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フィギュアスケート
2023.10.06更新日:2024.10.04
1998年5月15日生まれ、大阪府堺市出身。
上野芝スケートクラブ所属。 趣味はサウナ、古着屋巡り、老舗ごはん屋巡り、靴磨き。
“浪速のエンターテイナー”の異名をもつ、表現力豊かなスケーター。
層の厚い日本男子の中で、地道に積み重ねてきた努力が開花した2021-22シーズン。四大陸選手権2位、世界選手権では世界歴代6位の記録でショート3位につける大躍進を遂げた。
2022-23シーズンは全日本選手権で初の表彰台、自らの力で世界選手権出場を果たし自己ベストを更新するなど一歩一歩確実な成長を見せ、新シーズンへの期待が高まるばかり。あえて自分の苦手とする部分を前面に出すプログラムを用意し、輝く個性+αの武器を求め加速度的に進化中。
シニア1年目からこれまでの歩み
シニアデビューを果たした2017-2018シーズン
ジュニアグランプリシリーズデビューまで足掛け4年と、苦労もあったジュニア時代を経て、19歳でついにシニアデビュー。
オリンピックイヤーでもあった2017-2018シーズンは、11月に繰り上がりでグランプリシリーズNHK杯に初出場、12月の全日本選手権では自己最高位の4位に入った。
そして3月、イタリア・ミラノで開催された世界選手権にまたしても補欠から繰り上がり出場。
ショートで24位以内に入れば翌シーズンのグランプリシリーズ出場枠を自身で獲得することができると、人生をかけて挑んだショート。自ら課した大きなプレッシャーに打ち勝ち、見事11位に。演技後は、恐怖から解放された安堵感から涙がこぼれた。
「失うものは何もない」と臨んだフリーでは、自己ベストを20点近く更新する堂々たる演技で3位に。総合で5位入賞を果たし、翌シーズンの世界選手権日本男子出場枠「3」獲得に大きく貢献。
さらにグランプリシリーズ出場どころか、2大会出場をつかみ取り、晴れて日本の特別強化選手に。
自らのスケート人生をその手で変えた瞬間だった。
強くなると誓った2018-2019シーズン
世界のトップスケーターの一人として迎えた2018-2019シーズン。
グランプリシリーズ2戦目ロステレコム杯では、シリーズ初の表彰台に。
全日本選手権では4位とわずかに表彰台に届かず、2年連続の世界選手権出場とはならなかった。
初出場の四大陸選手権では、ジャンプのミスが重なり12位に。本来の力を発揮できなかった悔しさに涙しながらも「どれだけ苦しんでもいつかトップで輝けるように、必ず強くなって戻ってきます」と、強い決意を示した。
長いトンネルから抜け出した2019-2020シーズン
シニア3年目となった2019-2020シーズンは、新たに4回転トーループを投入。
ショートは、コンテンポラリーダンスを取り入れた意欲作「The Hardest Button to Button」。日本屈指のエンターテイナーとしての真価が試される、難易度の高いプログラムに挑戦することとなった。
一方フリーは、フィギュアスケートの定番曲として名高い、映画『ムーラン・ルージュ』。静と動の緩急に富んだ構成、かつタイトな赤と黒の衣装にオールバックのヘアスタイルを合わせ、大人の魅力が詰まったプログラムで新シーズンに挑んだ。
10月に開幕したグランプリシリーズは初戦のスケートアメリカに出場。ショートでは4回転ジャンプに苦戦し8位スタートとなったが、フリー冒頭の4回転+3回転の連続トーループジャンプでは、シーズン初戦のサマーカップを超える3点近い加点がつく出来栄えで着氷。
その後ジャンプの乱れはあったが、スピンステップではすべてレベル4を獲得。最後まで情熱的な滑りで総合5位に。エキシビションでもショーマンシップを発揮し、アメリカの観客の心を掴んだ。
2戦目ロステレコム杯では8位と2年連続の表彰台とはならなかったものの、ショート、フリーともにシーズンベストを更新し、着実な成長を残した。
全日本選手権に向けて徐々に調子を上げ、迎えた本番。
ショートではジャンプがなかなか決まらず、まさかの11位と大きく出遅れてしまう。しかしこのまま引き下がるはずがないのが友野選手。
2日後のフリー。精悍な顔つきでリンクの中央に立つと、冒頭の4回転+3回転の連続トーループジャンプ、4回転サルコーを鮮やかに着氷。そのままほとんどのジャンプを加点がつく出来栄えで次々と成功させ、勢いに乗る。
見せ場であるコレオシークエンスでは、これまでの思いや努力をぶつけるような力強い滑りを披露。燃え盛る炎を背負っているかのようにリンクを駆け抜け、渾身のフィニッシュに会場は歓喜に包まれた。
得点は国際スケート連盟(ISU)非公認記録ながら、自己ベストを大幅に更新する171.63点で4位に。総合では6位に入り、ショート11位から一気に追い上げを見せた。
