座る平池コーチと固い握手を交わした。

目標としていた合計得点までは、ほぼ転倒したジャンプ2つ分。ノーミスの演技をすれば、見たかった新しい景色に確実に手が届く。
一歩一歩確実に成長できていることを実感し、自信を深めた友野選手。「来年も(必ず成長する)」と、誓いを立て、3度目の世界選手権を終えた。

2018年、2022年に続き、またしても世界選手権で自己ベストを更新し、“世界選手権での自分は最強”説を証明。6位入賞を果たし、翌年の世界選手権の日本男子出場枠「3」の確保に貢献した。

シーズン最終戦、国別対抗戦

2023年国別対抗戦に出場した友野一希
2023年国別対抗戦初出場

世界選手権が終わると休む間もなく、アイスショーで日本各地を飛び回り、そのままシーズン最終戦となる国別対抗戦へ。
国別対抗戦は、世界ランキング上位6か国が出場し、男子シングル、女子シングル、ペア、アイスダンスという4種目の総合成績で争う団体戦。2年に一回の開催で、この大会が初出場となった。

しかし直前までアイスショーに出演し競技練習の時間を十分に確保できなかったこともあり、安定していたフリー後半のジャンプにミスが続き、悔しさの残る結果に。チームジャパンとしては銅メダルに輝いた。

例年以上に長く濃密だったシーズンがついに幕を閉じた。
世界選手権という一つの目標に向かって走り続けた2022-23シーズン。世界選手権の大きなメダルまではあと少し。自分の進むべき道が明確になった実りあるシーズンとなった。

挑戦のプログラムを通してネクストステージが見えた2023-24シーズン

真夏のアイスショー界を席巻!

「ファンタジー・オン・アイス」で「紡 -TSUMUGI-」を滑る友野一希
「ファンタジー・オン・アイス」で披露した「紡 -TSUMUGI-」。完成されたスケーターを目指し、表現の幅を広げていく

このオフシーズンも、ありとあらゆるアイスショーに引っ張りだこ。
それぞれのショーのテーマに合わせて新たな演目を用意する引き出しの多さは、まさに“氷上のエンターテイナー”そのものだ。
中でも大きな挑戦となったのが、テレビアニメ『ワンピース』のコーザ役を演じた「ワンピース・オン・アイス」。役を演じるという初めての経験は、怒り、憎しみ、葛藤といった、これまでの競技プログラムではなかなか表に出すことのなかった感情を引き出し、表現者・友野一希としての可能性を大きく押し広げた。

自分らしさを封印。プログラムを通して、成長するための1年に

競技の面でも心機一転、新たな挑戦を求めて、カナダの名振付師ジェフリー・バトルさんに振付を依頼。トリノオリンピック銅メダリストという経歴をもつバトルさんは、現在は友野選手にとってのレジェンド世代を象徴するスケーターで、ノービスの頃にアイスショーでその滑りを見て強い衝撃を受けた存在。そんな憧れの存在との夢のタッグで、スケーティングで魅せるプログラムを制作。

一方フリーでは、これまで自分の苦手としていた領域に正面から向き合うプログラムを選択。信頼するミーシャ・ジーさん振付のもと、ピアノの断続的で静かな旋律が特徴の「Halston」を選択。過去に実績のある“らしさ全開”の路線ではない、あえて真逆のアプローチ。競技者として成長するために、スコアにとらわれることなく、自分の求める表現とスケートを貫く道を選んだ。

国際大会初戦でハイスコアを記録

ネーベルホルン杯表彰式での友野一希
ネーベルホルン杯表彰式

シーズンの目標は、すべての大会で表彰台に上ること。
国際大会初戦となった9月下旬のネーベルホルン杯では、ショートで93.55点と、いきなり昨季の最高得点超え。フリーでも4回転を2本決め、ステップ、スピンもすべてレベル4を揃えるなど、シーズン序盤とは思えない演技を披露。見事銀メダルを獲得し、世界ランキングは自己最高の6位に。

その勢いのまま、3地域対抗戦形式では初出場となるジャパンオープンへ。
ネーベルホルン杯でパンクしてしまった4回転サルコーを、ここではきっちり回り切り、表現にも力を込めた演技を披露。得点は非公認ながら177.72点。世界選手権の記憶が鮮やかによみがえるさいたまスーパーアリーナで、その時の自己ベスト180.73点に肉薄するハイスコアを記録。チームジャパンの優勝に大きく貢献した。

幸先のいいシーズンの幕開けとなったが、この華々しい成績にも舞い上がることなく、今の状況を冷静に分析。「淡々と、一歩一歩」をシーズンのテーマに掲げ、理想のスケーターへと近づくための地に足の着いた1年が、本格的に走り出した。

グランプリシリーズ開幕

2023-24シーズングランプリシリーズで「Underground」を滑る友野一希

ファイナル初進出を狙うグランプリシリーズは、スケートカナダと中国杯。
初戦のカナダでは、冒頭のコンビネーションジャンプで4回転トーループの着氷が乱れ、単独に。それでも続く4回転サルコーにトーループをつけてミスを最小限に抑え、3位発進。
さらに上を狙ったフリーだったが、4回転ジャンプがなかなかクリーンに決まらず、メダルまであとわずかの総合4位という悔しい結果に。寝付けないほどの悔しさはすべて練習にぶつけ、2戦目の中国杯へ。

2023-24シーズングランプリシリーズで「Halston」を滑る友野一希

中国杯では、カナダで苦戦していた4回転トーループをしっかり立て直し、ショートの冒頭で4回転トーループからのコンビネーションジャンプを成功。ただ、続く4回転サルコーでは転倒し、得意のトリプルアクセルでも手をついてしまい、6位からのスタートとなった。

フリーでは、4回転トーループを高い加点のつく出来栄えで着氷。その後の4回転サルコーが2回転になる場面や、着氷が乱れるところもあったものの、カナダ大会からしっかり復調し、171.45点で4位。総合順位も4位に食い込み、「やっと自分の演技ができた」と、シーズン後半に向け、手応えを感じた試合に。

