この場を楽しみ尽くしてやるといった気概が見える、強気の表情でリンクの中央へ。
4回転トーループ+3回転トーループは3.26点の加点がつく出来栄えで完璧に着氷。客性からは揺れるような歓声が上がった。このシーズンの鬼門だった2本目の4回転ジャンプは激しく転倒し体を大きく打ち付けるも、すぐに立ち上がり、先程のミスなどなかったかのようなはつらつとした表情で次の要素へ。
鮮やかなトリプルアクセルで、再び観客の心を掴むと、伝家の宝刀のステップシークエンス。キレ味抜群の爆速ステップは9人中7人のジャッジが満点をつけ、出場選手中1位の評価に。世界に誇るステップで演技を締めくくると、会場はスタンディングオベーション。赤く染まった客席を万感の表情で見渡した。
転倒があった中でも、シーズンベストの92.68点を記録。7位でフリーを迎えることとなった。
昨年の演技のリベンジを果たすべく、臨んだフリー。
ショートを超えるとてつもない緊張感の中、バナーを手に声援を送るたくさんの観客に見守られながら、演技が始まる。
4回転トーループからのコンビネーションジャンプはきっちり着氷。2本目の4回転ジャンプは惜しくも転倒したが、続く4回転サルコーは3.33点という高い加点のつく質の高いジャンプを披露。
スローパートのステップシークエンスでは一時振付が飛んでしまったというも、作り出した世界観と思いを一人一人に届けるように丁寧にステップを踏んでいく。
クライマックスへと向かうコレオシークエンスは、加速していく友野選手の滑りと、どんどん大きくなる観客の手拍子がかけ合わさり、まるでここが世界の中心になったかのような圧倒的エネルギーで満ちていた。勢いよくフィニッシュを決めると、観客ははじかれたように立ち上がり、世界のエンターテイナーに拍手喝采を送った。
バナーと日の丸が真っ赤に揺れる光景をしっかり目に焼き付けると、心から幸せそうな表情で、平池大人コーチの待つキスアンドクライへ。
悔しさはあれど、「やりきった」と充足感を浮かべ得点を待つ。結果は自己ベストを9点近く更新する180.73点。ショートと合わせた合計は273.41点で、こちらも自己ベストを14点以上更新するハイスコアを記録。隣に座る平池コーチと固い握手を交わした。
目標としていた合計得点までは、ほぼ転倒したジャンプ2つ分。ノーミスの演技をすれば、見たかった新しい景色に確実に手が届く。
一歩一歩確実に成長できていることを実感し、自信を深めた友野選手。「来年も(必ず成長する)」と、誓いを立て、3度目の世界選手権を終えた。
2018年、2022年に続き、またしても世界選手権で自己ベストを更新し、“世界選手権での自分は最強”説を証明。6位入賞を果たし、翌年の世界選手権の日本男子出場枠「3」の確保に貢献した。
▷トモノのモノ語り。vol.18