すべてを出し切りしばらく涙が止まらない友野選手に、幼少期から師事する平池大人コーチと、振付だけでなく精神的な支えにもなっているであろうミーシャ・ジーさんが温かく寄り添った。
年が明けてもインカレに国体と、休む暇なく試合に出場。
2月には宇野昌磨選手の辞退により、四大陸選手権への繰り上がり出場が決定。前シーズンの同大会での雪辱を果たす絶好の機会が巡ってきた。
是が非でも成功させたいショートは、「The Hardest Button to Button」。訳は“最もかけにくいボタン”。
冒頭の4回転+3回転の連続トーループを成功させ勢いに乗ると、そのまますべてのジャンプを加点がつく出来栄えで着氷。体を大きく使った大胆な動きで躍動し、演技後にはガッツポーズ。ここにきて複雑な振付を完全にものにし、得点は自己ベストの88.22点。唯一無二の表現力を世界に見せつけた。
フリーではすべてのジャンプ成功とはいかなかったが、4回転ジャンプ3本にチャレンジする攻めの姿勢で、162.83点をマーク。トータルは251.05点と自己ベストを更新し、権威のあるISUチャンピオンシップの一つである四大陸選手権で存在感を十分にアピールした。
ほぼノーミスの演技をしたがショート7位、総合でも同順位と、非常にレベルの高い大会となった四大陸選手権。
実力を出し切り、シーズンを通して肉体的にも精神的にも一回りも二回りも強くなったが、友野選手が目指すのは、出場全試合でのメダル獲得。
北京オリンピックまで約2年。大舞台を夢見てさらなる進化を誓った。
前だけを向き、挑み続けた2020-2021シーズン
新型コロナウイルス感染拡大の影響で氷上練習ができない間も体力の強化に励み、幕を開けた2020-2021シーズン。プログラムはショート、フリーともに継続で、ショートで2本、フリーで3本の4回転ジャンプを予定していた。
自国の選手を中心に、異例の形式で開催されることとなったグランプリシリーズ。友野選手はNHK杯に出場。
ショートでは冒頭の4回転トーループからの連続ジャンプで着氷が乱れたものの、ミスを引きずることなく残り2本のジャンプは加点がつく出来栄えできっちり着氷。2位でスタートを切った。
逆転を目指したフリーでは、4回転サルコーからの連続ジャンプに成功。しかしその他では乱れるジャンプが続き、悔しさが残る演技となった。
それでも2シーズン目で凄みを増したロクサーヌのタンゴは、圧巻としか言いようがない大迫力。ラストのコレオシークエンスには多くのジャッジが最高評価をつけた。
フリーの結果は3位で、総合は2位。惜しくも表彰台の真ん中とはならず、全日本選手権でのリベンジを誓った。
そしていよいよ全日本選手権が開幕。
国内の有力選手が一堂に会し、ただでさえ独特の張りつめた空気があるというこの大会。このシーズンはパンデミックの影響から、本大会が初戦となる選手も多く、より一層緊張感が高まるなか行われた。
ショートでは2つ目のジャンプ、4回転サルコーで転倒、しかし最後のトリプルアクセルは鮮やかに決め、7位で折り返した。
運命のフリー。冒頭からジャンプがなかなか決まらない場面が続く。
しかし2シーズンしっかり滑り込んできたプログラム。最大風速でリンクを駆け巡る猛然たるコレオシークエンスで会場を魅了。心震わせる熱い滑りで演技を締めくくった。
結果は、フリーが8位で総合は6位。
ここに来るまでに、これ以上ないというほどの練習を積んできたという友野選手。それだけに練習の成果を出し切れなかった悔しさは計り知れない。
だが得点を待つキス&クライでは、その気持ちを隠して懸命に笑顔を見せ、「絶対に諦めへん」という言葉も飛び出し、来るオリンピックシーズンに向けての成長を心に決めた。
自らの力で切り拓いた2021-2022シーズン
学業と競技、どちらにも情熱を注ぎ、4年間自宅とリンク、大学を往復するハードな生活を送ってきた友野選手。春に大学を卒業してからは、基本に立ち返り、スケーティングの基礎を磨く日々がスタートした。
初戦のサマーカップ以降、試合を重ねることでプログラムを体になじませ、いざグランプリシリーズに参戦。
1戦目イタリア杯。ショート6位発進からのフリーは前半で4回転ジャンプをすべて完璧に決める素晴らしいスタートを切ったが、後半ではスピンや得意のトリプルアクセルでミスがあり、総合6位。
2戦目は、3年前グランプリシリーズ初のメダルを獲得した縁起のよい大会でもあるロステレコム杯。
ショートではすべてのジャンプに加点がつくノーミスの演技を披露。2020年の四大陸選手権で出した自己ベスト88.22点を大きく上回る95.81点で堂々の首位に。
最終滑走で登場したフリーは、冒頭の4回転トーループ+3回転トーループのコンビネーションを見事に成功させるも、4回転サルコーは回転不足に。しかしその後はゴージャスな4回転トーループでロシアの観客を魅了。後半はジャンプが乱れたが、スピン、ステップでは最高のレベル4を獲得し、フリーも168.38点と自己ベストを更新。
トータル264.19点で3位と、この地で再びメダルを手にした。