2戦をそれぞれ4位で終え、ファイナル出場は叶わなかったものの、「いつも崖っぷちで戦ってきたので、それくらいのほうが頑張るだろう。この状況もポジティブに変えて、伸び伸びやっていきたい」と、来る全日本選手権に照準を向けた。

2023-24シーズンのエキシビションを滑る友野一希とゲストの山本草太
競技後のエキシビションでは、宇野昌磨さん、山本草太選手ら豪華ゲストと共演し、“エキシ番長”としての存在感を存分に示して見せた

ベストがぶつかった全日本選手権で見えた現在地

2023-24シーズンの全日本選手権での友野一希

いよいよ国内最高峰の大会、全日本選手権が開幕。会場の長野・ビッグハットは友野選手にとって、最初にトリプルアクセルを降りた記念すべき場所。ただ、これまで思うような演技はなかなか披露できておらず、今回はその記憶を塗り替えるべく気持ちを新たに長野へ乗り込んだ。

2023-24シーズンの全日本選手権ショートプログラムでの友野一希

ショートでは、4回転トーループ―2回転トーループをきっちり成功させた一方、現地に来てから一度もミスしていなかったという4回転サルコーは、着氷が乱れる場面も。しかしラストのトリプルアクセルは軽やかに成功、会場を惹きつけた。
見せ場の一つであるステップシークエンスでは、全日本選手権特有の張り詰めた空気を、晴れやかな高揚感と幸福な浮遊感へと塗り替えるように滑り上げた。順位は6位。最終グループの1番滑走でフリーを迎えることになった。

2023-24シーズンの全日本選手権フリープログラムの友野一希

直前までミーシャ・ジーさんとブラッシュアップを重ねてきた渾身のフリープログラム「Halston」。冒頭の4回転トーループ―2回転トーループをクリーンに着氷、続く単独の4回転トーループでは手をついてしまうも、その後のジャンプはすべて加点のつく出来栄えで次々と成功。
ジャンプが決まるたびに、友野選手が作り出す世界の深淵へと足を踏み入れていくような圧倒的な没入感。ジャンプ、スピン、ステップが途切れることなくピアノの音色に溶け合い、まるでひとつの崇高な作品を観ているかのような4分間だった。
ラストのスピンに送られた観客の割れんばかりの拍手は、リンクに大粒の雨が降り出したようにも聞こえ、熱を帯びた空気がすっと下がり現実に戻っていくような錯覚さえ覚える、劇場的な演技となった。

この演技を皮切りに、残る5人の選手たちもベストパフォーマンスが続き、歴史に残る伝説的な試合となった2023年の全日本選手権。フリーの得点は184.64点と、非公式記録ながら自己ベストを更新するハイスコアを記録したのものの、フリーの順位は5位、僅差で総合6位となった。

世界選手権、四大陸選手権代表とはならなかったが、ここ一番の大会で自分の演技をやりきったことで、「今の立ち位置を知ることができた」と心に火がついた友野選手。
この経験を必要不可欠なものとして前向きに受け止め、約2年後のオリンピックに向け、より深く自分と向き合い、鍛錬を積む日々が始まった。

国スポでの逆転優勝、先輩の背中から受けた刺激

2024年初試合は、北海道・苫小牧で開催された国スポ(国民スポーツ大会)。
例年、全日本選手権のあとには持てる力を出し尽くした反動で体調を崩すことが多いという友野選手。この年はインフルエンザにかかり、年明けは回復に専念する日々となった。
その影響もあってか、ショートは思うように4回転が決まらず68.49点、6位から追いかける展開に。
翌日、「強くて熱い自分を演じようと作り込んで臨んだ」というフリーでは、4回転トーループからの連続ジャンプに3回転をつけることに成功。演技後には珍しくガッツポーズも飛び出した。得点は184.14点と全日本選手権に迫る演技で巻き返し、見事逆転優勝を果たした。
個人だけでなく、団体でも大阪府が優勝。チームメイトで、大ベテランの織田信成さんの背中からも、多くの刺激を受けた。

「滑走屋」で得たもの

友野一希が滑走屋で得たもの

国スポを終えるやいなや、高橋大輔さんプロデュースのアイスショー「滑走屋」の準備へ。
プロスケーターと若手スケーターが織りなす群舞、ダークな世界観、そして氷上ではなく舞台でダンサーや演出家として活躍する鈴木ゆまさんが振付を手がけるなど、従来の枠にとらわれない新しい氷上エンターテインメントとして大きな話題を呼んだ。

そんな「滑走屋」で過ごした日々は、友野選手にとってまたとない刺激となった。なかでも、憧れの高橋さんのスケート、そして座長としての立ち居振る舞いを間近で見られたことは、かけがえのない学びに。
見る者を魅了する表現力は、競技での強さがあってこそ説得力を持つ。競技者としての凄みと表現力、その両輪がそろって初めて演技は際立つのだと実感し、自分に必要なのはまず競技で勝つことだと、改めて胸に刻む時間となった。

オリンピックを見据え、全力で挑む決意を固めた2024-25シーズン

ショーを通して競技に対する思いがうごめいたオフシーズン

このオフシーズンも、数多くのアイスショーに名を連ねた友野選手。
「京都フィギュアスケートフェスティバル」、「スターズ・オン・アイス」、「ファンタジー・オン・アイス」と舞台を渡り歩き、表現者としての引き出しをさらに広げた。
なかでも未知の領域へと踏み込んだのが、セリフや歌唱を伴う演出に挑んだ「氷艶 hyoen 2024 -十字星のキセキ-」。そこでの俳優やアーティストなど異なるジャンルのプロフェッショナルたちと一つの作品を作り上げた経験は、表現の可能性を実感する時間でもあり、「滑走屋」に続き、友野選手にとって一つの大きな転機となった。