グランプリシリーズで表彰台に上るのは3年ぶり。さらにショート、フリー、合計すべてで自己ベスト更新と、覚醒の兆しを感じさせる大会となった。
北京オリンピックの最終選考会を兼ねた全日本選手権。
集中力を欠いたと言うショートでは、4回転サルコーの着氷が乱れる場面もあり、7位スタート。
逆転を狙うフリー。ピアノの調べにのせてしっとりと滑り始めると、前半の4つのジャンプをすべて加点つきで成功。途中ジャンプのミスもあったが、リカバリーする冷静さも見せ、そのまま最高のコレオシークエンスへ。ありったけの思いを込め、誰よりもこの瞬間を楽しみ滑る姿に会場も共鳴し、拍手の音がどんどん大きくなる。
両手を力強く突き上げフィニッシュを決めると、観客からはスタンディングオベーション。
得点はISU非公認ながら、自己ベストを上回る175.88点で5位。トータルでも5位に順位を上げた。
惜しくもオリンピック、世界選手権代表とはならなかったが、この成績により、3大会連続となる四大陸選手権代表に選出。
優勝を目指し、タリンの地に降り立った。
この大会に向け地道に練習してきた成果が実を結び、ショートではノーミスの演技を披露。2シーズン目となる『ニュー・シネマ・パラダイス』の世界観を見事に紡ぎ、得点は自己ベスト更新の97.10点と、いよいよ100点の大台が見えてきた。
2位で迎えたフリー。前半の4回転トーループで転倒するも、すぐに切り替え、その後はすべてのジャンプをクリーンに成功。ショート、フリー、トータルで自己ベストを更新し、見事2位に。“史上最高の自分”を見せ、ついにISUチャンピオンシップ初のメダルを獲得した。
しかし銀メダルという華々しい結果にも、本人は金メダルに届かなかった悔しさを滲ませた。
そしていよいよシーズンも終盤戦となるクープドプランタンへ。
ジャンプが乱れるも、ショート、フリーともに4回転トーループからのコンビネーションジャンプは見事決め、優勝。国際大会初となる金メダルに輝いた。
三浦佳生選手の欠場による世界選手権出場の知らせが飛び込んできたのは、ちょうどクープドプランタン出場のため、ルクセンブルクに向かう道中。大会開幕までわずか1週間という時のことだった。
世界選手権出場は2018年大会以来、実に4年ぶり。前戦の疲れも残る中、再び巡ってきたチャンスで再び“史上最高の自分”を更新すべく、覚悟を決めた。
「1回目の世界選手権は、何もわからないまま。でも今回は何も怖くなかった」と語ったショート。
万感の思いでリンクに立つと、“愛のテーマ”が流れ始める。そのままこれまで歩んできた道のりを思い返すかのように彼方を見つめ、心地よい余韻が残るなか演技がスタート。
冒頭のコンビネーションジャンプを3点以上の加点がつく出来栄えで成功させると、そのまま音楽と溶け合うような美しい滑りで魅了し、次々とジャンプを着氷。
ノーミスでフィニッシュを決めると、思いを噛みしめるように力強く拳を握り、ガッツポーズ。
2シーズン磨き上げてきた自分だけの『ニュー・シネマ・パラダイス』。この大きな舞台で見事な集大成を見せた。
得点は目標にしていた“101点”を超える101.12点で3位に。“代打”での急遽出場から、世界歴代6位のハイスコアをたたき出した。
フリーではジャンプのミスがあったが、代名詞の一つであるコレオシークエンスでは会場を大いにわかせ、出場選手中トップの加点を獲得。得点は168.25点で8位に入った。
結果は6位入賞。メダル獲得とはならなかったが、4年前とは一回りも二回りも成長した姿を見せ、ここから再び始まる4年間に向け、新たなステージへの扉を開いた大会となった。
世界選手権に向かって突き進んだ2022-2023シーズン
2018年の世界選手権はフリー3位、そして2022年はショートで3位と、それぞれスモールメダルを獲得するも、まだ大きなメダルを手にしていない友野選手にとって、このシーズンの目標は、正式な代表選手として世界選手権に出場し、表彰台に上ること。
「トップへ」をスローガンに掲げ、自分と向き合い自分だけの武器を磨いていく日々が始まった。
オフシーズンはアイスショーに精力的に出演。合間にアメリカでの振付や合宿と、かつてないほど忙しい、充実した日々。特に憧れのクリケットクラブでは、ジャンプからスピン、ステップとあらゆる技術をレクチャーしてもらうなど、基礎に立ち返って練習に励んだ。
初戦は毎年恒例となったげんさんサマーカップ。
直前までアイスショーと合宿に奔走し、ほとんど通し練習ができなかったことに加え、大会5日前に靴を戻すなど、万全とはいえない状態での出場となった。
結果は2位と惜しくも優勝を逃したが、調子を落としていたトーループも復調の兆しを見せ、収穫の多い大会に。特にこの後のグランプリシリーズ2戦で一緒に戦う予定である山本草太選手の優勝を勝ち取った演技が、大きな刺激となったという。
LAでのジーさんとブラッシュアップを終え、9月後半には、チャレンジャーシリーズのネーベルホルン杯に出場。ジャンプがふるわず、ショートは11位発進。フリー3位で一気に巻き返すも、4位と惜しくも表彰台とはならず。