とりわけ、高橋大輔さんや荒川静香さんといったオリンピアンの存在を間近で感じたことで、あの舞台に立つために必要なのは、目の前の一つ一つの大会で競技者として戦い抜く力だと痛感したという。
表現することの喜びに心を揺さぶられながらも、まずは競技で結果を積み重ねる。その原点に立ち返り、オリンピックまでスケートと本気で向き合う覚悟を新たにした、濃密なオフとなった。

基礎に立ち返ったことで、ジャンプが安定

コンパルソリーに励む友野一希

また練習面では、以前から自主的に取り組んでいたコンパルソリーを本格的にスタート。専門の指導のもとでスケートの原点に立ち返り、基礎を徹底的に磨いた。
その過程で意識に上ったのが、足元のわずかなブレ。それが長年課題としてきたトーループの不安定さにつながっていたことに気づいたという。
踏み込みの際、毎回同じ位置に乗ることを徹底したことで、ジャンプに高さが生まれ、課題だった安定感も向上。原因が明確になったことでジャンプに対する苦手意識も少しずつ薄れ、確かな手応えとともにシーズンイン。例年より早くオフに入り、腰を据えて基礎と向き合う時間を確保できたことも、こうした気づきと手応えにつながった。

目標はオリンピック。そのために競技者としてより高みへ

「目標はオリンピックでメダルを獲得すること。」
このシーズンから明確にオリンピックへの強い思いを口にするようになった友野選手。と同時に、「オリンピックまでの1年半、人生をかけてスケートに向き合い自分を変えてみせる」と、一つの区切りを設定することで自らを極限まで追い込む決意を語った。
自分を変えるための一手として、このシーズンはショート、フリーともに新たな振付師に制作を依頼。ショートをシェイリーン・ボーン、フリーをローリー・ニコル。いずれも名だたる世界的スケーターのプログラムを数多く生み出してきた、フィギュアスケート界を代表する振付師だ。憧れの二人と綿密にコミュニケーションを重ねながら、プロフェッショナルのエッセンスと自身のパーソナリティが融合した自信作が完成。
難度の高いプログラムではあるが、それが自分を押し上げてくれることは、前シーズンですでに実感を伴って証明されている。すべては真のトップスケーターになるために。殻を破り、羽を広げるシーズンが始まった。

ケガと共に迎えたグランプリシリーズ

8月頭の木下トロフィーから始まり、サマーカップ、全大阪Ⅱ選手権、近畿選手権と立て続けに国内試合に出場。この年はグランプリファイナル進出を目標に掲げ、例年よりも早い時期から追い込みをかけていた。
しかし、グランプリシリーズ初戦・フランス杯を3週間後に控えたある日、右股関節に痛みが。股関節の痛み自体はよくあることで、当初は数日で治まるだろうと考えていたというが、休養を取っても痛みは引かず、ほとんどジャンプ練習を積めないまま試合に臨むことに。

2024-25シーズンのグランプリシリーズの友野一希

平池コーチが心配そうな表情で見守る中、ぶっつけ本番の状態で迎えたショート。冒頭の4回転トーループは着氷が乱れ単独ジャンプとなったが、続く4回転サルコーに2回転トーループを付けて冷静にリカバリー。現地に来るまで痛くて跳べないほどだったというトリプルアクセルはしっかりと決め、83.45点で3位に。極限の状況でも演技をまとめあげる、ベテランならではの底力を見せつけた。

翌日のフリーでは、ケガによる練習不足の影響で前半のジャンプに苦戦。それでも終盤、得意のトリプルアクセルを決めて流れを立て直し、148.03点でフィニッシュ。結果は総合5位。万全とは言えない状況の中でできる限りの力を出し切り、次戦フィンランドへと歩みを進めた。

2024-25シーズンのグランプリシリーズフィンランド大会での友野一希

帰国後、わずか1週間で2戦目の舞台・ヘルシンキへ。
ショートでは、緊張感のある状況の中でもすべてのジャンプを加点のつく出来栄えで成功。アフリカンなリズムを自在に乗りこなし、“これぞカズキトモノ”というべき世界観を体現すると、今季自己最高となる90.78点をマークし、2位につけた。

フリーでは、冒頭の連続ジャンプ、単独ジャンプともに4回転トーループを美しい着氷で成功。しかし続く4回転サルコーは2回転となり、股関節を大きく使うアクセルジャンプでは2本ともにミスが出てしまう。それでも世界一にも輝いた経験もあるステップやスピンで魅了し、フィンランドの観衆を大いに沸かせてフィニッシュ。得点は147.63点、合計238.41点で6位となった。

地元大阪で12回目の全日本選手権

2024-25シーズンの全日本選手権での友野一希

グランプリシリーズを終えると、季節はあっという間に12月。
気がかりだった右股関節の痛みも順調に回復。ケガを経験したことで、調子がいい時も悪い時も、冷静に自分をコントロールする重要性をあらためて実感した。
そこでシーズン中盤からは、練習内容や時間配分、回数までを可視化し、スケジュール管理の方法をアップデート。
不調時に迷いや焦りが入り込む余地をなくし、好調な時もやりすぎを防ぐための“仕組み”を整えた。
環境を整えることで、常に淡々と目の前の課題に向き合える状態をつくり、練習のペースは安定。積み重ねてきた経験すべてを、確かな前進力へと変え、12年連続、12回目の全日本選手権の舞台へと向かった。

全日本選手権でショートプログラムを滑る友野一希

目指すのは表彰台の真ん中。大阪は、2022年の全日本選手権で初めて表彰台に上がった思い出深い場所。地元の声援を一身に受け、最終滑走でリンクの中央に立った。
張りつめた緊張感の中、“王者メンタル”を掲げることで自分をコントロールして臨んだというショートでは、4回転トーループに見事3回転トーループを付けてクリーンに着氷。会場の拍手を背に、4回転サルコーも鮮やかに決めてみせたが、ラストのトリプルアクセルで着氷が乱れ、出来栄えで減点に。スピンでもレベルの取りこぼしがあったりと完璧な演技とはならなかったが、89.72点で3位につけ、表彰台争いに名を連ねた。