大会前、結果を求めすぎる余り、満足できないまま練習を終える日々が続いていたという友野選手。点数や順位にとらわれすぎず、己に集中することこそが今の自分に必要なことだと気づきを得た大会となった。
気持ちを切り替えるべく、いつも以上に練習に打ち込み迎えた近畿選手権。
前戦からの嫌なイメージが残ったままだったというショートでは、4回転ジャンプがなかなかはまらず2位発進。
ショートでの自分の表情を見て、「自分はやっぱり笑ってないと」と気持ちを切り替え、自然体で臨んだフリーでは、着氷が乱れるものもあったが、すべてのジャンプを着氷。168.56点で、見事逆転優勝を決めた。
負のイメージに囚われ、自分を見失いそうになっていた状態から無事抜け出し、試合との向き合い方を思い出すことができた近畿選手権。自分に打ち勝ち、いよいよグランプリシリーズでの戦いの準備が整った。
いよいよグランプリシリーズへ。
前を向き直し自分らしさを取り戻して以降、失敗をしてもいいと思えるくらいの練習を積んできた。
1戦目はフランス大会。
ショートは冒頭の4回転トーループの着氷が乱れるも、残り2本のジャンプは加点がつく出来栄えで、2位発進。スピン、ステップでも最高評価のレベル4をそろえた。
当日の練習からあまりジャンプの調子がよくなかったというフリーではやはりミスが出てしまうも、得意のステップや演技構成点で得点を稼ぎ、合計では3位表彰台。ジャンプのミスがあっても演技構成点で評価されたことが大きな自信につながった。
さらにグランプリシリーズ初戦でのメダル獲得は初と、例年に比べて仕上がりの早さを感じさせる大会に。
悔しさは残ったが、ポジティブな気持ちで終えたフランス杯。エンターテイナーとして気合が入るエキシビションでは、足が動かなくなるくらいに命を削った伝説的なパフォーマンスを披露。力尽きるくらいがロックだ、と浪速のロック魂を見せ、会場を盛り上げ帰国した。
2戦目はNHK杯。
出場選手12人のうち6人は1戦目でのメダルの獲得者と、激戦が予想されたこの大会。
ショートでは冒頭のコンビネーションジャンプに成功。4回転トーループにきっちり3回転を付け、加点も獲得。しかし、このジャンプに意識がいく余り、普段の練習ではトーループよりも調子のよかった4回転サルコーで転倒。4位で折り返すこととなった。
翌日のフリー。ショートに続き冒頭の4回転トーループ―3回転トーループを美しく着氷。続く2本の4回転でミスが出るも、引きずることなくその後のジャンプはすべて成功。滑りでも表情でも魅せるステップシークエンスや、優雅なコレオシークエンスで、会場の拍手を誘い、プログラムの世界観を存分に伝えてのフィニッシュ。合計251.83点で、シーズンベストを記録した。
結果は4位と、フランス杯に続いてのメダル獲得とはならなかったが、まっすぐ前を見据える瞳には、芽生えた自信と燃える決意が見てとれた。
その精悍な顔つきの背景にあったのは、ショート終了後に偶然目にした自分の演技に対するポジティブなツイート。それを見たことで、これまで自分の弱さばかりに目を向けていたことに気づき、これからは自分の強さに向き合う覚悟ができたという。
心の奥底でずっとくすぶっていた不安を取り払い、初めて自分を信じきって滑ることができた日。「僕はやれば戦える」。目の前に広がっていた霧が晴れ、自分の成長のために必要なことがクリアになった大会となった。
このシーズンの目標を世界選手権とする友野選手にとって、一番の正念場となる全日本選手権が開幕。10年連続10回目の出場。会場は地元大阪。舞台は整った。
キスアンドクライのボードに記した言葉は「脱!代打!」。繰り上がりではなく、正選手として世界選手権出場へ。自分の手で代表をつかみ取る、強い決意を込めた言葉だった。
開会式では選手宣誓も務め、迎えたショート。
予定していたコンビネーションジャンプで大きく転倒するも、続く4回転サルコーにトーループを付けることに成功。“毎日本番”だと思ってやってきた練習が実を結び、この独特の緊張感の中でも冷静なリカバリーを見せた。そのまま集中を途切れさせることなく、得意のトリプルアクセルは音楽に合わせた完璧な着氷。得点は85.43点で4位と、メダルを射程圏内に捉えた。
グランプリシリーズ以降、重点的に練習してきたフリー。「上野芝スケートクラブ」の名がコールされ、リンクの中央に立つ。あとは“自分のやってきたことをやりきるだけ”。
冒頭の4回転トーループ―3回転トーループは見事成功。2本目はこの大会から順番を変更した4回転トーループ。惜しくも2回転となり、3本目の4回転サルコーは着氷が乱れたが、そこからは音楽を体いっぱいに感じながら、この時間を心の底から楽しむような表情で滑り上げる。観客の手拍子とともに晴れやかな表情でクライマックスへ。右手を高く上げフィニッシュポーズを決めると、客席は歓喜に包まれた。
得点は165.41点で、合計では250.84点で順位は3位。10回目の出場でついに悲願のメダル獲得。有言実行、世界選手権代表の切符をその手でつかみ取ってみせた。
「最後にメダルにつながったのは、今までの経験」そう語った友野選手。絶対に諦めることなく、どんなペースでも成長を続けることが大事と自分に言い聞かせ、一歩一歩進んできたこの10年間。首に掛けたメダルが何よりその正しさを証明していた。
年が明け、1月。
全日本選手権の余韻に浸ることなく、その目はすでに世界選手権を見据え、準備を進めていた。
仲間を全力で応援し、引退するスケーターを笑顔で送り出した国体。ショートは首位発進だったが、フリーでは冒頭のジャンプのミスを引きずってしまい7位で総合4位。最近はノーミスのための練習に力を入れていたということで、ミスをした時どう対処していくかについても考えるきっかけとなった。
2月に入り、世界選手権に向けた最終調整へ。
2週目には全大阪選手権の試技会でフリーを確認。4回転ジャンプ3本を着氷させ、190点を狙える得点をマーク。
そしてその2週間後には、スケートヒロシマに出場。ショートではシーズン初の90点超え。初優勝を果たし、ミスがある中でも得点の基準が上がっていることを再確認。無観客ではあったが、関係者の方からの温かい声援も大きな力となった。
世界選手権まであと1か月。2014年、さいたまスーパーアリーナで開催された世界選手権での町田樹さんの演技に感化されたという友野選手。その町田さんがかつて練習していた場所で、いいイメージで世界選手権前最後の大会を終えることができた。
ついに幕を開けた3度目の世界選手権。
目標はショートで100点、フリーで190点の合計290点。ここに到達することができれば違う景色が見えるはずだと信じ、これ以上ないくらいの練習を積んできた。
“世界選手権での自分は最強”。過去2回急遽の代打出場でも自己ベストを出した経験も大きな自信となった。
さらに大会に間に合うよう製作したこだわりのバナータオルも後押しに。大好きな赤に「TOMONO」のロゴが斜めに入った勢いを感じさせるデザイン。オンラインサイトでの初回販売分は即完売。再販に加え、当日の会場販売も品切れとなるほど、誰もが応援を届けたいという気持ちでいっぱいだった。このバナーがあの大きな会場を埋め尽くす光景を想像しながら、気持ちを一つに、本番のショートを迎えた。
この場を楽しみ尽くしてやるといった気概が見える、強気の表情でリンクの中央へ。
4回転トーループ+3回転トーループは3.26点の加点がつく出来栄えで完璧に着氷。客性からは揺れるような歓声が上がった。このシーズンの鬼門だった2本目の4回転ジャンプは激しく転倒し体を大きく打ち付けるも、すぐに立ち上がり、先程のミスなどなかったかのようなはつらつとした表情で次の要素へ。
鮮やかなトリプルアクセルで、再び観客の心を掴むと、伝家の宝刀のステップシークエンス。キレ味抜群の爆速ステップは9人中7人のジャッジが満点をつけ、出場選手中1位の評価に。世界に誇るステップで演技を締めくくると、会場はスタンディングオベーション。赤く染まった客席を万感の表情で見渡した。
転倒があった中でも、シーズンベストの92.68点を記録。7位でフリーを迎えることとなった。
昨年の演技のリベンジを果たすべく、臨んだフリー。
ショートを超えるとてつもない緊張感の中、バナーを手に声援を送るたくさんの観客に見守られながら、演技が始まる。
4回転トーループからのコンビネーションジャンプはきっちり着氷。2本目の4回転ジャンプは惜しくも転倒したが、続く4回転サルコーは3.33点という高い加点のつく質の高いジャンプを披露。
スローパートのステップシークエンスでは一時振付が飛んでしまったというも、作り出した世界観と思いを一人一人に届けるように丁寧にステップを踏んでいく。
クライマックスへと向かうコレオシークエンスは、加速していく友野選手の滑りと、どんどん大きくなる観客の手拍子がかけ合わさり、まるでここが世界の中心になったかのような圧倒的エネルギーで満ちていた。勢いよくフィニッシュを決めると、観客ははじかれたように立ち上がり、世界のエンターテイナーに拍手喝采を送った。
バナーと日の丸が真っ赤に揺れる光景をしっかり目に焼き付けると、心から幸せそうな表情で、平池大人コーチの待つキスアンドクライへ。
悔しさはあれど、「やりきった」と充足感を浮かべ得点を待つ。結果は自己ベストを9点近く更新する180.73点。ショートと合わせた合計は273.41点で、こちらも自己ベストを14点以上更新するハイスコアを記録。隣に座る平池コーチと固い握手を交わした。
目標としていた合計得点までは、ほぼ転倒したジャンプ2つ分。ノーミスの演技をすれば、見たかった新しい景色に確実に手が届く。
一歩一歩確実に成長できていることを実感し、自信を深めた友野選手。「来年も(必ず成長する)」と、誓いを立て、3度目の世界選手権を終えた。