2024-25シーズンの全日本選手権でフリープログラム「Buttefrly」を滑る友野一希

自信をもって臨んだフリーでは、前半の4回転ジャンプが決まらず、やや苦しい展開に。それでもスピン、ステップはすべてレベル4をそろえ、羽化を思わせる、内側から光がにじみ出るような柔らかで温かな世界観を氷上に描き出した。得点は144.23点。合計233.95点で総合5位に入り、四大陸選手権の代表に選出。目標としていた世界選手権代表とはならなかったが、前年はチャンピオンシップスへの派遣がなく悔しい思いをしただけに、この知らせは安堵をもたらした。

毎年、グランプリシリーズ前から一気にギアを上げ、全日本選手権の本番に照準を合わせてきた友野選手。しかしこの年はケガの影響もあり、そのタイミングがわずかにずれ、思い描いた形には届かなかった。
それでも、この経験がオリンピックシーズンの糧になると前を向き、2024年最終戦を終えた。

オリンピックシーズンへ進む力を得た四大陸選手権

2025年最初の試合となった国スポでは、過去最大ともいえるスランプに直面。
平池コーチの言葉をきっかけに少しずつ立て直し、復調の兆しとともに、3年ぶりの四大陸選手権へとたどり着いた。前回出場時にすでに銀メダルを獲得している友野選手にとって、目指すのは表彰台の真ん中。また、2020年に韓国で開催された四大陸選手権では、ショート、フリー、合計すべてで自己ベストを更新。ただ、ショートはノーミスの演技ながら90点に届かなかったことが心に残り、5年越しのリベンジを期して、再び同じ会場に乗り込んだ。

2024-25シーズンの四大陸選手権でショートプログラムを滑る友野一希

ショートでは、冒頭の4回転トーループ―3回転トーループを着氷するも、やや乱れがあり出来栄えで減点。続く4回転サルコーは2回転となり、規定要素を満たさず0点となってしまう。
それでも後半は代名詞のトリプルアクセルを確実に決め、体を大きく使った貫禄ある滑りで立て直す。79.84点をマークし、3位につけた。

2024-25シーズンの四大陸選手権でフリープログラム「Buttefrly」を滑る友野一希

勝負を決めるフリー。凛とした表情でリンクに立ち、このシーズン最後となる『Butterfly』のメロディと共に滑り出す。まずは高さのある4回転トーループに2回転トーループをつけて成功。しかし続く単独の4回転トーループが2回転となり、4回転サルコーも着氷が乱れてしまう。
しかし後半は立て直し、空気をはらむ軽やかなジャンプを重ねて、スピンステップはオールレベル4。友野選手の個性が光る印象的なムーブメントで会場をわかし、自身のスケート人生を重ねたフリープログラムを見事完遂。フィニッシュ後は、殻を破って飛び立った後のような晴れやかな表情を見せた。
客席からは大きな拍手と温かな声援が送られ、「友野さん、四大陸に来てくれてありがとうございます!」という声も飛んだ。

得点は162.24点でシーズンベストを更新。合計も242.08点のシーズンベストとなり、日本人選手ではトップの4位入賞を果たした。
メダルを逃した悔しさはありながらも、もがき続けたシーズンの最終戦で自分本来のジャンプと自信を取り戻し、次のシーズンを迎える上で大切なピースを手にした大会となった。

すべての始まりの場所、ミラノへ

練習中の友野一希選手

このオリンピックプレシーズンは、友野選手にとって、これまで経験してこなかった困難と真正面から向き合う時間でもあった。時に痛みでジャンプが跳べない状態にまで追い込まれながらも試行錯誤を重ね、その過程でまた一つ限界を越えてみせた。
あとは、この経験を力に変えて進むだけ。競技人生の転機となった思い出の地・ミラノへ挑む準備は、確かに整った。

全力でオリンピック代表を掴みに 2025-26シーズン

自身の集大成をぶつける3度目のオリンピックシーズン

2025-26シーズン木下グループ杯で銀メダルを獲得した友野一希選手

最終目標はオリンピックのメダル。長きにわたるスケート人生を懸けた、勝負の一年が幕を開けた。
すべての試合に全力で向き合うべく、例年より早いスタートを切った友野選手。「頼れるものはすべて頼ろう」と、国スポのチームメイトでもあった織田信成さんにジャンプの指導を依頼するなど、これまで以上に周囲の力も積極的に取り込みながらシーズンに臨んだ。
その結果、長年の目標の一つであるグランプリファイナル進出にもあと一歩まで迫り、仕上がりの早さを印象づけた。

全日本選手権で友野一希のスケートの完成形を

友野一希さんと振付師のミーシャ・ジーさん

そしていよいよ、オリンピック代表最終選考会を兼ねた全日本選手権が幕を開ける。
会場は、2019年以来となる東京・代々木。なかなか調子の上がらなかったシーズン、ショート11位から渾身のフリーを滑り切り、思わず涙した、忘れがたいリンクだ。

自分史上最高のスケートを見せるべく選んだフリープログラムは、自身の成熟と深化を映す鏡のような「Halston」。
3度目のオリンピックへの挑戦。2018年、ミラノで始まったドラマティックなスケート人生──その先を、見届けたい。

愛されスケーター友野一希選手の魅力

“浪速のエンターテイナー”友野一希

友野一希の2016-2017シーズンのフリー「巴里のアメリカ人」
2016-2017シーズンのフリー「巴里のアメリカ人」

観客をあっという間に自分の世界に引き込む、卓越した表現力の持ち主。
“踊れるスケーター”として、氷上でもキレのあるステップとダンスで会場を盛り上げてくれる。特にショーナンバーでは、サイバーサングラスをかけてロボットダンスを踊ったり、警察官の衣装に犬の耳をつけてジャンプを跳んだりとユーモア満点。

友野一希の2021-2022シーズンのエキシビション『Bills』
2021-2022シーズンのエキシビション『Bills』

2021-2022シーズンはセルフプロデュースのエキシビションナンバーに挑戦。スーツにメガネというサラリーマンスタイルで、ビジネスバッグ(時にスーツケース)を振り回しながらユーモアたっぷりに滑り上げるさまは、海外でも大人気。