2018年、2022年に続き、またしても世界選手権で自己ベストを更新し、“世界選手権での自分は最強”説を証明。6位入賞を果たし、翌年の世界選手権の日本男子出場枠「3」の確保に貢献した。
世界選手権が終わると休む間もなく、アイスショーで日本各地を飛び回り、そのままシーズン最終戦となる国別対抗戦へ。
国別対抗戦は、世界ランキング上位6か国が出場し、男子シングル、女子シングル、ペア、アイスダンスという4種目の総合成績で争う団体戦。2年に一回の開催で、この大会が初出場となった。
しかし直前までアイスショーに出演し競技練習の時間を十分に確保できなかったこともあり、安定していたフリー後半のジャンプにミスが続き、悔しさの残る結果に。チームジャパンとしては銅メダルに輝いた。
例年以上に長く濃密だったシーズンがついに幕を閉じた。
世界選手権という一つの目標に向かって走り続けた2022-23シーズン。世界選手権の大きなメダルまではあと少し。自分の進むべき道が明確になった実りあるシーズンとなった。
新シーズン情報
このオフシーズンもありとあらゆるアイスショーに引っ張りだこ。
それぞれのショーのテーマに合わせた演目を用意する引き出しの多さは、さすがエンターテイナー。また、「ワンピース オン アイス」では、役を演じるという初めての経験も。怒りや憎しみといった普段の演技ではなかなか見せたことのない感情をまとい、表現者友野一希としての新たな可能性を示した。
シーズンの目標は、すべての大会で表彰台に上ること。
直近のネーベルホルン杯では、シーズン序盤とは思えない完成度の高い演技で圧倒。見事銀メダルを獲得し、世界ランキングは自己最高の6位に。その勢いのまま、3地域対抗戦の形式では初出場となるジャパンオープンに日本代表として出場予定。グランプリシリーズを前に強豪がそろう注目の大会。世界に新しい自分を披露する絶好の機会だ。
今シーズンは次のステップへ進むため、自分のなりたい理想のスケーターへと近づくための大切な1年。今まで見ないようにしていたものにも真っ向から対峙する、プライドをかけた挑戦が始まる。強い決意とともに挑戦するその過程を見守りたい。
愛されスケーター友野一希選手の魅力
観客をあっという間に自分の世界に引き込む、卓越した表現力の持ち主。
“踊れるスケーター”として、氷上でもキレのあるステップとダンスで会場を盛り上げてくれる。特にショーナンバーでは、サイバーサングラスをかけてロボットダンスを踊ったり、警察官の衣装に犬の耳をつけてジャンプを跳んだりとユーモア満点。
2021-2022シーズンはセルフプロデュースのエキシビションナンバーに挑戦。スーツにメガネというサラリーマンスタイルで、ビジネスバッグ(時にスーツケース)を振り回しながらユーモアたっぷりに滑り上げるさまは、海外でも大人気。
ひとたびスケート靴を脱げば、20代の青年らしい素顔をのぞかせる。
大のラーメン好きで、世界選手権フリーの後には山本草太選手と「ラーメン二郎」に行ったというエピソードもある程だが、最近はうどん、蕎麦に浮気ぎみ。老舗の蕎麦屋や昔ながらの雰囲気が漂う飲食店巡りにはまっていて、『孤独のグルメ』的食事を楽しんでいる。
ファンからはカワウソに似ていると言われることもあり、2022年の世界選手権では、カワウソをモチーフとした大会のマスコット「ルルー」とツーショット写真も撮影。自身も好きな動物としてカワウソを挙げている。
もはや“生活の一部”となったサウナは、ととのうことで、マインドのリセットやモチベーションアップなど、メンタルヘルスにも活用中。
最近では、サウナ専門誌に登場するなど、“サウナ好きスケーター”としての地位も確立。他のスケーターにもサウナのよさを積極的に布教し、フィギュアスケート界には依然として空前のサウナ旋風が吹き荒れている。
趣味は古着屋巡りや革靴磨きと、フィギュアスケート界きってのファッションラバー。
朝の練習を終えると、アメ村や堀江でショッピング。欲しいアイテムの発売日は忘れないようカレンダーアプリに登録するなど、ファッションへの熱量は目を見張るほど。古着、ハイブランド、モードにストリート……どんな服でも着こなす類まれなるセンスの持ち主で、モデルの仕事も後を絶たない。
出身は歴史や伝統が息づく街、堺市。
古きよきものや、職人の手仕事にも興味深々で、アイスショーで岩手県を訪れた際にひと目惚れした伝統工芸品の箪笥を贈呈されるなど、伝統を後世に伝えていく役割も担っている。
non-no webでは大好きなファッションに加え、名品の歴史的な背景や、モノ作りの魅力を伝えるコラムニストとしても活躍。自分の好きを発信することで、アスリートの枠を超え、次々と活動の幅を広げている。
プログラムの詳細
今シーズンのプログラム
SP:Cody Fry 「Underground」
FS:Stephan Moccio「Halston」
EX:Black Machine 「Jazz Machine」
「自分らしさ」を磨き上げることをテーマとした先シーズン。