感度の高さでスケート界にブームを起こす、インフルエンサー

2021年ジャパンオープン出場時の友野一希
2021年ジャパンオープン出場時の笑顔

ひとたびスケート靴を脱げば、20代の青年らしい素顔をのぞかせる。
大のラーメン好きで、世界選手権フリーの後には山本草太選手と「ラーメン二郎」に行ったというエピソードもある程だが、最近はうどん、蕎麦に浮気ぎみ。老舗の蕎麦屋や昔ながらの雰囲気が漂う飲食店巡りにはまっていて、地元堺市で『孤独のグルメ』的食事を楽しんでいる。

▶友野一希さんが地元堺をナビ!「堺市おさんぽMAP」

ファンからはカワウソに似ていると言われることもあり、2022年の世界選手権では、カワウソをモチーフとした大会のマスコット「ルルー」とツーショット写真も撮影。自身も好きな動物としてカワウソを挙げている。

もはや“生活の一部”となったサウナは、“ととのう”ことで、マインドのリセットやモチベーションアップなど、メンタルヘルスにも活用中。サウナ専門誌にも多数登場するなど、“サウナ好きスケーター”としての地位も確立。他のスケーターにもサウナのよさを積極的に布教し、フィギュアスケート界には依然として空前のサウナ旋風が吹き荒れている。

趣味は古着屋巡りや革靴磨きと、フィギュアスケート界きってのファッションラバーとしても知られる友野選手。朝の練習を終えると、アメ村や堀江でショッピング。欲しいアイテムの発売日は忘れないようカレンダーアプリに登録するなど、ファッションへの情熱は目を見張るほど。古着、ハイブランド、モードにストリート……どんな服でも着こなす類まれなるセンスの持ち主で、モデルのオファーも後を絶たない。

朝の練習を終えると、アメ村や堀江でショッピング。欲しいアイテムの発売日は忘れないようカレンダーアプリに登録するなど、ファッションへの熱量は目を見張るほど。古着、ハイブランド、モードにストリート……どんな服でも着こなす類まれなるセンスの持ち主で、モデルの仕事も後を絶たない。

ミシンをかける友野一希
手仕事の現場を見学し、レザークラフト体験も。

出身は歴史や伝統が息づく街、堺市。
古きよきものや、職人の手仕事にも興味深々で、アイスショーで岩手県を訪れた際にひと目惚れした伝統工芸品の箪笥を贈呈されるなど、伝統を後世に伝えていく役割も担う。堺市にて開催された「堺市おさんぽMAP」企画では、生まれ育った街の歴史や文化を幼少期の思い出とともに紹介。
non-no webでは大好きなファッションに加え、名品の歴史的な背景や、モノ作りの魅力を伝えるコラムニストとしても活躍(休載中)。自分の好きを発信することで、アスリートの枠を超え、次々と活動の幅を広げている。

プログラムの詳細

2025-2026シーズンのプログラム

SP:Sofi Tukker 「That’s It (I’m Crazy)」
FS:Stephan Moccio「Halston」
EX:Wake Child「Don’t Fall in Love」(2024-2025シーズン制作)

勝負のシーズンに選んだのは、対照的な二つのプログラム。だが、その相反する世界をどちらも最高純度で成立させてしまうのが、友野一希というスケーターの稀有さだ。

ショートプログラム:Sofi Tukker「That’s It (I’m Crazy)」

友野一希選手の2025-2026シーズンのフリープログラム「That's It (I'm Crazy)」の衣装

シェイリーン・ボーンさんとの初タッグで、自分だけにしかできないスケートを改めて世界に印象付けてみせた先シーズン。今季はそこからさらに“カズキトモノ”を究めた、オンリーワンの世界で勝負する。曲は、彼女から送られた膨大なリストの中から「まさにこれだ」と直感で選んだ「That’s It(I’m Crazy)」。これまで積み上げてきたものすべてをかけるという覚悟にもつながる、集大成のシーズンにふさわしい選曲だ。

「That’s It(I’m Crazy)」を歌うのは、ニューヨークを拠点に活動するデュオ・Sofi Tukker。ビートの荒々しさや鋭い音のぶつかり合いにパンク的衝動が走る、独特の緊張感をはらんだダンスミュージックだ。エレクトロサウンドの高揚感は彼のアイコニックなショーナンバー「ダフトパンク」を彷彿とさせるもので、これまでの系譜をつなぐ一曲ともいえる。

本人が愛情を込めて“イケイケ盆踊り”と呼ぶこのプログラム。腕を掲げて揺らす動きはもちろん、自然と体が動き出す、人の潜在的衝動に訴えかける4拍子のリズムにもその共通点が。さらに振付には、鮮やかな音ハメ、巧みなアイソレーション、アクロバティックな片手側転、そして得意のバレエジャンプまで、数多の魅力を凝縮されている。

衣装は、敬愛する“北米感”を意識したもの。「Underground」に続き、カナダの名デザイナー、マシュー・キャロンさんに依頼。普段のファッション同様、体のラインを美しく見せるデザインを重視した一着で、近未来感も漂うライラックカラーが印象的だ。

フリープログラム:Stephan Moccio「Halston」

友野一希選手の2025-2026シーズンのフリープログラム「Halston」

さかのぼること2年前、「挑戦することで成長したい」という決意を胸に、自分の得意とするジャンルとは別方向に表現を広げた「Halston」。試行錯誤を重ねながらも徐々に成熟し、ジャンプとプログラムの相性もあいまって、シーズンを通して高い得点が出るように。とりわけシーズンの大一番となった全日本選手権では、ISU非公認ながら自己最高となる184.64点を記録。競技性と芸術性を兼ね備えた崇高な4分間は、今も多くの人の記憶に残っているはずだ。 残念ながらその年のチャンピオンシップスで披露する機会こそなかったものの、アイスショーで滑るたびにその存在感は増し、カズキトモノを語る上で欠かすことのできない特別な作品へ。当初「とびきり難しいものを」と依頼したプログラムは、いつしか彼のマスターピースへと育っていったのだ。

また、「Halston」は、友野選手自身にとっても大きな意味を持つ作品となった。全日本選手権での演技を「思い描いていたイメージ通りのものだった」と語ったように、この時の演技は、彼が長く求めてきた“理想のフィギュアスケート像”を明確な形にしてくれた鮮烈な4分間だった。そんな背景もあり、「Halston」はシーズンを通して彼を競技者として一段上のステージへ押し上げていったプログラムといえる。

このプログラムで得た自信を胸に、先シーズンは憧れの振付師ローリー・ニコルさんに初めてプログラム制作を依頼。彼女から教わった基礎のエクササイズはスケーティングをさらに深化させ、新たな手応えへとつながった。
だからこそ、進化した今の自分で再び「Halston」に向き合うことで、このプログラムを最高のかたちで結実させたいという思いにたどり着いた。

そんな新生「Halston」は、振付師ミーシャ・ジーさんらと何度もブラッシュアップを重ね、プログラム全体の流れをより意識した構成と振付へと磨かれている。長年スケートを極め続けてきた求道者だからこそ選び取った、オリンピックシーズンにふさわしい勝負の一本だ。

過去のプログラム

【2024-25シーズン】

SP:Tshegue「Tshegue」、「Muanapoto」
FS:Jon Batiste「Butterfly」、「MOVEMENT 11’」、「I NEED YOU」
EX:Wake Child「Don’t Fall in Love」

「プログラムを通して成長したい」という目標を掲げ挑んだ前シーズンの「Halston」。その経験を経てまた一段ステップを上ることができたからこそ湧き上がったのが、「競技者としてより高みへ」という思いだった。そのためにはさらなる進化と、自分の殻を破ることが必要と考え、かねてより憧れていた二人のコレオグラファーに満を持して振付を依頼。ショートをシェイリーン・ボーンさん、フリーをローリー・ニコルさん。どちらも数々のトップ選手の振付を行ってきた世界的振付師だ。そんな二人が授けたのは、個性を生かしながら、まだ見ぬ可能性を引き出してくれるプログラム。
シーズンのテーマは「羽化」。さなぎから蝶へと進化するように、表現者としても競技者としても、大きく羽ばたいていくという強い決意が伺える作品だ。

ショートプログラム:Tshegue「Tshegue」、「Muanapoto」

シェイリーンが用意した数十曲に及ぶ候補の中から選ばれたのは、フランス=コンゴ出身、フランスのパンクデュオ・Tshegueの「Tshegue」、「Muanapoto」の2曲。当初は、真逆のゆったりした曲を使用する予定だったが、候補の一つだったこの曲が偶然流れた際、自然と惹かれるものがあり、急遽変更することになったという。
彼らの音楽は、アフリカンルーツを強く感じさせるリズムやグルーヴを核とするもの。打楽器の多層に重なるビートとトランス感と、シェイリーンが得意とする独創的なムーブメント、それを可能にする友野選手の卓越した身体能力とキレ味抜群のダイナミックな滑りが見事融合したプログラムとなっている。

パーカッションの存在感に負けることなく、むしろその曲のもつエネルギーと呼応し、増幅させていくような力強いスケーティング。音楽の奥に潜む律動を的確に身体表現に変換し、眠っていたものを呼び覚ますような原始的リズムで氷の大地を揺らす。激しいビートを全身で表現しながらも、正確なエッジワークで魅せる、友野選手にしか乗りこなせない、挑戦的で大胆不敵なプログラム。

デザイナー渡辺浩美さんが手掛けたトライバルなエネルギーを思わせる赤・青・黄色の鮮やかな色使いが目を引く衣装は、『ISU Skating Awards 2025』のベストコスチューム部門にもノミネートされた一着。

フリープログラム:Jon Batiste「Butterfly」、「MOVEMENT 11’」、「I NEED YOU」

フリーの振付は、ローリー・ニコルさん。友野選手が敬愛するパトリック・チャンさんや浅田真央さんなど、そうそうたるトップスケーターにフィギュアスケート史に残る名プログラムを授けてきた振付師界の巨匠だ。
彼女が選んだのは、アメリカのシンガーソングライター、ジョン・バティステの『Butterfly』、『MOVEMENT 11’』、『I NEED YOU』の3曲。柔らかなボーカルから始まる『Butterfly』では、空気をはらんだ軽やかな滑りで優雅な孤を描き、変化の時を思わせる『MOVEMENT 11’』では、生命の神秘と力強さを、そしてクライマックスへと向かう『I NEED YOU』では高揚感と生命力に満ちた滑りと、3つのパートでプログラムの世界観を映し出す。

フレアな袖に、鱗粉のようにきらめくラインストーンがちりばめられた衣装で舞う姿は、まさに蝶を思わせる。
変化と再生のシンボルとされる蝶は、羽化の時、自らの力で殻を破り、その過程こそが飛び立つための強さを育むと言われている。そんな蝶の変化に自身のスケート人生を重ね、プログラムを通して内に眠る力を解き放っていくかのような姿を見せてくれる温かなプログラム。スケーターとしての歩みはもちろん、これまで積み重ねてきた技術が存分に反映されたステップワークにも注目だ。

エキシビション:Wake Child「Don’t Fall in Love」

これまで「犬のおまわりさんの運命」、「Bills」、「Jazz Machine」  など、毎回キャッチーな演出で、“エキシ番長”の名を欲しいままにしてきた友野選手。
2024-25シーズンは一転、シンプルなブラックシャツで氷上に立ち、艶を帯びた大人の表現で観客を惹き込む。振付は、プロフィギュアスケーターで、振付師としても活躍中の村元哉中さん。彼女が選曲したのは、曲は恋に落ちることへの抗えない衝動や危うさを描いたWake Childの「Don’t Fall in Love」。本人が「今だからできる」と語る通り、磨き上げたスケーティングを武器に、恋に落ちる瞬間の危うさと甘美さを表現する。