スタイリッシュでコミカル、手拍子を誘うメロディに、クライマックスへと向かう疾走感。これぞカズキトモノというべき、”観客を置いてけぼりにしない”、会場と一体化する演技で、氷上のエンターテイナーっぷりを世界に強く印象付けた。
一方で”らしさ”とともに先シーズン大会を追うごとに存在感を増していったのが、スケーティングの美しさ。コンパルソリー、クリケットクラブでのレッスン、ここ数年地道に取り組んできた練習の成果がその演技の端々で輝きを放っていた。
それが遺憾なく発揮されるのが、今シーズンの2つの新プログラム。
これまでのパワフルで勢いのあるイメージとは真逆に舵を取り、あえて自分の苦手とする部分にフォーカス。
スケーティングの美しさは前述した通り昨シーズン既にその片鱗を見せていたものの、友野選手にとってはまだ到達点に達していない、“弱点”の領域。それが露わになるプログラムを選ぶことで自分に成長を促すというのがねらいだ。
ショートは友野選手の憧れが詰まったスペシャルなプログラム。
振付はトリノオリンピック銅メダリストで、カナダの世界的なコレオグラファー、ジェフリー・バトルさん。ノービスの頃同じアイスショーに出演した経験があり、影響を受けてきたスケーターで、振付をお願いするのは長年の夢の一つでもあった。
使用したのは、コーディ・フライの「アンダーグラウンド」。以前他の選手が別の楽曲で演技をしているのを見て、自分も滑ってみたいと思っていたアーティスト。偶然にも今回バトルさんから送られてきた候補曲リストにこの曲があったという、奇跡のような巡り合わせで決定したナンバーだ。
「アンダーグラウンド」は目覚めたら真っ暗な地下にいたというところから始まる曲。暗闇に取り残された恐怖と対峙し勇気を出して前に進むも、そこは実は線路の上。そのまま迫りくる電車に轢かれてしまうという一見ダークな曲だが、その裏には、恋の素晴らしさが描かれているという。
恋をした時の体を突き抜けるような衝撃や、光に照らされ世界が色づく瞬間、心揺さぶられるような喜びなど、あふれ出す感情をスケートで表現。感情の高まりとともに力強くなるメロディを時に繊細に、時にダイナミックに滑り上げるドラマティックなプログラムとなっている。
使用しているのは、オーケストラとのコラボレーションバージョン。後半のステップシークエンスでは、憂いや迷いから解き放たれるかのようにホルンが咆哮を上げ、氷上を希望で満たすように柔らかに滑り上げる。憧れだという北米のスケーティングスタイルを落とし込んだ複雑なエッジワークや、伸びやかなスケーティングを存分に堪能したい。
衣装を手掛けたのは、カナダの有名デザイナー、マシュー・キャロンさん。濃いブルーに閃光が走るかのごとくビジューがちりばめられた美しいデザインとなっている。
お互いのスケート観を共有しながら信頼関係を築いてきたジーさんに、「思いっきり難しい作品を作って欲しい」と依頼し生まれたのがフリー「Halston」。
イメージするのは「Halston」の収録アルバム「Lionheart」のアートワークのような世界観。木々が生い茂る静かな森で、一人逡巡するようにしっとりと滑り上げる姿にどんどん引き込まれ、森の奥深くへと誘われていくようなプログラムとなっている。
無駄をそぎ落したソリッドな滑りは友野一希の真骨頂。ピアノの音色に溶け込むジャンプは、磨き上げた技術力の賜物。
張りつめた空気の中見せるのは、ポジションの美しさ、スケーティングの正確さといったスケートの基礎の部分。スポーツでありながら芸術性を内包するフィギュアスケートの神髄に迫る内容だ。
衣装を手掛けたのは渡辺浩美さん。
漆黒のボディに映えるビジューは、木々を濡らす雨粒のよう。風にのって揺れるレースがこの硬質な世界で対照的な美しさを映し出している。
目指すのは、フィニッシュで静まり返るような演技。ピアノの音色に溶け込んだジャンプ、深いエッジで刻む、自分の内面に迫るようなステップシークエンス、再生へと向かうバレエジャンプ。心に訴えかけてくるようなムーブメントの数々に、息を止めて見入ってしまうことだろう。
最高のエンターテインメントを届けてくれることにかけて、絶対的信頼感のある友野選手のエキシビション。
今シーズン滑るのは、車の運転がテーマの「Jazz Machine」。振付はアイスダンスで7度全日本チャンピオンに輝いた経験をもつキャシー・リードさん。こちらはショーマンシップが炸裂する“らしさ”あふれるプログラムだ。
前半は運転席に見立てたイスに座り、エンジン全開、ノリノリでドライブ。後半は小粋にステップを踏みながらダンサブルな滑りを披露。アッパーなリズムに自然と体が揺れるおしゃれなナンバーとなっている。
衣装は、ネットで購入したという赤のレオパード柄のシャツに、ユニクロのサングラス。エッジィなスタイルをさらりと着こなす世界屈指のファッションセンスは、氷上でも健在。
会場の端から端まで視線を送り、時折観客席に向かって指さし確認などアピール満載で、スタイリッシュな魅力に前方注意なプログラム。イスを押す役に毎回どのスケーターが登場するかも注目だ。