【2023-24シーズン】

SP:Cody Fry 「Underground」
FS:Stephan Moccio「Halston」
EX:Black Machine 「Jazz Machine」 

「自分らしさ」を磨き上げることをテーマとしたシーズン。スタイリッシュでコミカル、手拍子を誘うメロディに、クライマックスへと向かう疾走感。これぞカズキトモノというべき、”観客を置いてけぼりにしない”、会場と一体化する演技で、氷上のエンターテイナーっぷりを世界に強く印象付けた。
一方で”らしさ”とともに先シーズン大会を追うごとに存在感を増していったのが、スケーティングの美しさ。コンパルソリー、クリケットクラブでのレッスン、ここ数年地道に取り組んできた練習の成果がその演技の端々で輝きを放っていた。
それが遺憾なく発揮されるのが、この2つのプログラム。
これまでのパワフルで勢いのあるイメージとは真逆に舵を取り、あえて自分の苦手とする部分にフォーカス。スケーティングの美しさは前述した通り昨シーズン既にその片鱗を見せていたものの、友野選手にとってはまだ到達点に達していない、“弱点”の領域。それが露わになるプログラムを選ぶことで自分に成長を促すというのがねらいだ。

ショートプログラム:Cody Fry 「Underground」

2023-2024年シーズンのショート「Underground」を滑る友野一希
2023-2024年シーズンのショート「Underground」

ショートは友野選手の憧れが詰まったスペシャルなプログラム。
振付はトリノオリンピック銅メダリストで、カナダの世界的なコレオグラファー、ジェフリー・バトルさん。ノービスの頃同じアイスショーに出演した経験があり、影響を受けてきたスケーターで、振付をお願いするのは長年の夢の一つでもあった。
使用したのは、コーディ・フライの「アンダーグラウンド」。以前他の選手が別の楽曲で演技をしているのを見て、自分も滑ってみたいと思っていたアーティスト。偶然にも今回バトルさんから送られてきた候補曲リストにこの曲があったという、奇跡のような巡り合わせで決定したナンバーだ。

「アンダーグラウンド」は目覚めたら真っ暗な地下にいたというところから始まる曲。暗闇に取り残された恐怖と対峙し勇気を出して前に進むも、そこは実は線路の上。そのまま迫りくる電車に轢かれてしまうという一見ダークな曲だが、その裏には、恋の素晴らしさが描かれているという。

恋をした時の体を突き抜けるような衝撃や、光に照らされ世界が色づく瞬間、心揺さぶられるような喜びなど、あふれ出す感情をスケートで表現。感情の高まりとともに力強くなるメロディを時に繊細に、時にダイナミックに滑り上げるドラマティックなプログラムとなっている。

使用しているのは、オーケストラとのコラボレーションバージョン。後半のステップシークエンスでは、憂いや迷いから解き放たれるかのようにホルンが咆哮を上げ、氷上を希望で満たすように柔らかに滑り上げる。憧れだという北米のスケーティングスタイルを落とし込んだ複雑なエッジワークや、伸びやかなスケーティングを存分に堪能したい。

衣装を手掛けたのは、カナダの有名デザイナー、マシュー・キャロンさん。濃いブルーに閃光が走るかのごとくビジューがちりばめられた美しいデザインとなっている。

フリープログラム:Stephan Moccio「Halston」

2023-2024年シーズンのショート「Halston」を滑る友野一希
2023-2024年シーズンのショート「Halston」

お互いのスケート観を共有しながら信頼関係を築いてきたジーさんに、「思いっきり難しい作品を作って欲しい」と依頼し生まれたのがフリー「Halston」。

イメージするのは「Halston」の収録アルバム「Lionheart」のアートワークのような世界観。木々が生い茂る静かな森で、一人逡巡するようにしっとりと滑り上げる姿にどんどん引き込まれ、森の奥深くへと誘われていくようなプログラムとなっている。
無駄をそぎ落したソリッドな滑りは友野一希の真骨頂。ピアノの音色に溶け込むジャンプは、磨き上げた技術力の賜物。
張りつめた空気の中見せるのは、ポジションの美しさ、スケーティングの正確さといったスケートの基礎の部分。スポーツでありながら芸術性を内包するフィギュアスケートの神髄に迫る内容だ。

衣装を手掛けたのは渡辺浩美さん。漆黒のボディに映えるビジューは、木々を濡らす雨粒のよう。風にのって揺れるレースがこの硬質な世界で対照的な美しさを映し出している。

目指すのは、フィニッシュで静まり返るような演技。ピアノの音色に溶け込んだジャンプ、深いエッジで刻む、自分の内面に迫るようなステップシークエンス、再生へと向かうバレエジャンプ。心に訴えかけてくるようなムーブメントの数々に、息を止めて見入ってしまうことだろう。

エキシビション:Black Machine 「Jazz Machine」

2023-2024年シーズンのエキシビションナンバー「Jazz Machine」を滑る友野一希
2023-2024年シーズンのエキシビションナンバー「Jazz Machine」

選手のエキシビション。
滑るのは、車の運転がテーマの「Jazz Machine」。振付はアイスダンスで7度全日本チャンピオンに輝いた経験をもつキャシー・リードさん。こちらはショーマンシップが炸裂する“らしさ”あふれるプログラムだ。

前半は運転席に見立てたイスに座り、エンジン全開、ノリノリでドライブ。後半は小粋にステップを踏みながらダンサブルな滑りを披露。アッパーなリズムに自然と体が揺れるおしゃれなナンバーとなっている。

衣装は、ネットで購入したという赤のレオパード柄のシャツに、ユニクロのサングラス。エッジィなスタイルをさらりと着こなす世界屈指のファッションセンスは、氷上でも健在。

会場の端から端まで視線を送り、時折観客席に向かって指さし確認などアピール満載で、スタイリッシュな魅力に前方注意なプログラム。イスを押す役に毎回どのスケーターが登場するかも注目だ

【2022-23シーズン】

SP:『HappyJazz』
FS:オペレッタこうもり』序曲
EX:MIYAVI「WHAT’S MY NAME?」

2022-23シーズンのショート『HappyJazz』を滑る友野一希
2022-23シーズンのショート『HappyJazz』

このシーズンは“自分らしいけど、今までやってこなかったもの”がテーマ。あえて自分らしいものを選ぶことで、周囲の抱くイメージの一歩先をいく自分を見てもらいたいという挑戦を課したプログラム。数年ぶりにアメリカに渡り、ミーシャ・ジーさんと対面で振付作業を行った。

ショートは、アメリカのサックス奏者サム・テイラーの「Real Gone」と、フランスのDJユニットC2Cの「Happy(feat. Derek Martin)」の2曲を使用。
耳なじみがよく特に「Happy (feat. Derek Martin)」は、トヨタのCMソングにも抜擢された曲で、聴くと自然に体が動いてしまうようなアップテンポのナンバー。

小粋なサックスに合わせて余韻たっぷりに滑り始める冒頭。曲が切り替わるとともに一気に激しさを増していき、怒涛のステップに見惚れるバレエジャンプと、カズキトモノワールド全開のプログラム。曲のMVを参考にしたというヴィンテージライクな衣装にも注目。

2022-23シーズンのショート『こうもり』序曲を滑る友野一希
2022-23シーズンのショート『こうもり』序曲

クラシックを希望するなかで選ばれたというフリーは、オペレッタ『こうもり』序曲。ウィーンの作曲家ヨハン・シュトラウス2世の最高傑作と称され、これまで多くの名プログラムを生んだ、フィギュアスケートではおなじみの曲の一つ。

指揮棒一振りで物語の世界へと誘ったかと思えば、ヴァイオリンを弾いて見せ、うっとりするようなワルツを踊り……と、4分間にハイライトが贅沢にちりばめられた濃厚なプログラム。見どころの一つというステップのスローパートでは、2021-22シーズン精力的に磨いたスケーティング技術が光る。衣装はショートとは対照的なノーブルな燕尾服で、クラシカルに。

2022-23シーズンのエキシビションナンバー「WHAT’S MY NAME?」を滑る友野一希
2022-23シーズンのエキシビションナンバー「WHAT’S MY NAME?」

エキシビションナンバーは、世界的に有名なギタリストMIYAVIさんの「WHAT’S MY NAME?」。これまで何度も友野選手のプログラムを手掛けてきた佐藤操さん振付のハードなロックナンバー。

2021-22シーズンのサラリーマン姿の面影はどこへやら。黒のレザージャケットに赤髪、パンクな目元と、今までの殻を破るロックなスタイルは初見では一瞬誰だか分からないほど。ギターをかき鳴らし縦横無尽にリンクを駆け回る姿は野生のピューマのよう。男らしさ全開のロッカースタイルで、世界に衝撃を与えるナンバーだ。

【2021-2022シーズン】

SP:『ニュー・シネマ・パラダイス』
FS:『ラ・ラ・ランド』

勝負のシーズンに選んだのは、“自分を最大限に表現できる”プログラム。
ショートは、2018-2019シーズンに演じた『ニュー・シネマ・パラダイス』をリバイバル。ミーシャ・ジーさんとの記念すべき初タッグ作品で、家族、友人などさまざまな愛の形を描いたもの。

思い出を反芻するかのように前を見つめる冒頭から、ありったけの思いを捧げるようなラストまで、ピアノの美しい旋律とともに、情感豊かに滑り上げる。指の先まで思いを込め、見る者の心に訴えかけるようなプログラムに。

フリーは、公開時からいつか滑りたいと温めていたという『ラ・ラ・ランド』。

映画はアメリカ・ロサンゼルスを舞台に、ピアニストと女優志望の二人の恋模様と、夢を追い求める姿を描いた大ヒット作品。
演技はピアノを弾くような振付から始まり、前半のしっとりしたジャズパートを経て、

エネルギッシュなダンスパートへとアクセルを踏んでいく。

夢へと向かうコレオシークエンスは、誰にも止められないほど疾走感に満ちていて、栄光へと向かう友野選手自身を表現しているかのよう。

ショート、フリーともにジーさん振付の、最強のタッグ、最強のプログラムで挑むオリンピックシーズン。夢をつかみとるために、持てるすべてを捧げて挑むプログラム。表現者・友野一希だけの物語を氷の上に紡いでいく。

【2019-2020/2020-2021シーズン】

SP:The Hardest Button to Button
FS:『ムーラン・ルージュ』

2020-2021シーズンは、ショート、フリーともに前シーズンのプログラムを持ち越し、さらなるブラッシュアップを図った。 

コンテンポラリーダンスという新ジャンルで戦ったショート。
振付は、「火の鳥」、「エデンの東」など、町田樹さんの代表作を手掛けてきた、元バレエダンサー、フィリップ・ミルズさん。

目標とする選手に町田さんを挙げ、フィギュアスケートで最も印象に残っているプログラムが「エデンの東」という友野選手にとっては、あらゆる意味で挑戦的なプログラム。

フリーは2018-2019シーズンのショート『ニュー・シネマ・パラダイス』に続き、ジーさんが振付。

大人の色気を感じさせつつも、闘志に満ちた迫力ある演技が堪能できる。後半に向かうにつれどんどん激しさが増していく、一瞬たりとも目が離せないプログラムで、見終わる頃には誰もが彼のファンになってしまう。
オフシーズン中に強化したというスケーティング、スピンにも注目。

インタビュー

友野一希連載「トモノのモノ語り。」

Profile

友野一希

フィギュアスケーター

1998年5月15日生まれ、大阪府堺市出身。
2026年のミラノ・コルティナダンペッツォオリンピックを目指す男子シングル日本代表。感情をスケートにのせ、観客の心まで躍らせるHappyな演技で世界を熱狂させる愛されスケーター。


Staff Credit
写真/アフロ 、anya 取材・文/轟木愛美 

anya
東京在住のフリーカメラマン。2017年よりフィギュアスケートを撮影。 Instagram:anya3lz3lo

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