過去のプログラム
SP:『HappyJazz』
FS:オペレッタ『こうもり』序曲
EX:MIYAVI「WHAT’S MY NAME?」
このシーズンは“自分らしいけど、今までやってこなかったもの”がテーマ。あえて自分らしいものを選ぶことで、周囲の抱くイメージの一歩先をいく自分を見てもらいたいという挑戦を課したプログラム。数年ぶりにアメリカに渡り、ミーシャ・ジーさんと対面で振付作業を行った。
ショートは、アメリカのサックス奏者サム・テイラーの「Real Gone」と、フランスのDJユニットC2Cの「Happy(feat. Derek Martin)」の2曲を使用。
耳なじみがよく特に「Happy (feat. Derek Martin)」は、トヨタのCMソングにも抜擢された曲で、聴くと自然に体が動いてしまうようなアップテンポのナンバー。
小粋なサックスに合わせて余韻たっぷりに滑り始める冒頭。曲が切り替わるとともに一気に激しさを増していき、怒涛のステップに見惚れるバレエジャンプと、カズキトモノワールド全開のプログラム。曲のMVを参考にしたというヴィンテージライクな衣装にも注目。
クラシックを希望するなかで選ばれたというフリーは、オペレッタ『こうもり』序曲。ウィーンの作曲家ヨハン・シュトラウス2世の最高傑作と称され、これまで多くの名プログラムを生んだ、フィギュアスケートではおなじみの曲の一つ。
指揮棒一振りで物語の世界へと誘ったかと思えば、ヴァイオリンを弾いて見せ、うっとりするようなワルツを踊り……と、4分間にハイライトが贅沢にちりばめられた濃厚なプログラム。見どころの一つというステップのスローパートでは、2021-22シーズン精力的に磨いたスケーティング技術が光る。衣装はショートとは対照的なノーブルな燕尾服で、クラシカルに。
エキシビションナンバーは、世界的に有名なギタリストMIYAVIさんの「WHAT’S MY NAME?」。これまで何度も友野選手のプログラムを手掛けてきた佐藤操さん振付のハードなロックナンバー。
2021-22シーズンのサラリーマン姿の面影はどこへやら。黒のレザージャケットに赤髪、パンクな目元と、今までの殻を破るロックなスタイルは初見では一瞬誰だか分からないほど。ギターをかき鳴らし縦横無尽にリンクを駆け回る姿は野生のピューマのよう。男らしさ全開のロッカースタイルで、世界に衝撃を与えるナンバーだ。
SP:『ニュー・シネマ・パラダイス』
FS:『ラ・ラ・ランド』
勝負のシーズンに選んだのは、“自分を最大限に表現できる”プログラム。
ショートは、2018-2019シーズンに演じた『ニュー・シネマ・パラダイス』をリバイバル。ミーシャ・ジーさんとの記念すべき初タッグ作品で、家族、友人などさまざまな愛の形を描いたもの。
思い出を反芻するかのように前を見つめる冒頭から、ありったけの思いを捧げるようなラストまで、ピアノの美しい旋律とともに、情感豊かに滑り上げる。指の先まで思いを込め、見る者の心に訴えかけるようなプログラムに。
フリーは、公開時からいつか滑りたいと温めていたという『ラ・ラ・ランド』。
映画はアメリカ・ロサンゼルスを舞台に、ピアニストと女優志望の二人の恋模様と、夢を追い求める姿を描いた大ヒット作品。
演技はピアノを弾くような振付から始まり、前半のしっとりしたジャズパートを経て、
エネルギッシュなダンスパートへとアクセルを踏んでいく。
夢へと向かうコレオシークエンスは、誰にも止められないほど疾走感に満ちていて、栄光へと向かう友野選手自身を表現しているかのよう。
ショート、フリーともにジーさん振付の、最強のタッグ、最強のプログラムで挑むオリンピックシーズン。夢をつかみとるために、持てるすべてを捧げて挑むプログラム。表現者・友野一希だけの物語を氷の上に紡いでいく。
SP:The Hardest Button to Button
FS:『ムーラン・ルージュ』
2020-2021シーズンは、ショート、フリーともに前シーズンのプログラムを持ち越し、さらなるブラッシュアップを図った。
コンテンポラリーダンスという新ジャンルで戦ったショート。
振付は、「火の鳥」、「エデンの東」など、町田樹さんの代表作を手掛けてきた、元バレエダンサー、フィリップ・ミルズさん。
目標とする選手に町田さんを挙げ、フィギュアスケートで最も印象に残っているプログラムが「エデンの東」という友野選手にとっては、あらゆる意味で挑戦的なプログラム。
フリーは2018-2019シーズンのショート『ニュー・シネマ・パラダイス』に続き、ジーさんが振付。
大人の色気を感じさせつつも、闘志に満ちた迫力ある演技が堪能できる。後半に向かうにつれどんどん激しさが増していく、一瞬たりとも目が離せないプログラムで、見終わる頃には誰もが彼のファンになってしまう。
オフシーズン中に強化したというスケーティング、スピンにも注目。
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